76話.ワルキューレの選定戦⑥
side本郷 彰
「本郷隊長、二年生は敵副官との戦いが互角、一年生が少し苦戦してるっす。一年生の主力達が敵将へと突っ込んで行ったみたいっすから、さもありなんっすけど」
「成程な……玲央達が一年は抜けたんだな。それはかなりキツイだろうな」
「っす。だから、ここは俺達に任せて良いっす。本郷隊長と姉さんには、一二年生の救援に回って欲しいっす」
「え、私も!?」
「ここは俺達でも十分抑えきれると判断したっす。でも、一年生と二年生、どちらかが突破されれば、こっちも厳しくなるっす。そうなる前に、手をうっときたいっすよ。単独で動ける鬼神、本郷隊長と、そんな隊長と肩を並べられる姉さんにしか、こんな事頼めないっす」
「ったく、相変わらず乗せるのが上手いな宗次。了解だ!」
「はいはい、使われてあげる。彰はどっちに行く?」
「俺は一年の方に向かう。鈴華は千鶴と陽葵を助けてやってくれ」
「あら意外。妹ちゃんと陽葵ちゃんを助けに行かないの?」
心底意外そうな顔をする鈴華に苦笑する。
確かに、大切な妹と、俺の事を慕ってくれるもう一人の妹のような陽葵を助けたい気持ちはある。
だけど……
「玲央が抜けた穴を、俺が埋めてやりてぇんだ。それに千鶴も陽葵も、鈴華の事はよく知ってるしな。任せて良いだろ?」
「なーるほど。そ、了解。それじゃ、私は二年生の方に行ってくるわ。また後で彰、宗次」
「おう!」
「任せるっす姉さん!」
ニコッと笑い、二年の元へと走っていく鈴華。
俺も一年の元へと急ぐか!
「本郷隊長、一年生の方に別動隊が向かってるみたいっす。恐らく、敵の主力部隊っす。気を付けて」
「分かった。そんじゃ、行ってくるぜ! ここは任せる宗次!」
「うぃっす! 皆聞いたっすね!? ここは俺達で死守するっすよ!」
「「「「「おおおおっ!!」」」」」
三年の士気は高い。
これなら俺達が居なくても守り切れるだろう、宗次の指揮も健在だしな。
そうして一年の元へ駆けると、今にも死を覚悟してそうな敵陣に孤立している二人を見かける。
間に合え……!
「ごめん、カリス……」
「ゴホッ……お前は、動けるな? なら、私を置いて皆の所へ、走れ……流星……!」
「できるわけないだろ!? 俺を庇って傷を負った仲間を置いて、行けるものか。……それに、そんな事をしたら、榊君に顔向けが出来ないからね」
「馬鹿者……! ここで共倒れするつもりか流星……!」
「……」
「お前……馬鹿者……!」
良い奴だ。
自分の命を惜しみ、仲間を見捨てて逃げる奴も居る。
だけどこいつは、仲間を見捨てなかった。
流石は玲央の仲間だ。
そして、ヴァルハラの仲間だ。
殺させやしねぇ!
二人の前へと『瞬歩』で移動し、周りの魔族を睨みつけ『威圧』をかける。
魔族達は一歩後ろへと後ずさった。
「よく頑張ったな。後は俺に任せな」
「「!! 本郷先輩!?」」
死を覚悟していたであろう二人は、目を開けて驚いた顔をする。
安心しな、玲央のダチを、俺達の仲間を、むざむざ殺させたりはしねぇ。
俺の大切な妹を救ってくれた玲央、そのダチは絶対に守ってみせる。
「「「「「グルルルル……!!」」」」」
「よぉ。よくも俺の可愛い後輩達をやってくれたな。何百倍にして返してやるぜ……!」
「「「「「グオオオオッ……!!」」」」」
「「本郷先輩!!」」
魔族達がまとまって襲い掛かってくる。
それを見た後輩達が叫ぶ。
安心しな!
「『不動明王の構え』……フッ……!」
「「「「「ガァァァァッ……!?」」」」」
「「なっ……!?」」
『不動明王の構え』はカウンターの型だ。
敵の攻撃に合わせて一撃を加える。
敵の数は関係なく、全ての攻撃に対して後の先の一撃を与える。
「ナラバ……ウシロノニンゲンヲ……!」
「「!!」」
「あめぇよ。『金剛夜叉明王の構え』」
「ナ二ィ!?」
「俺が守ると決めた以上、手出しできると思うなよ? そらよっ!」
「ガハァァァァっ!」
「「「「ッ!!」」」」
『金剛夜叉明王の構え』は庇うカウンターつうのかね。
俺が守ると決めた対象を狙われると、『不動明王の構え』と同じくカウンターが発動する。
後の先の技な為、一撃で仕留めれば俺が攻撃を受ける事は無い使いやすい技だ。
「今のうちに下がりな。ここから先は俺が一歩も通さねぇからよ」
「は、はいっ! ありがとうございます本郷先輩! ほら、肩を貸すよカリス……!」
「あ、ああ。本郷先輩、どうしてこちらに……」
「へっ……玲央のダチだろ? なら、俺が守ってやらねぇとな。それに、ヴァルハラの仲間だ。俺の大切な後輩だからな、理由はそれで充分だろ?」
「っ! はい、ありがとうございます、本郷先輩……!」
「……惚れた? カリス」
「黙れ流星……!」
「いだだだだだ……!」
ドオオオオンッ!
「!!」
これは嬢ちゃんの力、か?
どうやら敵将との戦いも佳境に入ったらしい。
「さーて、さっさと片付けるとするかっ!」
side本郷 彰・了
side結月 陽葵
「ぬぅ……! 貴様は、死神と呼ばれしヴァルハラの斎藤 鈴華か……!」
「あら、魔族にはそう呼ばれてるんだ? 私より彰のがよっぽど倒してると思うけどなぁ」
鈴華先輩、魔族からそんな呼ばれ方してるんだし!?
「それより二人とも、まだまだだねぇ。こんな奴にてこずってるようじゃ、まだまだ私の後任は任せられないぞー?」
「「うぐぅ……」」
き、厳しいしー。
チルチルまで(´・ω・`)な顔に。
「あはは、冗談冗談。よく頑張ったね。ここからは私も参戦してあげるから、一気に倒しちゃいましょ」
「「!! はいっ!」」
あーしの横に、鈴華先輩が立って剣を構える。
それだけで、物凄く勇気を貰えるし!
「小癪な……貴様一人が増えた所で、変わらぬ! 『グランド・ダッシャー』!」
「「!!」」
またあの魔法だしっ!
あれは避けるしかな……と思ったら、鈴華先輩は違った。
「んー? 地面が盛り上がる魔法だっけ。それじゃ、封をしちゃいますか! 『アース・クエイク』」
「なっ!?」
「「嘘っ!?」」
ワーグ=ベオウルフの放った魔法を、鈴華先輩の魔法が飲み込んだ。
地面が揺れるんじゃなくて、割れた。
そして割れた大地が閉じて、文字通り飲み込んだ。
「ほら油断。そんなんじゃ将失格じゃない? 『ヴァーティカル・ブレイバー』」
「!? グハァァァァッ!!」
「「!!」」
え、ええ!? 一瞬、ほんの一瞬、魔法に目を奪われた隙に。
鈴華先輩は、ワーグ=ベオウルフの背後に回り、オーラの剣閃を浴びせた。
半端なく速いし……!
「ぐ……は……。なんという、強さだ。そして……そうか、貴様が死神と呼ばれるのは……回復不可の呪いか……!」
「「!!」」
そういえば、あーしやチルチルがいくら傷をつけてもすぐに回復していた傷が、残ったままだし!
「私『暗黒パラディン』だもん。私から受けた傷は治療不可なのよね。魔族達はタフだけど、それは単に自己治癒能力が凄まじく高いだけ。私は天敵だよねぇ。あ、だから死神って呼んでるのか、なんか納得しちゃった」
「くっ……」
こんなにひょうきんなのに、一切隙は無いし。
あーしの、もう一人の憧れの……目標の人。
「さて、殺すよ。魔族は全て滅するから」
剣を構え、目つきが変わる。
その目は、憎悪。
鈴華先輩は、幼い頃に両親を魔族に殺されている。
それから復讐だけを誓い、ヴァルハラに入学したと聞いた。
普段は明るい先輩だけど、魔族と戦う時は恐ろしくなるのは、魔族が憎いから。
大切な両親を殺されたのだから、当然だと思う。
ドオオオオンッ!
「「「!!」」」
「ヴォルフガング様の魔力が……!?」
「どうやら、あっちも決着がつきそうな感じかな。二人とも、行くよ」
「「はいっ!」」
side結月 陽葵・了
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