89話.ヴァルハラの結界強化①
俺達は無事に素材を手に入れ、藤堂先生が待つ『表彰部屋』へと戻ってきた。
「おお、もう戻って来たのか玲央。相変わらずはえーな、一番だぞ」
「「「「!!」」」」
まさか一番とは。とはいえ、一番時間のかかるはずのボス戦をスキップしてるし、道中も先輩達とリーシャさんのお陰で爆速だったからなぁ。
「で。どうだったよお前ら」
藤堂先生がニヤッと意味深に笑い、先輩達を見る。
先輩達は苦笑しながら答えた。
「いやいや、想像以上でしたよ藤堂先生。これで一年生ってマジですか?」
「本当に。剣聖のリーシャさんは言うに及ばず、榊君に至っては噂以上でしたよ」
え? 俺、今回何にもしてませんよね?
褒められる場所ありました?
「ほぅ。上級生の中でも、お前らはかなり上澄みなんだが……そんなお前らでも、そこまで言うか?」
「榊君は、俺が感知した事をすでに知っているようでした。どこに罠があるか、どこに魔物が居るか、全て事前に察知しているようでした。今回、俺が指示させて貰いましたが……榊君ならば、もっと的確な指示を出す事が出来たのではと思います」
「それに、リーシャさんの信頼も厚い。正直、俺達二人が居なくとも、榊君とリーシャさんの二人でも変わらない、いやむしろ速く攻略しただろうと思いましたよ」
「ククッ……そうか、お前らもそこまで評価するか」
藤堂先生は嬉しそうに笑う。
というか、俺が気付いている事に気付いていた事に驚きだ。
確かに、俺も知ってるダンジョンなので罠がどこにあるかや、魔物の配置も分かっていたから、何度か口に出そうとしてしまった。
それを見られていたって事だろう。
「何より……ボスモンスターが自決したんですよ。あんなのは生まれて初めて見ましたよ」
「そうそう。しかも、榊君をジッと見ていましたからね。何かを語りかけていたように見えましたが、俺達では魔物の言葉は分からないんでしょうがないですけど」
え、そうだったの!? あの声、聞こえて無かったの!?
ギャオーとか、そんな感じで聞こえてたって事ぉ!?
「あぁン? お前、また何やらかしてんだよ玲央……」
藤堂先生に呆れ顔で見られる。
俺、なんにもしてないんですってぇ……。
「良いかお前ら、この事は他言無用だ」
「分かりました。とはいえ、言っても信じてくれないと思いますよ? 俺らだって聞いただけなら、信じないと思いますし」
「ですね。まず言ってきた奴の頭を疑います。とはいえ、了解です」
先輩達も頷いた。
というか、そんなレベルで異常事態なのか。
いやまぁ、普通ダンジョンボスが自決するなんて事はありえないもんなぁ。
なまじマカロンで見慣れたせいで感覚が麻痺してるな、気を付けよう。
「おっしゃぁ! いちば……って玲央ぉ!?」
「くっ……俺達が二位という事か……!」
「はぁっ……はぁっ……アンタら、ここまで全速力で、はぁっ、走り続けるとか、体力馬鹿どもめぇっ……!」
「ふぅっ……美鈴さんも体力はある方だと思いますが、流石に美樹也君が速すぎて、こちらは全速力ですからね……」
「皆!」
ドタドタと足音が近づいてきていると思ったら、烈火達が揃って帰ってきた。
皆、流石の攻略速度だ。
俺達はボス戦をスキップしたからあれだけど、それが無ければ烈火達が一番だっただろう。
「やっぱり凄いね! 烈火、美樹也、美鈴さん、紅葉さん! 流石だよ!」
「お、おう! まぁ玲央達には負けちまったわけだけどよ?」
「烈火達の素材、それファイアードラゴンが落とす触媒だよね?」
烈火が右手に持っていた物を見て、そうだと判断した。
多分間違っていないはずだ。
「お、おお、そうだけど。すげーな、見ただけで分かるんだな」
うん、錬金術の素材で必要になるから、何度も集めに周回したので。
「なら、距離的に俺達のダンジョンよりも遠いし。つまり、公平な距離の場所勝負なら、俺達の負けって事だよ? だから、流石だよ皆!」
「へへっ、ありがとよ玲央!」
「フ……」
「また嬉しそうにしちゃって二人とも」
「ふふ、美鈴さんも笑ってますよ?」
「へ!? あ、いや、まぁ、ね?」
笑顔の推し達が今日も眩しい。
「はは。これはリーシャさん、大変だね」
「分かってくれますか?」
「ああ。榊君が彼らを好きなのが伝わってくるよ。俺もあんなに純真な眼で褒められたら、耐えられるか分からない」
「玲央君は、あれ平常運転なんです……」
「「……」」
「ガハハハハ!! ったく、今年の新入生は優秀で嬉しいぜ! お前ら、ご苦労だった! 素材を置いて、後は好きにしていいぞ。帰るもよし、訓練するもよしだ!」
「お! 玲央、時間あるか!?」
「勿論何も予定はないけど……」
急な展開だったし。
「なら……」
「あー、わりぃな烈火。玲央にはヴァルハラの結界強化で手伝って貰う事があってな」
「それなら仕方ないっスね。玲央、もし時間が余るようなら連絡くれよな! 行くか皆」
「そうだな。玲央、リーシャ、また後でな」
「私達はいつものとこでいるからね玲央、リーシャさん!」
「玲央さん、リーシャ、また後で会いましょう。失礼致します先輩方」
そうして烈火達は『表彰部屋』を出て行った。
「とりあえず、素材が集まるの待ちですよね藤堂先生」
「おう、そうだな。お前らはもう出て良いぞ」
「分かりました。榊君、リーシャさん。良い経験になったよ、ありがとう」
「学年対抗戦ではお手柔らかにな。行こうカズ」
「ああ」
そうして先輩達も部屋を後にする。
あれ、自然にリーシャさんも居るけど、良いのかな?
そう思って藤堂先生を見ると、
「まぁお前らはもうセットみたいなもんだろ」
「そうですね」
それで良いのかリーシャさん。
いやリーシャさんが嫌じゃないなら、俺としては嬉しいんですけども。
そうして俺達は、藤堂先生とたわいない話をしながら、他の皆が素材を持ってくるのを待つのだった。
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