建国祭②
広場で演奏を見たあと、私達はカフェで紅茶とケーキを頂いていた。
「このショートケーキ美味しい!」
「私のモンブランもおいしいよ」
「え、ほんと?僕そっちと迷ったんだよな~」
「良かったらちょっと食べてみる?」
「え、いいの?ありがとう!」
そういうとジークは自分のフォークで私のモンブランを少量取り口に運んだ。
「うん、こっちもおいしい!僕のも食べていいよ!」
「ありがとう、いただくよ」
――――
「そういえば、この後はどうしようか?」
私は残りのモンブランを食べながらジークに問いかける。
「夜に大広場の方でイルミネーションがあるみたいだから、それまで時間潰したあと見に行くのはどう??」
「そうだね、そうしよう」
――――――
ティータイムも終わり、私達は色々と大通りのお店を色々見て回っているところだ。
そのとき、遠くの方から声が聞こえてきた。
「間もなく王室の方々のパレードが催されますので、道をお開けください!」
「ん?パレード?」
「あ、そういえばそんなこと言ってたかも!建国を記念して王様達が馬車に乗って街を1周するんだったかな?」
「お、せっかくだし見る?どうせ夜までまだ時間あるし。」
「そうだね!」
――――――
道の端に寄って待っていると、やがて遠くの方からラッパの音が聞こえてきた。
「そろそろくるかな」
「あ、そうかも!」
もう少しすると、通りの角から恐らくパレードの先頭であろう整列した騎士たちが現れた。
ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!
騎士たちは隊列を組んで一糸乱れぬ動きで行進している。このような行進は、単純な見映えの他に自分たちの兵はしっかりと訓練されていることを見せ、他国に誇示する目的もあるという。もっともここ数十年大規模な戦争が起きていない現状ではその意味は薄れつつあるが。
その後に続き、豪華な屋根のない馬車が来た。この馬車に乗っていたのはこれまた豪華な服とマントに身を包み、頭に王冠を載せた男性である。王室のパレードでこの格好ということは、彼が国王陛下だろうか。彼は特に何をすることも無く前を見て真顔でじっと座っている。
「国王陛下だ…」
「思ったよりお若いな…」
近くにいた見物人たちがつぶやく。
彼は第1王子ラインハルトと同じくプラチナブロンドの髪に紺色の瞳を持ち、年齢は見た目には40歳すぎくらいに見える。まあ長男と長女が17歳で王族は特に結婚・出産が早いから親の年齢はそんなもんだと思うが、何となく王様=おじいさんというイメージがあったのでギャップを感じた。
「わあ、王様初めて見た…!」
ジークが小声で言う。
「伯爵家の息子でも見たことないの?てっきり貴族の人はみんな見た事あるかと思ってたけど」
「王様はあんまり社交界に顔出さないからね、といっても僕もそんなに積極的じゃないからタイミングが合わなかっただけかもしれないけど…」
「へーそうなのか」
現国王は7年前に王位に就き、優秀な王として君臨している。しかしあまり社交的でないのと、先代国王と比べられてしまい支持はいまいちだ。
先代国王は代々優秀な国王の中でも歴代最高峰のやり手の王と言われ、しかも同じく歴代最高峰の魔導師と言われた"大賢者"エドガス・ラウエンシュタインもいたのでこの時代は"黄金期"と言われていた。なので現国王はその重圧をもろに向けて色々可哀想なのである。
市民がパレードに国王を見る目も、別に現国王のことを嫌っている様子はないが、ちょっと怖がっていたり冷めている人が多い気がする。
「Amour Tale」の王子ルート(王子なら誰でもいい)だとエドガス様越えの魔力を持つ"ヒロイン"が王子の妃になることによって評判も良くなるのだが、生憎今の私にそれほどの力はない。
「あ、王子様来たよ!」
ジークに言われて国王の後ろの馬車を見ると、そこには王子様スマイルで民衆に手を振るラクアの姿があった。そのさらに後ろの馬車には同じく笑顔で手を振るラインハルト殿下とミラ殿下の姿もある。
見物客は国王が来たときよりも活気を取り戻し、王子達に同じく笑顔で手を振っている。中には声援を送っている人もいる。
しかしラクアの王子様スマイルはトキメキとは別の意味でインパクトが強い。
「おーい!」
ジークがラクアの方に手を振る。いや、だから…
「!?」
ラクアがジークに気づき一瞬あからさまに嫌そうな顔をする。しかし次の瞬間には笑顔で手を振り返していた。なお顔は若干引きつっている。なんというか、プロ根性たくましいな。ラクアが会社の上司かなにかなら意外と楽しく仕事ができるかもしれない。…大変そうだけど。
――――――――――――
「ふー、パレード面白かったね!」
「そうだね」
あの後他の王子と王女が色々出てきたが、10人はいたのでちょっと誰が誰だか分からなかった。ただ第3王子は次期対象攻略者候補だったはずなので顔は見たことがあった。
ゴーン…ゴーン…ゴーン……
すると街の中心にある時計塔の鐘が鳴る。
「あ、もうすぐイルミネーションが始まるね、行こっか!」
「うん」
――――――
「おぉ……」
私達は大広場の前まで移動すると、先程来たときにいた演奏家や大道芸人達は消え、代わりに大量のイルミネーションが青と水色に光っている。電飾のように線は無く、何も無いところからひとりでに光っている。
「青と水色って、王子の髪の色と目の色と一緒だね!」
「そうだね。そういえば今年はラクアが神の啓示を受けた年だからどうのこうのって言うのを誰か街の人が言ってたような…」
「あ、そうだったね!それにしても綺麗~」
「そうだね」
あの俺様王子のモチーフカラーなのは若干複雑だが、実際イルミネーションはとても綺麗だった。
――――――――
「そろそろ帰ろっか」
「うん、そうだね!」
一通りイルミネーションを見終わり、私達は帰路に着いた。
しかしこんなにしっかり遊んだのはいつぶりだろうか。異世界に転生してきてからというもの、魔術大会で戦ったり、不審者を追いかけたり、部活動をしたり、お茶会でテロリストを捕まえたり、期末テストを受けたり、大賢者の元に行ったり…大部分は普通の学生のそれではないし、不穏な事態も多数起こっている。それでも不思議と巻き込まれたこと自体はそんなに嫌に思っていない。むしろ自分の手でこの状況を打開できるかもしれないことによる充実感すらある。
ジークに関するゲーム画面の騎士団長のセリフに関してもそうだ。私が何もしなかったゲームの時とは違い、私が介入することによって何かが改善されるのならば、死力を尽くして元のシナリオに抗って見せよう。
そしてこれからもジークや皆と今のように楽しい学院生活が送りたい。私の願いはただそれだけだ。




