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龍道  作者: 栄光の平橋
金殺編
42/52

42話 龍の邂逅

龍一は、町を歩いていた。

トーナメントは、夜に始まる。

早朝、龍一は町の散歩をすることにした。

こう見ると、意外と静かだ。

龍一は少し歩いた後、カフェに寄る。

朝食を取るためだった。

パンケーキを頼み、店内を眺めた。

物静かで、木組みのカフェ。

どこからかは、コーヒーの匂い。

どこからかは、パンの匂い。

どこからかは、木の匂いがする。

数分後、パンケーキが届いた。

食べながらも、龍一は考えている。

どう戦うか。

どう技を使うか。

だがそれは、相手を知らないと、考えることもできない。

龍一は、辺りの客を見渡した。

当たり障りのない会話をしながら、コーヒーを飲んでいる。

また別の席では、龍一と同じく一人で食事している。

その中の一人だった。

見たことのある姿。

こちらに向かってきている。

深淵のような、吸い込まれてしまいそうな黒髪。

サングラスをかけているが、その中の瞳もまた、真っ黒なのだろう。

その者は、龍一の席に近づき、向かいの椅子に座った。

「はぴお~」

「まだその呼び方なのか?」

サングラスを外した男、龍一と同級生の三津島幸太郎だ。

「名前が変わらん限り、おれははぴおと呼び続けます」

「まぁいいけど」

幸太郎がサングラスを畳み、テーブルに置いた。

「久しぶりだな」

「中学転校した後、それっきりか」

「龍一、最近何してんだ?」

「…まぁ、中学とおんなじ感じだよ」

龍一は濁しながら言った。

「…嘘つくなよ」

幸太郎が言うと、龍一は驚いた様子を見せながら、口をつぐむ。

「親父が少し、裏の方に関係があってね、お前、顔覚えられてたぞ」

「…まじか~」

龍一は椅子に寄りかかった。

「そうだよ、裏に生きてる」

「まぁ、別にどうでもいいんだけど」

「いいのか」

「お前がどうしようが、お前の勝手だろ。死ぬわけねぇしな、龍一さんが」

「…そうか」

龍一は安心したように言う。

「止めると思ったか?舐めんなよ」

「…あぁ」

龍一は微笑みながら言った。

「そういや、タケは?」

「タケは今凄いとこ行ってるぞ。地方でもナンバーワンの高校だ」

「あいつそんな頭良かったけ?」

「良くなかった。でも、お前が転校してから、勉強頑張り始めたぜ。今じゃあ優等生…かな?」

幸太郎は思い出しながら言っている。

「へぇ。よかった」

「そんで、お前なんかすごい奴と戦うんだろ?」

「…まぁね」

「…頑張れよ」

幸太郎が立ち上がり、席を外れながら龍一の背をポンと叩いた。

「見に来るか?」

龍一が唐突に聞く。

咄嗟に出た言葉だった。

「…いいぜ。タケも呼ぶよ」

「じゃあ、連絡するわ」

「連絡?」

「おれを引き取ってくれた人に、金の催促」

龍一が冗談交じりに言った。

「すげぇ人に引き取ってもらったんだな。じゃあ、そのお礼に」

幸太郎が千円札二枚を、龍一の目の前に置いた。

「俺のおごりだ」

「いぇーい」


「…またか」

総一郎が目を震わせる。

「二人だけ、お願い」

「いいんだが…金殺のとこから払えないのか?お前勝ってるだろ」

「あんまない」

「そうか…」


龍一たちは、金殺に来ていた。

観客と控室で分かれ、龍一は一人で廊下を歩いていた。

「龍一様」

後ろから声を掛けられる。

振りむくと、星が立っていた。

「星さん…」

「辰正様がお呼びです」

龍一が目を見開く。

「そこに…龍は?」

「皆様、勢揃いです」

龍一か固唾を飲んだ。

「…はい」

龍一が星に連れられ、部屋の前まで案内された。

星は去ろうとしたが、龍一が呼び止める。

「あの…」

「はい?」

「あなたは、あの抗争の時、どこにいたんですか?」

他の中国人は見かけたが、星はいなかった。

「私は、組長同士の戦闘の時、ずっといましたよ」

「え?」

「組長同士の戦闘で邪魔が入らなかったのは、私が塞き止めているからです」

「…そうなんですか」

星が一礼して、離れていく。

「ありがとうございました」

龍一が言うと、星は振り向かず、片手を上げて答えた。

龍一が星を見送ると、部屋の扉に目をやった。

(ここに…龍が…)

龍一は、ドアノブに手をかける。

その瞬間、押してもいないのに扉が開いた。

龍一は予想外に体勢を崩し、前に倒れ、部屋の中に倒れる。

「痛ゥッ…」

龍一が体を起こしながら、部屋の中を見た。

「ごっめん!そんな勢いよく倒れるとは思わなくって!」

若い男が、龍一に手を合わせて謝ってくる。

龍一は何が何だかという顔だ。

「僕、八嶋龍輝。いっくんに一番歳が近いから、仲良くできるね」

「龍輝が悪いことしたね。俺は四龍夏秋。よろしく」

夏秋が龍一に手を伸ばし、体を起こした。

龍一は驚いている。

意外に、明るいのが多い。

「龍一」

奥の椅子に座っている男が、龍一に話しかけてきた。

龍一はその声に聞き覚えがある。

藤木辰正だ。

龍一は次に、その隣に立つ男に目が行く。

「ん…?あんた…」

「お久。夜頭竜二だよ」

竜二が近づき、手を差し伸べた。

龍一が時牧トーナメントで出会った、あの男。

「あんた…」

「驚いた?」

驚いただけでは、説明ができない。

「紹介しよう。あそこにいるのが、登竜門三郎」

椅子に座る三郎へ向けて、竜二が指を指した。

「怒りっぽいから気を付けて。あれは冬山竜伍。暗いけど、多分いい奴」

隅で壁に寄りかかっている。

「夏秋の腹違いの兄弟だよ。それで、あれが六道龍人」

黒い服をまとった男を指さす。

「結構怖い奴だよ。最後にあれは雲龍七王」

はちきれんばかりのシャツを着た男。

「ぴっちりした髪のシャツ姿。真面目な奴に見えるかもだけど、意外と要注意だから」

竜二が笑った。

「組長。いいよ」

「あぁ、龍の者たちよ」

辰正が声を上げると、全員が辰正の方を見た。

「これより、トーナメントを行う。優勝者には、俺と戦ってもらう」

辰正が言うと、全員、唾を飲む。

「それでは、トーナメント表の発表だ」

そう言うと、辰正は髪を取り出した。

龍が近づき、トーナメント表を覗き込む。

第一試合 霞原龍一対六道龍人

第二試合 八嶋龍輝対冬山竜伍

第三試合 登竜門三郎対雲龍七王

第四試合 四龍夏秋対夜頭竜二

龍一が、龍人に目を向ける。

龍人は特に反応がないように見える。

龍一が固唾を飲み、龍人を観察した。

「それでは、全員、控室に戻れ」

龍は解散した。


あっちは自分の戦い方を知ってるのだろうか。

だとすると、相当不利になる。

だが、それでいい。

それでこそ、倒しがいがある。

龍一は笑っていた。


「第一試合から龍一だってよ」

総一郎が全員に言った。

一塊になって、席に座っている。

「勝てるか?」

オードンが聞いた。

「知るかよ。ただ、龍は誰も金殺で戦ってない。だから、誰も測れない」

総一郎の返答に、オードンが鼻で息をつく。

「勝てるよ。龍一なら」

幸太郎が言った。

「そうそう!あんな喧嘩強ぇんだもん!」

藤辰武美がそれに乗って言う。

「あのなぁ、喧嘩じゃねぇんだぞ?」

凛太が武美に対して、少しうざったらしく言った。

「龍一と一緒にいた期間なら、俺たちの方が長いぞ!」

武美が立ち上がり、凛太に言う。

「ガキの頃だろ?今じゃ全く違うだろうがよ!精々羽斗に勝った程度だろ!」

「あ?」

羽斗がドスを聞かせた声で言う。

「まぁ、喧嘩じゃないことは確かだから、座りな」

ミサエルが武美を諭した。

「ちぇっ」

武美が舌を鳴らす。

「若いな」

紺が呟いた。

「龍一と同級生ですよ?」

高野武人が言った。

「未熟、という事だろう」

勇が武人に言う。

すると、聞こえたのか武美が再び立ち上がった。

「誰が未熟だおっさん!」

紺に向けて、武美が怒鳴る。

「…俺は言ってない」

「えっ」

勇が声を漏らす。


入場口へ、龍一が歩いていた。

だが、入場口の前に、一人の男が立っている。

竜二だ。

「頑張れよ、一」

「…あなたの知っている、俺の叔父は、どんな人でした?」

龍一のいきなりの質問に、竜二は少し驚いた様子を見せた。

「…う~ん。優しかったかな。誰にでも」

「…そうですか」

龍一は一礼し、竜二の隣を通っていった。

その時、竜二が口を開く。

「時牧の頃の君なら、まず龍人には勝てない」

龍一は立ち止まったが、振り返らずに言った。

「もう、あのころとは違います」

「そう。頑張って」

竜二は、龍一を見送った。


「おおぉぉ!一だぁぁ!」

歓声が沸く。

「龍一!ぶちのめせ!」

凛太が観客席で叫んだ。

龍一は手を上げて答える。

そして、対向線の入場口から、一人の男が歩いてくる。

黒い帽子、黒いジャケット、黒いブーツ。

六道龍人だ。

『さぁさぁ!遂に始まります!急遽開催が決定したトーナメント!いったいどういう人選なのか!』

司会の声が轟く。

司会も観客も、事情は知らないようだ。

『皆さん知っての通り、一!そしてその対戦相手は、素性不明の男!六道龍人こと、六です!』

「六ぅ!?また数字かよ!」

「数字トーナメントかぁ!?じゃあ九十九(ツクモ)も出してやれよ!」

九十九という金殺闘技者がいるようだ。

龍一は息を吐き、試合場に入る。

龍人も、同時に入ってきた。

「脱いでよ。それ」

龍一が龍人のジャケットを指した。

「あぁ、わかった」

龍人がジャケットを脱ぎ、帽子も取った。

靴を脱ぎ、試合場のすぐそばに置く。

「これでいいか?」

それでも、髪や瞳は真っ黒で、肌も少し焼けていた。

「うん」

「そうか」

ジャケットを脱ぐと、少し細身に見える。

審判が両手の動きで、二人を中央に呼んだ。

「中央へ!」

二人とも、試合場の中央へ集まった。

六道龍人。

辰正からの特訓が終わり、自由になった後、アメリカのギャングへ転身。

藤木組の者たちから見て盗んだ、ヤクザの戦い方で、銃社会のギャングを倒してきた。


「RYUTO,次の目標はこいつだ」

黒服の男が、写真を出した。

「BOSS,こいつは?」

「まぁ、薬関係だ。殺っちまっても、殺らなくてもいいが。殺らないなら、ここへ連れて来いよ」

「…はい、BOSS」

龍人が出向いた先は、あるバーだった。

少し薄暗く、店内は静かだ。

上品な店なのだろう。

そこへ、ずかずかと入ってくる龍人は、少し異質だ。

龍人は目標の男を見つけるや否や、すぐに近づいた。

「MIKE ROY(マイク ロイ)だな?イギリス出身」

男は、酒をテーブルに置いた瞬間、店外に向けて駆けだす。

「wait」

龍人が足を掛け、マイクを転ばした。

「すまんな。借りてくぞ」

マスターに代金を差し出し、マイクの首根っこを掴んで、店の外へ歩いていった。

路地裏に、マイクを投げ出す。

「うぅ…」

「薬関係とは聞いたが、何した」

「くそっ、何だよ!俺はガキに持ち掛けただけだぞ!買ったやつが悪いだろうがよ!」

「…そうか。くずだな」

龍人はマイクの胸ぐらを掴み、起き上がらせた。

「殺さないでやる、俺はな」

拳を握り締め、マイクの左頬を思いっきり殴る。

「おい」

その時、龍人の後ろから声を掛けられた。

龍人が振り向くと、二人の男が立っている。

一人はナイフを持ち、もう一人は金属バットだ。

「俺はよぉ、そいつが欲しいんだ。少し、譲ってくんねぇかな~?」

金属バットの男が言う。

「断る。こいつは俺のだ」

「んじゃ」

金属バットの男が、龍人に向けてバットを振るった。

バットを、右に避けた。

それと同時に、左足で男の腹を突く。

「ぐっ」

男が少し前のめりになった。

その顎へ、ヤクザキックを放つ。

男は倒れ、もう一人のナイフの男が走ってきた。

右の裏拳で顔面を殴る。

怯んだ隙に、相手からナイフを取り、その男の左太ももに突き刺した。

「Aa!」

男の顔に、全力で振りかぶった拳を放つ。

男は倒れた。

「さぁ、来てもらおうか」

その後、六道龍人は日本へ渡り、龍のトーナメントへ参加した。

ギャングへの加入期間は、二年ほど。

それで、のし上がってきた男である。


「離れて!」

審判が二人を、試合場の端にやる。

龍人は金網を掴んで見つめていた。

(勝ってやる。霞原に負けて、ギャングへ逆戻りで終わらせない。藤木辰正に勝って、最強の男を証明する)

龍人は金網を強く握り、睨んでいた。

金網は変形し、龍人の指をなぞるようになっていた。

龍人が息を吐く。

「始めぇ!」

試合が始まった。

龍人が龍一の方を向く。

その瞬間、蹴りが顔面に飛んできた。

「よそ見は命取りだよ」

龍一が言い放ち、龍人は龍一の前に倒れ伏した。


42話 龍の邂逅 終

42話後書き。

今回は色々と説明的なのが多かったですね。

龍同士の関わりや、久しぶりの同級生たち。

観客の数を生かせるでしょうか。

そして、六道龍人です。

ヤクザ的な戦い方とは言ったものの、あまりそういうのは知りません。

何か大技とかを連発するんじゃないでしょうか。

さて今回は、その六道龍人のスペックです。

身長182センチ 体重89キロ。

細身とはいっても、結構でかいです。

では。

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