64話.玲央は『真鑑定』を
図書館から出た時には、すでに真っ暗だった。
「遅くなってしまったわね。玲央君、咲ちゃん達に連絡をしておいたら?」
「おっと、そうだね」
もはや俺よりも先にその事に気付くリーシャさんである。
玲央:咲、拓、今から帰るよ
咲 :おにい、連絡するのがおっそーい!
拓 :はは。まぁ無事なら良かったよ兄貴。リーシャの姉御と帰るんだよな?
玲央:うん、そうだよ
拓 :なら安心だ! 気を付けてな兄貴!
すでにリーシャさんの方が株が上である、悲しいね。
いや悲しくはないけど。
むしろ推しを家族にも認められて嬉しいまであるな。
「連絡は終わった?」
「うん。気を付けてって」
「ふふ、大切なお兄ちゃんだものね。私が責任をもって家に連れて帰るから安心しなさい」
これ以上ないくらい最高の護衛である。
推しに護衛して貰えるだけでも感激なのに、それが最推しのリーシャさんなのだ。
最初より多少は慣れたとはいえ……
「……?」
ぐふっ……どうかしたの?(言っていない)という風に首を傾げるリーシャさんの姿を見るだけで、心臓がバクバクする。
全然慣れてないな俺。
いつも他の事で必死だったりで、気が紛れていただけだな。
「おう玲央、リーシャ。今帰りか?」
「「!!」」
下駄箱に着いたところで、藤堂先生とバッタリ出会った。
藤堂先生も毎日遅くまで学園に残ってる先生の一人だ。
「藤堂先生、お疲れ様です」
「おう、お前は相変わらず社会人みてぇだな。もっと学生らしくて良いと思うが……」
そう言われても……身に染みた癖というのは中々抜けないものだね。
「リーシャ、都合が合わない時は他のロイヤルガードの奴らに任せる事も視野に入れとけよ?」
「はい。けれど、玲央君を守るのは私の役目だと思っていますから」
「へっ……ったく。お前らに言うのもあれだが、気を付けて帰れよ。特に玲央、送り狼されないようにな!」
「藤堂先生っ!!」
「ガハハハッ! そんじゃなっ!」
リーシャさんに追いかけられながら藤堂先生は走って去って行った。
「まったく、藤堂先生はっ……!」
ぷんぷんと怒ったリーシャさんが歩きながら戻ってきた。
俺の推しは大変可愛らしい。
「それじゃ帰ろうかリーシャさん。いつもお世話になります」
「良いのよ。あ、一応言っておくけれど、藤堂先生の呪いを解くまでってわけじゃないからね?」
「え?」
「やっぱり。そう思ってたのね」
当然である。
呪いが解けるまで俺に何かあったら困るから、守ってくれているのでは……?
「あのね。そりゃ最初は……そうだったかもしれないけれど、今は違うわ。純粋に玲央君を守りたいと思っているのよ。だから、藤堂先生の呪いを解いたからって、この護衛を止めるつもりはないからね?」
「そう、なんだ。……うん、嬉しいな。ありがとうリーシャさん」
「っ!! 私がやりたくてやってるんだから、玲央君は気にしなくていいのよ! 迷惑を掛けてるとか思うのも禁止だからね!」
俺よりも速足で前へと早歩きなリーシャさんだったけど、横顔から顔が赤いのが見て取れた。
本当に俺は仲間に恵まれているな。
その帰り道、数体の魔族に出会うもリーシャさんが軽く撃退。
イベントが近いからか、魔族との遭遇率が上がっている気がする。
「おかしいわね、街中でここまで魔族と出会うなんて……何かの前触れかしら?」
鋭い。これから起こるイベントの前準備を魔族達は行っているのだろう。
その為に結界を超えて街中へと入ってきている魔族がいつもより増えているのだ。
野良魔族が街中へと入って人を襲うのではなく、計画を持って動いているので、人に危害を加えるのは後回しになっているだろうから、直接的な被害は出ていないとは思うけれど。
「それじゃ玲央君、また明日」
「うん、お疲れ様リーシャさん。気を付けて帰ってね」
「ふふ、ありがとう。咲ちゃんや拓君によろしくね」
そう言って、リーシャさんは帰った。
魔族がリーシャさん程の人を襲えば、ほとんどが返り討ちなのは分かっているので心配はいらないのだけど……やはり女の子だから、守って貰っておいてなんだけど、心配してしまう。
「ただいまー」
「お帰りおにいー!」
「お帰り兄貴!」
玄関を開けてただいまを言うと、咲と拓が玄関まで走ってやってきた。
二人の顔を見ると、帰ってきたと安堵する。
「遅くなってごめんな。もうご飯出来てる?」
「ああ、バッチリだぜ兄貴! 今日は兄貴の好きなスパゲッティにしといた!」
「おお、手軽だもんなパスタ」
「そうそう、急な時はこれに限……って違うかんな兄貴!」
「はは、分かってるよ。ありがとな拓。手を洗ってくるから、すぐ食べようか」
「もうお腹ぺこぺこなんだからねおにいー!」
「ごめんて」
咲に謝りながら、洗面所へと向かう。
咲と拓は、俺が居ないと食事を済ませない。
先に食べていて良いと言っているのだけど、一緒に食べると言ってくれるのだ。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様!」
「ふぅ~、相変わらず拓のご飯はおいしい~! いつ嫁に出しても良いね、いや出さないけどね、私の嫁だからね!」
「いやまず俺は嫁じゃねぇよ姉貴。言うなら夫だし、もう姉貴は家政婦でも雇った方が早いまであるな」
「うぐぅ、拓が冷たいおにい」
「よしよし、大切な妹を家政婦になんて任せないからな。安心しろ、咲と拓は俺が一生養うから」
「「それは嫌」」
「なぜぇ!?」
「いや、それはヒモじゃん兄貴」
「私も世話はして貰うけどヒモはヤダ!」
世話はして貰うけどヒモはヤダと来ましたか。
まぁ半分冗談ではあるのだけどね。
咲も拓も年齢の割にしっかりしているから。
拓なんてもうどこに出しても恥ずかしくない主夫である。
「まぁ何があっても俺が居るからねって言いたかったんだ。それじゃ、俺は先に部屋に戻るけど……今日はちょっとマカロン借りるよ咲」
「うにゃ?」
俺達と同じタイミングでご飯を食べていたマカロンを抱き上げる。
皿の中にあった猫缶の中身は綺麗に無くなっていた。
いつも思うのだけど、魔族の王様なのに猫缶食べてるのって、良いんだろうか。
いや見た目は完全なる猫なので違和感はないのだけど、人型を知っているので違和感が凄いというか。
まぁ今更ではあるのだけど。
「うぅ、おにいにマーちゃんを盗られちゃった」
「また人聞きの悪い言い方を」
「姉貴はほぼマカロンと居るじゃねぇか」
「どれだけ一緒に居ても足りないもん! 見て、このプリティな姿を!」
俺に抱き上げられて完全にリラックス状態のマカロンを指さす咲。
うん、魔王と知ってなければとても愛くるしい。
「まぁ可愛いけど、俺は咲と拓の方が可愛いかなぁ」
「「!!」」
「さーて、行くよマカロン」
「にゃ(この天然め)」
何故かマカロンに罵倒を受けながら、自室へと戻る。
「それでどうした、またなんぞあったのか?」
結界を張り外に声が届かなくしてから、いつも通り人型へと戻り椅子に腰かけるマカロン。
威圧感が凄くて、堂々としている。
こうしているとちゃんと魔王なのだけど。
「うん。えっと、『真鑑定』を覚えたくて」
「ああ、あのスキルか。ちなみに私を『鑑定』しても弾かれるから条件を満たせんぞ」
「え゛」
いきなり前途多難になりました。
入院中の書き貯め分その③です。
残り3話分ありますので、今日全部上げてしまいますね。
お読み頂きありがとうございます。




