88話.烈火チームside
--轟 烈火視点--
「……ここか。随分と山奥だったなー」
「一般人が容易に辿り着けない場所にあるのは良い事だろう」
「ま、確かにな!」
「美鈴さん、肩に虫が」
「あ、ホントだ。よしよし、ここは危ないから逃げな~」
「……意外ですね。もっと驚くかと思っていました」
「そりゃ昔からアレと一緒なのよ?」
「あぁ……」
「そりゃどういう意味だ美鈴!?」
「アンタに付き合ってたから、虫程度で驚いたりしないって事よ」
「おお、そりゃそうだな」
「……そこは受け入れるんですね」
「フ……」
「ってなんでそこで笑うのよ美樹也」
「いや、この会話を聞いていたとしたら、の玲央の顔が浮かんでしまってな」
「「「あー」」」
美樹也の言葉に同意するしかない。
あいつは俺達の会話を、本当に嬉しそうに聞いてくれる。
時に真剣に、そしていつも笑顔で、あいつは俺達に話しかけてくれる。
俺達に見せない、裏では沢山の情報集めや訓練をしているのは俺達の中で暗黙の了解として共有している。
そんな事をおくびにも出さずに、あいつは一生懸命に集めた情報を、俺達やクラスの仲間達に惜しげもなく共有してくれる。
俺達が成長できるように。
俺達を仲間だと信じてくれている。
そしてその信頼が分かるから、皆応えたくなる。
自身の為、そして俺達の為にいつも頑張ってくれている玲央の為に。
「今日は玲央はいねぇ。俺達でもやれるってとこ、見せてやらねぇとな!」
「ああ。素材を一番に持って帰るとしよう」
「そうね! 斥候の役は任せて頂戴。玲央程じゃないけど、探知は詳しく教えて貰って結構得意だから!」
「では私は魔法で結界を張りながら警戒しておきますね。前衛は烈火君と美樹也君にお任せします」
「おう! それじゃ行くか!」
「フ……ああ」
そうして俺、美樹也を先頭に、後ろを美鈴、紅葉の順番で隊形を組む。
玲央がいない今、俺が指示をしなきゃなんねぇと考えると、滅茶苦茶プレッシャーを感じる。
ただ敵に突っ込んで、力が尽きたら後を任せる事のなんて気楽な事か、と初めて考えるに至った。
玲央はいつも皆の事を考えて行動していた。
指示も的確で、やっぱりあいつは凄い奴だと再認識する。
「烈火! 美樹也! その岩の影に魔物が二匹!」
「オーケー! 任せなぁっ!」
「フ……!」
俺と美樹也でそれぞれ駆け寄り、魔物達が気付くより速く斬り捨てる。
「いっちょ上がりってなぁ!」
「百目鬼の探知範囲がかなり広いようだな。魔物がこちらに気付くより速く居場所が分かるのは有難い」
「な、なによ。美樹也が褒めるなんて珍しいじゃない」
「何、俺も玲央を見習っているだけだ。褒めるところは褒める、大事な事だろう? 俺は玲央に褒められると嬉しいからな」
「美樹也、お前玲央にデレッデレじゃねぇか……」
「フ……」
「意味深に笑うなよ!?」
「あははっ! ったく、この場にいなくてもあいつは笑かせてくるんだから」
「ふふ、そうですね。私も玲央さんならこの場合どうするだろうと考えると、考えつかなかった手が浮かんだりするんですよ」
やっぱ、このメンバーの中心人物は玲央だ。
俺も玲央に良いとこを見せたいしな!
仲間であり、超えたい目標でもある。
「うし! どんどん行こうぜ!」
「ああ」
「そうね!」
「はい」
道中に出てくる魔物は全て俺と美樹也で倒し、時々美鈴の探知外から奇襲を仕掛けてくる魔物は紅葉の魔法によって一撃で倒された。
このパーティに死角はないな!
そうして順調に進み、ボス部屋の前へと辿り着く。
相変わらず重くるしい雰囲気の扉だぜ。
「皆、体力は大丈夫か? あれなら回復してから行くぜ?」
「大丈夫だ、問題ない」
「そんな装備で……って何言わせようとすんのよ美樹也」
「訳の分からない突っ込みをしてくるな百目鬼」
「あ、これ本気で素で言ったやつ」
「ふふ。魔力も十分ありますし、私も大丈夫ですよ烈火君」
「よし、そんじゃ開けるぜ!」
扉に両手を添えて、押していく。
ギギギギという音と共に、ゆっくりと中へと進む。
「グアオオオオオオン!!」
「「「「!!」」」」
こいつぁ、ファイアードラゴン!
真っ赤な体に巨大な翼、強力なブレス系の攻撃をしてくる危険度Aランクの魔物じゃねぇか!
「グオオオオオッ!!」
「まずいっ! 美鈴、紅葉! 結界を!」
「「了解!」」
「チッ……! 俺は裏へ回るぞ烈火!」
「分かった!」
ファイアードラゴンのいきなりのブレスを、美鈴と紅葉の結界が防ぐ。
その間に美樹也は後ろへと回り込んだ。
「ブレスが終わらねぇか……しゃーねぇ、俺はこのまま突っ込む! 美鈴、バフを頼む! 紅葉は俺にリジェネを!」
「わ、分かったわ! 無茶すんじゃないわよ!? 『パワーエンハンス』!」
「了解です! 『リジェネイト・ヒール』!」
「助かる! 美樹也、合わせろっ!」
「良いだろうっ!」
「行くぜぇぇぇっ!」
結界を突き抜け、ブレスをもろに喰らう。
俺は火に耐性があるから、耐えられると踏んだ。
流石にダメージがなくなるわけではないし、万が一に備えて持続回復の魔法をかけてもらったのが功を奏した。
「くうらえぇぇぇっ! 『パワーブレイカー』!」
「凍るが良いっ! 『アイス・ソード』!」
「ギャオオオオオン!?」
クッ、浅いか!? 俺と美樹也の攻撃を受けたファイアードラゴンは、ブレスこそ途切れたものの、倒れず踏ん張っている。
「ならば、連撃だ烈火! 奥義『氷乱月華閃』!!」
「!! おおおっ!! 奥義『オメガ・ブレイカー』!!」
「グァァァオオオオン!!」
その巨体が、今度こそ地面へと倒れた。
俺達の勝ちだっ!
「おっしゃぁぁぁ!!」
「フ……俺達ならば当然だ」
「やったわね! この速度なら一位もあり得るんじゃない!?」
「ふふ、そうですね。皆さん、早く戻りましょう」
「おう! そうするか!」
玲央達より早く素材を持ち帰れたら、あいつはどんな顔をするだろうか?
悔しそうにするだろうか? それとも、やっぱり凄いと笑ってくれるだろうか?
多分後者だろう。
リーシャさんは悔しそうな顔をする気がするな!
なんにせよ楽しみだぜ!
その場に居なくても、存在感増しましの玲央でした。
お読み頂きありがとうございますー。




