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龍道  作者: 栄光の平橋
金殺編
45/52

45話 三対七

「ついてくんなよ」

「やだね。三ちゃんのセコンドは僕だもん」

三郎と龍輝が、並んで廊下を歩いている。

入場口へ向かう途中だ。

「それにしても、そんなカッコで戦うの?」

「文句か?」

三郎は長ズボンと黒い靴だけを履き、上は裸である。

「なんかヤンキーみたい。暴走族?」

「…それは、知ってて言ってんのか?」

「暴走族!」

「…なんだお前」

登竜門三郎、元暴走族。

総長を務め、点在する街のすべてを支配した経歴を持つ。

「ぐれてたね、あの頃は」

「お前知らねぇだろ」

「えへへ。それじゃ、頑張ってね」

光が差し込み、歓声が鮮明に聞こえだす。


三郎の入場口の正反対の方向。

ネクタイは締め上げ、はち切れそうな白いワイシャツを着ている。

黒いズボンは、黒いベルトで止めている。

大きな体を揺らしながら、肩で風を切って歩いている。

雲龍七王、市の役員。

何事もなく平和に過ごしている。

しかし、トレーニングの一切を怠らず、強さは日に日に増していく。

食事や睡眠時間を徹底的に設定し、力の落ちる日を発生させない。

だが月に一度、力の開放をする。

設定したものを壊したとしても行う、開放日。

「今日はいつも以上だ」

頭上に光が差し、三郎を目で捉えた。

二人が試合場に入る。

「グレた?」

「黙ってろ」

三郎が首を鳴らす。

「始めぇ!」

審判が声を出し、試合が始まった。

三郎は、ずかずかと歩いていく。

肩を数回上下させた後、七王も歩き出した。

微笑んでいる。

三郎は眉間にしわを寄せている。

「よぉ。出社でもするのかい?」

「三。やはりジョークは苦手のようだな。今の時間帯なら、帰宅途中の方がいいだろう」

二人は歩きながら話している。

やがて、どちらも間合いの中に入った。

「あんた、俺の知ってる感じでやらないのかい?」

三郎は右手で獣のような形を作り、噛む仕草をした。

「やはりな」

「あ?」

「君と闘るのは苦手だ」

その瞬間、三郎の喉に、七王の四本の指が突き刺さった。

「けほっ」

三郎の気道が圧せられる。

七王は四本の指を折り曲げ、顎の骨を掴んだ。

「むんっ」

そのまま三郎を持ち上げ、地面に向けて降り落とす。

「がはっ!」

次に、三郎の左腕を掴み、体ごと持ち上げた。

左手で三郎の手首を掴んでいる。

右拳を固めた。

腹に向かって、振りかぶった拳を放つ。

「ぐふっ」

三郎の腕は手を離れ、地面に転がった。

七王は鼻で息をついた。

「終わった…?」

幸太郎が小さく呟く。

「いや…」

総一郎が言った。

「げほっげほっ」

三郎が咳込みながら立ち上がる。

「痛ってぇ」

「効いたか?」

「年上に対して、敬意ってもんがないのか」

「ないな」

七王が言うと、三郎が再び歩き出す。

七王のすぐ前に立つと、息を吐く。

「ふぅ」

三郎は拳を固めて、七王を片目で見上げた。

「こっちの番だ」

七王の左頬に、右拳が飛んできた。

七王を殴り飛ばす。

七王は地面に転がるが、すぐに体を起こす。

そこへ、蹴りが飛んでくる。

仰け反った前蹴りが、七王の顔面を蹴りぬいた。

七王の後頭部が金網をガシャガシャと鳴らす。

「まだまだ」

体を右に回転させ、右後ろ回し蹴りを放った。

七王の胸へ、真っすぐ当たる。

「こんなもんじゃねぇぞ」

左足で七王の顔面を蹴り上げる。

続いて、右アッパーが顔面を叩く。

そして左手で、七王の髪を掴んだ。

金網から離すように、投げ転がす。

三郎は七王へ悠々と歩み寄り、右足で顔面を踏みつけた。

「おいおい。飽きてきたぞ」

三郎が言った。

その時、七王の伸びていた右腕が動いた。

三郎はすぐ右足を引っ込める。

七王の右拳が、七王の顔面を叩く。

「ん~、いい気付けだ」

七王が体を起こし、立ち上がった。

「じゃあ、こっちの番かな」

七王が血だらけの顔面を両手で拭いながら言う。

「あぁ、そうだな」

三郎が言った瞬間に、七王の体が突進してきた。

三郎の胴に七王の頭が突きあたり、金網まで後退させた。

「ふっ」

七王が体を起こし、右手を握る。

三郎の顔へ、拳がめり込む。

ダァンと、音が鳴り響く。

七王は右足を一歩下げ、左ショートアッパーを放った。

三郎の顎へ直撃する。

三郎の体が前に倒れると同時に、首根っこを掴む。

右足をさらに下げ、右腕を振りかぶった。

三郎の腹へ、右拳をかちあげる。

「まだまだぁ!」

七王が叫びながら、左掌で三郎の顔を掴み、後頭部を金網にぶつけた。

そのまま、七王が金網に沿って走り出す。

後頭部が金網の凹凸に打たれ続けながら、試合場を一周したとき、七王が地面に投げつけた。

「ぬうっ!」

左腕を振り上げ、三郎の腹に向かって拳を振り下ろす。

「げぼっ」

三郎が血を吐き出した。

七王が左腕を曲げ、肘を突き出した状態で、右足をで床を蹴る。

三郎の腹に、肘が落ちてくる。

ドンッと、地響きが鳴った。

三郎の腹に、深く肘が突き刺さっている。

はずだった。

三郎のすぐ横に、七王が肩から落ちている。

「ふんっ」

三郎は起き上がり、七王から離れた。

「攻撃が切れたな。こっちの番だ」

七王は残念そうな顔でため息をつく。

「目突きか」

凛太が呟いた。

「目突き?いつ」

武美が凛太に聞き返す。

「三郎が目突きを打って、七王がそれを避けた。だから肘落としが外れたんだ」

「…へ~」

武美が凛太に感心したように言った。

「行くぜ、七」

七王の胴に、三郎の右ミドルが入る。

「ん゛っ」

七王は歯を噛み締め、ミドルを受け止めた。

三郎の左拳が、七王の顎に打ち込まれる。

それも受け切った七王の腹へ、右の縦拳を放つ。

その反動で三郎は飛び下がり、走り出した。

七王のすぐ近くで飛び上がり、左飛び膝蹴りを打つ。

七王がぐらりと、後ろに揺らいだ。

三郎は着地した瞬間屈み、七王の足を払った。

支えを失った七王の身体は、床に背中から落ちた。

三郎が右腕を振り上げた状態で飛び掛かり、倒れた状態の七王へ拳を顔面に打ち込む。

三郎は自らの拳に血をつけながら、再び七王の顔面へ打ち込んだ。

三度、四度、五度。

何度も打ち込んだ時、七王の左手が三郎の右手首を掴む。

掴まれた瞬間に、三郎は左手を床から離し、倒れ込んだ。

その勢いを利用して、肘を七王の顔面に打ち込む。

だが、七王の手は離れない。

三郎は右肘を七王の肩に立て、左拳で七王の側頭部を打ち始めた。

「おいおい。いつまで続ける気だ!」

七王は左手を振るい、三郎を右方向へ倒した。

そのまま回転し、三郎と七王のポジションが入れ替わる。

左拳が高く持ち上がり、三郎の顔面へ落とされた。

「んっ!」

七王は驚いた様子で声を上げる。

三郎が七王の拳を乗せたまま、体を起こしてきた。

「ほう!」

七王が声を上げた時には、三郎の体が起き上がり、七王の腕は平行になっていた。

「はっはっはっ!いいだろう!」

七王は三郎から離れ、立ち上がる。

「三!全力でやりたくなったぞ」

「おお。いいぜ」

三郎も起き上がった。

七王が指を鳴らし、三郎は首を鳴らす。

七王は巻いたように呼吸をし、三郎は深く息をついた。

次の瞬間、七王と三郎の額がぶち当たる。

両の額から、一滴血が流れる。

「はぁっはぁっはぁっ!いいぞ!」

「ああ。アドレナリンが出てきたなぁ!」

二人が頭を離すと、両方とも右の拳を振るった。

同時に相手の左頬を叩き、仰け反った。

先に七王が体を起こし、左前蹴りを放つ。

三郎が数歩下がると、顔を起こしたところに左拳が飛んできた。

三郎は左足を出しながら右に避け、七王の腹を殴る。

「くぅっ!」

七王が声を上げると、右手で三郎の首を掴んだ。

そのまま金網に投げつけ、今度は右の前蹴りを放つ。

三郎が避けて蹴りは外れた。

避けた体制のまま、七王の左頬に向けて拳を打つ。

七王は左手で拳を受け止め、右足を金網から離した。

「ふんっ」

七王が三郎の拳を上に向くように握り締める。

ミリミリと音を上げ始めた時、三郎は両の靴を脱いだ。

七王がそれに気づき、手を離そうとする。

だがその前に、三郎は飛び上がっていた。

ドロップキックが、七王の胸に打ち込まれる。

七王が歯を噛み締め、一歩下がる。

その時に、三郎は足に力を込めた。

三郎の足の指は、七王のシャツをがっしりと掴まえている。

三郎が膝を曲げ、拳を引いた。

手首が平行になった拳は、七王の握力から逃れた。

そのまま逃れた右手を床につけ、シャツから足を離す。

すぐに左手も、床につけ、両足を思いっきり伸ばした。

七王の顎を下から打ち上げる。

「っ…!」

七王の脳が揺れる。

三郎はそのまま転がり、七王から離れた。

七王は口を開け、勢いよく歯を噛んだ。

脳の揺れは収まり、瞳は三郎を見ている。

「さすがの身体能力だな。しっかり技を学べばいいのに」

「断る。これが気持ちいいんだ」

「同感だ!」

七王は右の拳を突き出し、三郎は膝を曲げてそれを避けた。

だが、その顎へ左アッパーが飛んでくる。

(ブラフ!)

三郎の体が打ちあがった。

「いい飛びっぷりだ」

三郎が首の後ろを両手でカバーしながら、頭を持ち上げて落ちた。

「痛っ…!」

目を見開く。

その隙に、三郎の両足首が、七王の両手に掴まれた。

「むんっ!」

両足首を脇に挟み、三郎の体を持ち上げる。

「何する気だ…?」

「回す」

七王が回転し、三郎の体を振り回す。

三郎は首をカバーし、体をできるだけ持ち上げている。

「シュッ」

七王が息を吐き、左足を床に打ち付けた。

それと同時に、三郎の体が飛ぶ。

ガンッと、床に落ちた。

「っ…!」

視界が歪みながら、三郎は起き上がろうとしている。

「させるか!」

七王が右足を振り上げ、三郎の顔面へ突き出した。

三郎は転がってそれを避ける。

七王がそれを目で追った時、三郎は両掌と両足をしっかりと地面に付けていた。

左脚が後ろに伸びている。

「おぉ、よくやってたな。脳が揺れている証拠だ」

地面に触れ、脳の平行感覚を早急に直す。

それを知っている七王は、三郎の右手を踏みつけた。

だが、反応はない。

手は赤くなっているが、三郎は地面に付けたままだ。

七王が前腕を蹴る。

だが、動かない。

「まずい」

七王がもう一度前腕を蹴ろうとした時だった。

足首が掴まれる。

「よぉ」

三郎が足を引き、地面を蹴った。

七王の体を持ち上げ、地面に打ち付ける。

「ぐっ…」

七王が拳を握って、三郎の側頭部に向けて振るった。

三郎は飛んで避け、立ち上がる。

七王もすぐ立ち上がった。

三郎が飛び掛かり、右腕を振りかぶった。

拳が七王の顔面に打ち込まれる。

それと同時に、三郎の腹へアッパーがめり込む。

二人は同時に下がった。

そして同時に、前に進み出る。

二人とも右の拳を固めた。

どちらも満身創痍。

先に当てた方が勝利の状況の中、七王の拳が前に突き出た。

三郎は膝を曲げた。

七王のストレートに対して、三郎はアッパー。

七王の顎をかち上げ、脳を揺らす。

だが、七王は倒れず、左腕を振るった。

三郎の脇腹に向けて。

しかし、それがたどり着くより先、三郎の左拳が七王の腹にめり込んだ。

七王の体が後ろに向かって倒れた。

「勝負あり!」

三郎は大きく息をついた。

倒れた七王を数秒見つめ、屈んで七王の顔を叩く。

「ん…」

七王が目を開ける。

「…落ちたか?」

「ああ、数秒ほどな」

「殴り合いで負けるはずないと思っていたが、まさか負けるとは」

「俺も驚いてるよ。七に殴り合いで勝てるとはね。どっかで小細工を仕込もうと思ってたが、使う余裕がなかった。…というより、気分が上がりすぎて考えてなかったな」

「馬鹿だな」

「もういっぺん落とすぞ」

「断る!」

七王が素早く立ち上がる。

「また戦いてぇな」

「いや、仕事があるからな。一か月は遠慮しておく」

「そうかい」

三郎はポケットに手を突っ込み、試合場を出た。

「三!」

三郎が振り向くと、七王が靴を投げた。

「忘れものだ!相変わらず馬鹿だな!」

七王も、試合場を出た。

「俺の方が六つ上だぞ!」

そう言った後、三郎は入場口の方を向いた。

「ん」

龍輝が笑って待っている。

「なんだよ」

「別に~?丸くなったな~って」

「蹴り殺すぞ」

「ひどいね~三ちゃん」


夏秋が両手を動かしながら、舞のような動きをしている。

「ふっ」

夏秋が息を吐く。

「三郎か…意外と予想外」

壁に向けて拳を軽く打ち込んだ。

すると、小さなヒビが入った。

「うん、調子上々。竜二に勝てるかな?」

手首を動かしながら呟く。

「楽な試合ではないだろうね~、どっちにとっても」

夏秋は小さく笑った。


素早く両の拳と両の足を空中に繰り出している。

もし人がいれば、止まない連撃を食らっているだろう。

右の縦拳を突き出し、連撃を終えた。

(夏秋か…いいっちゃいいかな)

何度かその場でジャンプをしている。

(勝たなきゃ龍一とは戦えないし、勝たなきゃな)

ジャンプを止め、深く息をつき、両頬を掌で叩いた。

「よしっ!」


45話 三対七 終

45話後書き。

どうも。

先週は病気が大変でした。

今回は、三郎対七王です。

パワー系対パワー系って感じです。

結構書いてて楽しかった試合でもあります。

次の試合も楽しいと信じて書きます。

パワー系って差別化が結構難しいので、しっかり分けれてよかったです。

さて今回は、雲龍七王です。

身長198センチ 体重125キロ。

雲龍って本当にある苗字なんですよ。

恐らく会う機会はないです。

では。

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