74話.ワルキューレの選定戦④
side一年生
「ぐぁぁぁっ!!」
「今癒します! 『ヒーリング・ライト』」
「あ、ありがとう……!」
「皆、固まって! 『プロテクション』!」
「こっちもおまけっ!『パワーエンハンス』!」
迫りくる魔族達の攻撃をなんとか凌ぐ一年生達だったが、実質的なリーダーであった榊とロイヤルガード達の不在は戦いを厳しいものとしていた。
「くっ……榊君の指示がないだけで、ここまで変わるのかっ……」
「ぼやくんじゃないよ流星! 私達を信じて先へ行ったんだ、その私達が弱音を吐いてる場合じゃ、無いっ!」
「ギャァァァッ!!」
「カリス……! ああ、そうだね……! 榊君の信に応える為にも、ここで一歩も引くわけにはいかないっ……!」
「『暗黒剣閃』……!」
「グァァァァッ!!」
「君は、ゼウス君かっ!」
「流星殿、俺達は敵を通さなければ良い! ボスは必ずや榊殿達が倒してくれる! 全滅させる事は無理でも、耐えきるだけならば……!」
「みなを癒せ、『聖女の祝福』」
「「「「「!!」」」」」
「皆さん、この癒しはまだ長期間は保てません。ですが……私も魔力を振り絞ります……! どうか、榊様に後悔をさせないよう、頑張りましょう……!」
「ふふ、そうですわね。私達が倒れては、榊様が自分を責めてしまいますわ。さぁ、来なさい魔族共! 貴方達程度に倒されるアタクシではなくってよ! 『満開の薔薇』のように!」
「皆さん、敵のターゲットがお嬢様に少しの間向きます! その間に体制を整えてください!」
「「「「「おおっ!」」」」」
各クラスが力を合わせ、盛り返そうとしたその時……敵に新たな勢力が加わる。
「「「「「オオオオンッ!!」」」」」
「な、なんだぁ!?」
「二足歩行の、狼!?」
「すごい力を、感じる……!」
そう、魔将ウォルフガングの伏兵、精鋭達である。
魔将ウォルフガングが敵の主力達を足止めし、その間に精鋭達が他の生徒達を潰す作戦だった。
「『ヴォイド・ファング』!!」
「!? うぐぅっ……!!」
「お嬢様っ!?」
「ロスファルトさんの防御が一撃で……!? 不味い、皆直撃は避けろっ! リーズさん、ロスファルトさんを!」
「承知しましたっ……! お嬢様、こちらへっ……!」
「うぅ……すみません、ですわ……まさかここまで、攻撃力が高いなんて……」
「俺が前に出る! カリス、ついてきてくれ!」
「了解、背中は任された……!」
リーズがロスファルトを抱えて下がり、ヒーラー達が治療に走る。
聖女であるティナの範囲回復が効いていても尚、致死に近いダメージを負った事から、皆が悟る。
一撃でも受けてはいけない、と。
「「はぁぁぁっ!!」」
「「「「オオオオンッ!」」」」
流星とカリスが挟撃を仕掛けるが、魔族の精鋭達はこれを難なく避ける。
そして……
「『ヴォイド・ファング』!!」
「しまっ……」
「させはしないっ! がはっ……!」
「カリス……!」
必殺の一撃を放たれた流星を庇い、カリスが致命傷を負った。
突出していた二人は、周りに味方は居ない。
敵の精鋭達に囲まれた状態だ。
「ごめん、カリス……」
「ゴホッ……お前は、動けるな? なら、私を置いて皆の所へ、走れ……流星……!」
「できるわけないだろ!? 俺を庇って傷を負った仲間を置いて、行けるものか。……それに、そんな事をしたら、榊君に顔向けが出来ないからね」
「馬鹿者……! ここで共倒れするつもりか流星……!」
「……」
「お前……馬鹿者……!」
カリスの問いかけに、ただ笑って応える流星。
死を覚悟した二人は、目を瞑る。
けれど、いつまで経っても振り下ろされない刃に、目を開けると……
「よく頑張ったな。後は俺に任せな」
「「!! 本郷先輩!?」」
ヴァルハラ学園三年生戦闘科、特殊部隊所属・第一部隊隊長、本郷 彰。
現ヴァルハラで学生最強と呼ばれる男が、二人を守るように立っていた。
「「「「「グルルルル……!!」」」」」
「よぉ。よくも俺の可愛い後輩達をやってくれたな。何百倍にして返してやるぜ……!」
side一年生・了
side結月 陽葵
「でやぁぁぁっ!!」
「はぁぁぁぁっ!!」
「ぬぅぅぅうんっ!!」
チィッ……! こいつ、とんでもなくタフだしっ……!
あーしとチルチルの攻撃をすでに何度も受けてるのに、全然効いてる気がしないし!?
「ふぅ……! しんどいし! チルチル、まだいける!?」
「はぁっ……はぁっ……ええ、まだ大丈夫です陽葵。けれど……このままでは、こちらが先に体力が尽きそうですね」
チルチルに斬り落とされた腕も、なんかにょきって生えてきたし。
化け物だし。
こっちは一撃でも受けたらアウトなのに、あっちは何発受けても大丈夫とか激ムズだし!
「どうしたっ! もう来ないのならば、俺から行くぞっ! 『グランド・ダッシャー』!」
「「魔法ッ!?」」
地面から空へと無数の棘が生えてくる。
直線状のそれを空へ回避する事は出来ないし、横へと回避するしかない。
その軌跡を、追われた!
「砕けろっ!」
「させるかー! 抜刀術『半月・下弦』!」
「ぬぉっ!? 振り上げて俺の腕を弾くか!?」
「そのままぁっ! 抜刀術『半月・上弦』!」
「ぐぁぁぁぁっ!!」
「陽葵っ!」
「あうちっ……いしし、ありがとチルチル」
「まったく、無茶しすぎです。あの抜刀術は本来、斬り上げて振り下ろす連続技にはならないんですよ?」
「空に一回跳んだら行けるかなって思ったし! ちゃんといけたし!」
「はぁ……天才は理屈を超えてくるからもう……」
「なんか言ったし?」
「いいえ、何も」
チルチルに抱きかかえられていたから、もうちょっと堪能したかったけど……そのまま地面に落とされそうだったから、大人しく地面に立つ事にする。
ワーグ=ベオウルフは地面に倒れて起き上がってこない。
倒したかな?
「まさか……ベオウルフ様がやられたのか……!?」
「アリエナイ……!」
魔族達も動揺してるし。
でもそれが分かるくらい、強敵だった。
副官でこれなら、将はどれ程の……
「もう勝ったつもりか……?」
「「!?」」
倒れていたはずのワーグ=ベオウルフがいない。
「陽葵! 後ろ!」
「!?」
「死ねぇ! 奥義『タイタン・ファング』!!」
あ、やば……これは避けられないし。
あーし、死んだかも。
「ほいっと、させないよん! 『ヴァーティカル・ブレイバー』!」
「ぬぉぉぉっ!?」
そう思った直後、ワーグ=ベオウルフの凄まじいオーラを凝縮したパンチを、凄まじいオーラの剣閃が弾き飛ばした。
「ヴァルハラ三年生戦闘科、特殊部隊所属・第一部隊副隊長、斎藤 鈴華……見参ってね」
「「鈴華先輩……!」」
とてつもない先輩が、助けに来てくれたし……!
お読み頂きありがとうございます。
三人称視点って久しぶりに書きましたけど、難しいですね。
読み辛かったらすみません。




