75話.ワルキューレの選定戦⑤
「オオッ! 『グレイト・ファング』ゥッ!!」
「ガッ……!」
「烈火ッ!!」
「下がれ烈火! 『残影陣』そして『アイス・ソード』!」
「フハハハ! 良いぞ、中々の威力だっ!」
「チィッ……硬いなッ……!」
「烈火君! 今治療しますね! 『ヒーリング』」
「いちち……すまねぇ紅葉さん……!」
「貰ったぞ!」
「っ!!」
「させるかっ! 『プロテクション』!」
「ぬぉ!?」
「助かる百目鬼! おぉぉぉっ! 『アイス・ソード』!!」
「ぬははは! 無駄無駄ぁッ!」
やはり強い。
魔将ヴォルフガング、その圧倒的な攻撃力に加えて、魔狼のスピード、そしてどんな攻撃を受けても微動だにしない、ゲームではスーパーアーマーという特性を持っていた為、ノックバック等が発生しなかった。
現実ではどんな攻撃を受けても怯まない、厄介な特性になっている。
烈火はパワー型兼タンク型でもあるので、一撃を受けたら不味いこの戦いでは不利。
案の定というか、幾度か攻撃を避けられずに直撃する。
美鈴さんのフォローで何度か防げているが、攻撃が当たるという直前に、その場所へ結界を張るのは至難の業だ。
それも、烈火だけでなく美樹也のフォローもしている。
この戦いの縁の下の力持ちという役割は、間違いなく美鈴さんだ。
そしてそれを理解してるヴォルフガングは、美鈴さんを狙った攻撃をする。
それを防ぐために烈火は立ち塞がり、攻撃を受けてしまうという流れに持って行かれている。
けど……その戦いも、もう終わりだ!
「……リーシャさん、視えた?」
「ええ。ありがとう玲央君。もう『見切った』わ」
「!!」
剣聖、リーシャ・エーデルハイド。
剣聖の名は伊達ではなく、超がつく有能ユニークスキルを所持している。
ただしこれは、発動条件があった。
まず一つ目、師匠である藤堂先生より剣聖技を授かっている事。
二つ目、『剣聖の証』が真鑑定を受けた状態である事。
三つ目、自身より敵のレベルが高い場合に、少しの間戦いが経過すると発動可能。
この三つの条件を満たした時、発動するパッシブ型のユニークスキル『心眼・見切り』。
これはゲーム上では行動回数が数回増えて何度も攻撃が出来るようになり、敵の攻撃回避率がほぼ100%になるイカレたスキルである。
紅葉さんのルートで、敵として現れたリーシャさんはこのスキルを使える。
つまり、レベルを上げていくとこのモードを発動するのである。
ゲームでの敵の時のリーシャさんのレベルは254。
こちらが255以上に上げると、攻略難易度が跳ね上がるのである。
なんせ、こちらの攻撃がほぼ当たらない上に、リーシャさんは複数回攻撃してくるようになる鬼畜モード。
まぁ、一週目であればそんなにレベル上がらないので大丈夫なんだけど、それでなくても強いんだよねリーシャさん。
ともかく、そんな鬼畜なリーシャさんの強さが、今は味方なのである。
こんなに頼もしい事があるだろうか?
「轟君、氷河君、下がって。後は私に任せて」
「リーシャさん……分かったぜ」
「フ……その力、見せて貰おう」
烈火と美樹也はリーシャさんを見て笑い、こちらへと下がる。
「貴殿があの藤堂 誠也の弟子。剣聖のリーシャ・エーデルハイトか。部下達より報告は受けている」
「そう。では名乗りは要らないわね。魔将ヴォルフガング、その命……ここで散らせてあげるわ」
「ククッ……言いよる! 手加減はせぬぞっ! オオオオオッ!!」
「……」
「何っ……!?」
ヴォルフガングの凄まじい速度から繰り出される攻撃を、まるで予測していたかのように回避するリーシャさん。
「遅いわ。『エア・ブレイド』『エアリアル・ブレイド』『トルネード・ストーム』」
「なっ!? ガァァァァァッ!!」
「う、嘘っ……なに、今の速さ……!?」
「俺のスピード、単純な速度とは、また違うな。俺より速い、というわけではなさそうだ。だが……」
「動きに、全く無駄がありませんね……」
「格闘技で習った事があんだけどよ、無拍子っつったかな。予備動作がねぇから実際より速く感じるんだったか、アレに似てんな」
成程、ゲームでの一気に複数回行動は、そういう感じで見られるようになるのか。
そして今回リーシャさんの放った技は、あの奥義へと繋がる。
「さぁ死になさい。『暴風閃・ストームブリンガー』」
「ばか、な、速……グァァァァァァァァッ!!」
「「「「!!」」」」
あの魔将ヴォルフガングを、一気に倒すリーシャさん。
やはり、強すぎる……!
「っ……」
「「「「リーシャさん!?」」」」
フラついたリーシャさんを、慌てて走り寄って支える。
「大丈夫リーシャさん!?」
「え、ええ。この力は初めて使ったから、調整がまだ効かなくて。凄まじい力だけど、体への負担が凄いわね……」
そうか、ゲームではそんな事なかったけれど、実際に体を酷使するのだから、普通に考えたらそうだよね。
俺の考えが足りなくて、リーシャさんに負担を強いさせてしまった。
「すっげぇなリーシャさん! 俺の『ブレイブモード』の時に今の力出されてたら、一瞬で倒されてたかもしんねぇ!」
「フ……全く、そんな切り札まで持っているとはな。ワクワクさせてくれる」
「この戦闘狂共は……。大丈夫リーシャさん? ボスも倒したんだし、これで戦いも……」
「……いえ、美鈴さん。どうやら、まだのようです」
「「「「!!」」」」
紅葉さんの言葉に、倒れていたヴォルフガングの方を見ると、起き上がり赤いオーラを発しながら、立っていた。
「クハハ……。凄まじい威力だな……危うく、切り札を出す前に死ぬところだった。油断はしていなかったつもりだが、貴様達は強い。認めよう……故に、我が命を捧げる。残りの同胞達の為に、貴様達はここで殺さねばならぬ!!」
そう言って、ヴォルフガングは『何か』をその胸に埋め込む。
あれは……!
「ガガガッ……!! どう、ほうたち、よ……こたびの戦いは、我らの、負けだ。だが、敵の主戦力だけは、我が命を賭けて、殺してみせる! お前達は、生き延びよ! 生き延び、我らが無念を晴らし、我らが悲願を、どうか叶えてくれ……!」
「「「「「ヴォルフガング様……!!」」」」」
そうだ、これが魔将ヴォルグガング戦の醍醐味だった。
一戦目を倒すと、二戦目が始まる。
それは、自身の命を糧に力を引き上げる禁忌の魔道具を扱った戦いで、10ターン耐えればヴォルフガングは自滅する。
しかし、その10ターン、ヴォルフガングの猛攻と共に、周りの魔族達が突撃してくる。
敵として表示されず、文章で周りの魔族達の攻撃! と表示されるタイプのものだったけど……
「ヴォルフガング様、申し訳ありません。我らは貴方様と共に、最後までお供します」
「この命、ヴォルフガング様と共に!」
「人間共、絶対に許さん! 我ら魔族達の命を奪った貴様らに、魔罰を!」
「お前達……クハハ、ならばゆこう。我らが命、簡単に奪えると思うなよ!」
凄まじい気迫を向けてくる魔族達。
現実では、どうやら魔族達全員も相手にしなければならないようだ。
こちらは連戦で体力も失っているけれど、ここを凌がなければ死ぬ事になる。
「皆、最後の戦いだ。『オールエンハンス』……ここからは俺も戦う。行こう、皆!」
「「「「「おおっ!!」」」」」
こうして、ワルキューレの選定戦、最後の戦いが始まる。
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