65話.『証』の授与
マカロンは自分の意思ではなく、特性としてそういったスキルを弾いてしまうらしい。
強者故というか……それは仕方ないよね。
「クレハにでも言えば良かろう」
「!!」
そうか! つい忘れがちになるけど、クレハさんも魔将の一人だった!
「お前の中ではクレハの評価が著しく低いようだな。まぁ出会いがアレでは致し方ないが」
まぁその、実は強いイメージは全然無い。
いや強いのは分かってるんだけど。
「アレでも魔族の中でトップクラスの実力者だ。頼れる時は頼るが良い。私からも玲央には協力するように伝えているからな、拒みはしないはずだ」
「マカロン……ありがとう」
というわけで、クレハさんに協力して貰う事にした。
クレハさんのスマホの連絡先は知らないので(というか持っているのだろうか?)紅葉さんに連絡を取る事にした。
紅葉:クレハですか、分かりました。伝えておきますね。
玲央:ありがとう紅葉さん。
紅葉:いえいえ。では明日、午後の時間を頂けますか?
玲央:分かった。って、学園にもしかして連れてくるの?
紅葉:はい。クレハも学園に行きたがっていましたので、入学させる事にしていたんです。御爺様のコネで一発です。
……まぁ、そうだよね。
藤堂先生と親しい西園寺 剛毅さんだ。
話はすぐに通るだろう。
紅葉:本名はクレハ・カーセナルと言うらしいのですが、学園では西園寺 クレハとして通います。
玲央:え? それってつまり(驚きの絵文字スタンプ)
紅葉:はい、養子ではあるのですが、私の姉として登録されました。とても不本意なのですが。
玲央:それはまた(苦笑した絵文字スタンプ)
紅葉さんの姉として、か。
でも、ヴァルハラでは年齢で二年生になれない為、一年生に入学してくる形になるはずだ。
どのクラスに入るのか分からないけど、そのクラスは今後要注意だね。
言ってしまえば魔王の側近がクラスメイトになるわけで……実際の実力がどれ程なのか俺にはまだ分からないけれど、あのマカロンが太鼓判を押す程なのだ。
まぁ本気を出す事はないだろうけど、あの性格だからなぁ……。
紅葉さんとの会話もそこそこに、途中でマカロン欠乏症になった咲が乱入してきたりとあったけど、夜は更けていった。
「おはよう玲央君」
「おはようリーシャさん」
いつも通り、リーシャさんが迎えに来てくれたので一緒に登校する。
いつもは視線がリーシャさんの方に向かうのに、今日は違った。
「ふふ、ようやく玲央君の凄さが皆に伝わったようね」
「え?」
「皆の視線に気付かない? 皆、玲央君を遠巻きに見ているでしょう?」
「……この視線をいつも受けてるリーシャさんや皆を尊敬するよ」
「慣れよ慣れ。玲央君はこうした視線をこれからずっと、いえもっと多くの視線を集める事になると思うわ。今のうちに慣れておきなさい」
「うぅ、小市民の俺には荷が重い……」
モブなんですよ俺。
目立ちたい欲なんて全くない。
むしろ主役達を目立たせたい側なのに、どうして俺が目立つ事になるのか。
「ふふ、玲央君の意識改革は私達でやっていくしかないわね?」
「だな! おはよう玲央、リーシャさん!」
「フ……そうだな。おはよう玲央、リーシャ」
「小市民の気持ち、私は分かるなぁ。烈火のせいで中学から悪目立ちする事がなければ、未だに慣れてなかったと思うもの。おはよ玲央! リーシャさん!」
「そういうものですかね? 誰に見られても、恥ずかしくない自分であれば大丈夫ですよ。おはようございます玲央さん、リーシャ」
気付けば、皆が近くに駆け寄ってきていた。
全然気づかなかった、緊張で視野が滅茶苦茶狭くなっているな俺。
「皆おはよう」
「おお、一年のキングにロイヤルガード達が勢ぞろいだっ!」
「朝から何かあるのかな!?」
「ばっかお前知らねぇのかよ! あの方達は大体一緒に居るんだよ!」
ぐわぁぁぁぁっ! それ俺が言いたいセリフなんですけどぉ!?
俺がそれを言った方達の方を見ると、ビクンと体を強張らせて起立の姿勢になるので苦笑するしかなかった。
そしてE組に入ると、皆が机の周りに集まってきて、昨日の事や今後の事で話が盛り上がる。
それも烈火達がやってくるまでの間だったけれど。
まるでモーゼの海割りのように、烈火達が俺の近くへ来ると道が開ける。
「お、おお、なんか変な感じがすんな」
「ホント。今までなら待つかそのままクラスに帰ったんだけどね」
「フ……周知されると楽なものだな」
「今日、本当の『ロイヤルガードの証』を受け取れるらしいので、より一層分かりやすくなりますよ」
おお、ゲームソフトのパッケージイラストでも四人には分かりやすく刺繍されていたあのマークがついに!
男性は右肩に、女性は左肩にそれぞれ短いマントのように装着するアクセサリーで、四人が揃うと凄まじくカッコいいのだ。
本当の騎士服を着ているかのように、制服なのに錯覚する程だ。
キングはゲームでは噂だけだったので、何も無いと思うけどね。
「よーし、席につけおめーら。ああ、ロイヤルガード達は丁度良いからそのままいろ。各クラスの担任には話を通してある。どうせ玲……ゴホン、榊の近くに居るだろうってな」
流石に毎日集まってるので、先生達にも周知されてしまっている。
「さて、昨日一年のキングとロイヤルガードの紹介をしたと思うが、今日この場で『証』を与える。一年生キング、榊 玲央!」
「はい!」
藤堂先生に名を呼ばれ、檀上へと上がる。
「お前には期待している。一年の皆を導き、いずれはこの戦争を終結させる要としてな」
「!!」
「今はまだ一年のキングだ。だが、これに満足せず上を目指せ。期待しているぜ玲央。さぁ、これが『キングの証』だ。つけてやろう」
そう言って、藤堂先生は俺の胸襟に宝石のような物を付けた。
金色に輝くそれは、非常にカッコいい。
身に着けるのが俺ではそのカッコよさを活かせないのが無念である。
「おお……榊君がいつもより凛々しく見えるね!」
「本当ですわね! カッコいいですわ榊様!」
「お嬢様が惚れてしまいますね」
「リーズぅ!?」
「失礼致しました、もう惚れておりましたか」
「リーズぅ!! リーシャ様に殺されるかもしれないような言動は慎みなさいな!? 主を殺すおつもりですの!?」
相変わらずの主従を微笑ましく見ていると、
「おめーらも来い」
藤堂先生にそう呼ばれ、烈火達も檀上へと上がる。
流石に六人も檀上に集まると手狭である。
「さぁ玲央、お前がつけてやれ」
「え!?」
「こいつらは皆、ロイヤルガード関係無しにお前を守ろうとするだろう。それはお前がキングだからじゃなく、お前がお前だからだ」
「!!」
「そんなお前に着けてもらった方が、嬉しいだろう」
「分かりました」
藤堂先生から『ロイヤルガードの証』を受け取る。
「烈火」
「おう!」
「出会った時から、そして今も、俺は烈火の事を信じてる。これからもよろしく頼むね」
「ああ、任せな玲央! 俺が絶対に玲央には指一本触れさせねぇからよ!」
そうして、右肩に『ロイヤルガードの証』を付ける。
魔法の力が働いたのか、肩に着けると自動で装着された。
「美樹也」
「ああ」
「出会った時から、そして今も、美樹也の事を信じてる。これからもよろしく頼むよ」
「フ……お前は俺が守る。だから俺を有効に使え玲央。お前ならそれが出来ると、俺は確信している」
烈火と同じように、右肩に『ロイヤルガードの証』を付ける。
うん、良く似合っている。
烈火と美樹也がとてもカッコいい。
「紅葉さ……紅葉」
「はい!」
「同じ言葉になってごめん。だけど、これ以上の言葉が浮かばないんだ。紅葉の事を信じてるよ。これからもよろしく」
「玲央さん、ロイヤルガードの任、強制じゃない事を知っていましたか?」
「!!」
「キングが玲央さんだからこそ、私は受けようと思ったんです。そして、烈火君や氷河君、美鈴さんといった素晴らしい学友達と共に居られるからこそ。こちらこそ、よろしくお願い致します」
そう優雅に貴族の御令嬢のように見事なカーテシーをする紅葉さんに、目を奪われる。
なんとか正気に戻った俺は、左肩に『ロイヤルガードの証』を付ける。
「美鈴」
「ええ!」
「烈火や美樹也、紅葉と同じように、美鈴の事を信じてるよ。これからもよろしくね」
「まっかせなさい! 馬鹿烈火やカッコつけの美樹也と違って、私と紅葉さんが居れば大丈夫だから心配ないわよ玲央!」
そう笑って言う美鈴さんに、烈火達も苦笑する。
皆が『ロイヤルガードの証』を身に着け、俺の左右に立った。
「おお……壮観だな……」
「皆カッコいい……!」
「俺達の代表か……俺も少しでも近づけるように、努力しないとな……!」
まさか言われる立場になるとは夢にも思わなかった。
こうして、『証』の授与は終わった。
入院中の書き貯め分その④です。
お読み頂きありがとうございますー。




