87話.1,2年生混成チーム
藤堂先生の指示で組んだ俺が入ったチームは、2年生との混成チームだった。
2年生の真島 亮先輩と、如月 和馬先輩の二人と、リーシャさんの4人。
真島先輩は斥候で、如月先輩は魔導士との事。
二人とも俺は知らないので、モブ仲間である。
いや2年生に上がれているだけで実力者なので、一般モブと一緒にしたら失礼かもしれないけれど。
「おっと、そこには罠がある。解除する、少し離れていてくれ。カズ、向こうに敵が潜んでるから、魔法頼む」
「了解。『マリオネット・エア』」
「「「ギャァァァッ!?」」」
「へぇ、流石ですね先輩達」
「はは。あの剣聖にそう言われると嬉しいな」
「だね。俺達もあの動画を見てやる気が出たよ。負けてられないなってね」
二人の先輩をリーシャさんが褒めて、気さくな先輩達がそれに応える。
うん、良い感じだ。
よく物語とかで出てくる、不快な先輩がいない。
いやまぁ、当たり前ではあるのだけどね。皆命を賭けて、皆を守りたいという想いでヴァルハラに入学している。
基本的に善人が集まるのだ。
ただ、ここで問題が俺である。
斥候の真島先輩が優秀過ぎて、俺の出る幕が無いのである。
俺、要ります?
「どうしたの玲央君?」
そんな俺を見て、リーシャさんが不思議そうに首を傾げて聞いてきた。
「どうかしたか榊君? 何かあれば遠慮なく教えて欲しい」
「そうそう。榊君の実力は俺達も十分知ってる。榊君が何か違和感を感じたなら、逐一教えて欲しい。俺達に出来る事なら、なんでもやるからね」
ぐはっ。先輩達が良い人すぎて辛いです。
「いやその、俺って要るかなって思って……」
「「「……」」」
うはー! 真顔でリーシャさん含めて皆が固まったー!
自分は役立たずだって恥ずかしい事言ったんだから当たり前だよね!?
「「ははははっ!」」
「ふふっ……!」」
あ、あれ?
先輩達は大笑いするし、リーシャさんまで笑い出した。
なぜぇ!?
「ははは。いや、そういう事か。榊君は勘違いしているようだね」
「はは、だな。榊君は凄いけれど、まだ一年生なんだから、当然か。いや、少し安心したよ」
「???」
頭に疑問符を浮かべていると、リーシャさんが笑いながら教えてくれた。
「あのね玲央君、玲央君の出番が無いのは良い事なのよ。私達で手に負えているって事なんだから。指揮官の玲央君が動く時は、重要な場面。いくらなんでも、一から十まで指示待ちじゃ戦士として二流も良い所よ?」
「!!」
「そういう事だ。榊君は俺達が気付けない、何かを発見したり、違和感を感じたらそれを教えてくれると助かるよ」
「そうそう。むしろ、全て榊君に言われて動いていたのでは、先輩として立つ瀬がない。俺達の活躍の場、奪わないでくれると助かるかな?」
「先輩達……」
そうか、俺は勘違いしていた。
指揮者だから、全て指示をするべきだと。
でも、そうじゃない。
皆自分の考えがあるし、経験がある。
勿論時と場合によるから、それぞれが勝手に動いちゃダメな場面だってあるけど、今回のような場面では違う。
俺はもっと、視野を広げないといけないな。
「さ、この付近に罠はもうない。先に進もう」
「了解」
「ええ」
「はい!」
剣士、魔導士、斥候のバランスの取れたパーティ。
藤堂先生が組んだのだから、当然そういう風にしたのだろうけど。
この『封魔のダンジョン』は危険度で言えばBクラスだけど、危なげなく進んでいく。
魔物もリーシャさんの強さの前に、なす術も無く倒されていく。
これには流石に先輩達も苦笑気味だった。
一人だけ明らかに一年生の実力じゃないからね。
それからダンジョンを進みながら、二人の先輩の話を色々と聞かせて貰った。
二年生筆頭の陽葵先輩に二人とも告白してあえなく振られたとか、二人は小さい頃から一緒に育ってきたとか。
「榊君は話しやすいな。人柄なのか、つい話すつもりも無かった事を話してしまったな」
「まったくだ。告白の話なんて確実に余計な話だっただろ亮」
「ぐっ……でもな、結月さんに告白してない男子なんてほとんどいねぇんだから良いんだよ!」
「それもそうだが……」
うへぇ、そんなに人気なんだ陽葵先輩。
まぁあのちっさい小動物のような見た目で可愛いからさもありなん。
でも、あんなにあからさまに好きな人が居るオーラ出してるのに、バレないものなんだろうか?
気になった俺は聞いてみる事にした。
「でも陽葵先輩は三年生に好きな先輩がいますよね?」
「ああ、当然知ってるよ」
「あれだけバレバレだとな……でも、それは関係ないんだ榊君。大事なのは自分の気持ちだからな」
成程……確かに、そうだ。
それを伝えるのも勇気が必要だろうに。
俺はこの先輩達が凄いと思う。
「玲央君も見習うべきね?」
「え? 俺は好きな人には好きだって言うよ?」
「……本当に?」
「うん。リーシャさんの事だって好きだし、烈火や美樹也、美鈴さんや紅葉さんの事だって好きだよ?」
「……そう、そうね」
あれ、リーシャさんが肩を落として地面を見てるのは何故?
「これは……。榊君はなんというか、絵に描いたような鈍感さというか……」
「いっそ清々しいくらいに間違ってるね。けど、純真すぎて指摘しても理解してくれなそうというか、あれも本心での好きで言っているのが分かるからタチが悪いというか……苦労しそうだね、リーシャさん」
「はい……」
三人の絆が強まったように見えるのは何故なのか。
いや良い事なのだけど。
それから奥へと進み、何事もなくボスの間へと辿り着いた。
「ここのボスの情報は分かっている。確かバフォメットという悪魔系の魔物だ」
「魔法抵抗力の高いボスモンスターだな。俺はあまり力になれないかもしれない」
「了解、私が前に出ます」
三人が声を掛けあい、フォーメーションを組む。
悪魔系のボスか、その頂点が確かダンタリオンさんだったと思うんだけど、何故か嫌な予感がする。
扉を開け、白い煙が風で流れてくる。
重々しい雰囲気の場を、大声が響き渡る。
「ヨクキタナニンゲンドモ。ワガエサトナルガ……。……!?」
「「「「?」」」」
言葉を途中で止めて、まっすぐに俺を見てビックリするバフォメット。
面識なんて勿論ない相手で、3メートルはあろう大きなモンスターに驚かれるのは、正直言って怖い。
「キュ、キュウヨウヲオモイダシタ。ソザイハクレテヤル、サラバダ。ア、アノ、ダンタリオンサマ二、ヨロシクツタエテクダサイレオサマ」
そう言って、自分の胸に手を入れ、コアのような物を地面へと落とし、消えた。
あれは結界の素材だ。
「ど、どういう事だ?」
「訳が分からない……」
「また玲央君なの……?」
三人の視線が俺に一斉に注がれるけど、俺だって初めて……
『ア、アノ、ダンタリオンサマ二、ヨロシクツタエテクダサイレオサマ』
あ、あー! そういう事か!!
ダンタリオンさんの部下か何かで、上司から何か命を受けてる的な!?
その一番上なのがクレハさんなんだもんね!?
あの人絶対何かしてるなー!!
「あ、いや、その……」
ってそんな事言えるかー!
「まさかダンジョンボスが自決を選ぶとは……生まれて初めてだよ、そんな事を見たのは」
「ああ、俺もだ。榊君は凄いな……」
「……(これ、一度見たわね。成程ね)」
あ、多分リーシャさんは分かってくれた。
だけど先輩達二人の眼が、俺を尊敬の眼で見ている事が分かって辛い。
俺、今回なんにもしてないんですけどー!!
お読み頂きありがとうございますー。




