騎士団長との"初対面"
「カナ~そろそろ起きてきなさい~!」
「はーい!」
私は返事をしてから1階へと降りる。
「ささ、朝ごはん食べましょ!」
「うん」
ジークと建国祭をまわってから3日、今日はいよいよ騎士団長に会いに行く日だ。
繰り返すようだが、騎士団長は今まで2度雑音と共に現れた"ゲーム画面"の内容を探るほぼ唯一の手がかりだ。ジークをこれから起こるはずの"何か"から守るためにはここで極力情報を集めなくてはいけない。
それと同時に、この前のお茶会の件についてもなにか知っていることがないか聞くつもりでいる。たとえ良い情報が得られなくても、かなり大規模な組織が関係している可能性も否定できない以上、騎士団長にも話を通しておいてバチは当たらないだろう。
「今日はいつ頃行くんだったかしら??」
「昼食を一緒に取ろうって話だったから、昼前には出るよ。」
「そうなのね、わかったわ!」
――――――
昼前になり、今私は家を出ようとしているところだ。ちなみに服装は普段の庶民服もミラ殿下から貰ったドレスも両極端すぎたので学院の制服を着ていくことにした。まあ職業体験感がでるし悪くは無いだろう。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい!」
私は徒歩でジークの家であるロバン邸まで向かう。うちから屋敷までは歩いて20分くらいだ。ジークが迎えに行こうかと言ってくれたのだが、徒歩で来るなら往復40分させるのは申し訳ないし、かといって家の前に馬車がとまっても目立ってしょうがないので断った。
――――――――
しばらく歩くと、ロバン邸の前に着いた。
「カナ・ベルナール様でしょうか?」
すると門の前に立っている警備兵に声をかけられる。
「あ、はい」
「ジーク様よりお話は伺っております。どうぞ中へ。」
そういうと警備兵は門を開け、屋敷の扉の方まで案内してくれた。
コンコンッ!
警備兵が扉を叩く。
ガチャッ!
すると待ち構えていたように扉が開き、中からジークが現れた。
「あ、カナ!」
「こんにちは、ジーク」
「とりあえず中に入って!」
私は警備兵に軽く会釈し、今度はジークについていく。
「じゃあ、早速だけどダイニング行ってお昼食べよっか!」
「うん」
――――――
しばらくそのままジークについていくと、やがて豪華な扉の前にたどり着いた。エドガス様の屋敷も凄かったが、ここもなかなかである。
コンコンッ!
「どうぞ」
ジークが扉を叩くと、中から低い声が聞こえてきた。
「はーい!」
ジークは返事をしてから扉を開けた。すると、中には声の主である男性が1番豪華な椅子に座っていた。黒髪に深緑の瞳を持つ細身の中年男性……彼が騎士団長だ。
騎士団長は椅子から立ち上がりこちらへ向き直る。
「おお、お待ちしておりました、カナ・ベルナール殿。改めまして、私はジークの父で王国第2騎士団の騎士団長、パトリック・ロバンです。」
「パトリック様、本日は私の我儘を聞き入れてくださりありがとうございます。」
「我儘だなんてとんでもない。ジークのご友人であれば歓迎ですし、私も1度お話したいと思っていましたので。」
「それは良かったです」
「さあ、立ちっぱなしもなんですから、どうぞお座りください。」
「はい、ありがとうございます」
私は促されるまま、いつの間にか既に座っていたジークの隣の椅子に腰を下ろした。
「あとは私の妻と、ジークの妹と弟が来ますので、それまで少々お待ちください。」
「わかりました」
ジークには18歳の兄と5歳の双子の弟・妹が1人ずついるそうだ。ジークの兄、つまり長男は父親同様王国の騎士として働いており、今日は都合が合わなかったというのをさっきジークから聞いた。
コンコンッ!ガチャ
少しするとダイニングの扉が開き、女性が1人と子どもが2人入ってきた。
「あら、あなたがカナさんかしら?いらっしゃい。」
女性が私に声をかける。この人がジークの母親、ロバン夫人だろう。
「はい、お邪魔しています」
「「こんにちは!」」
「こんにちは」
今度は2人の子どもが挨拶してくれる。この2人が弟と妹だろう。
「カナ、こっちが僕のお母さんで、こっちが弟のユリウスと妹のユリアだよ!」
ジークが補足で教えてくれる。
「全員揃ったことだし昼食にしようか。」
騎士団長の一言で昼食会が始まった。
貴族の食事というと静かに食べるイメージを勝手に持っていたのだが、ロバン家の食事は比較的賑やかで居心地の良い雰囲気だった。
「さて、カナ殿。私の話が聞きたいのでしたかな?」
「はい。色々と質問してもよろしいでしょうか?」
「もちろんですとも。」
「ではまずは騎士団の構造について…」
その後、私は騎士団長に様々な質問をした。一応"騎士団長や騎士団の仕事内容が知りたい"という体で来ているので、核心に迫る以外の部分を中心に質問していった。とは言ってもそもそも何を質問すれば核心に迫れるかもよく分からないため、手当たり次第に質問するのも一概に無駄とは言えない。
――――
食事を取りつつしばらく質問を続け、そろそろネタ切れしそうなのでもう少し踏み込んだ話を振る。
「ところで、最近不審な出来事や事件が起こったという話を聞いたりはしていませんか?もしくはパトリック様ご自身の周りで何かあったりとかは?」
「ふーむ…特別そういう話は聞きませんな…強いて言うならラクア殿下がご出席されたソルード侯爵主催のお茶会での不審者騒動くらいでしょうか」
「あ、実は私もそのお茶会に出席していまして…」
「おや、そうだったのですか?私はラクア殿下から軽くお聞きしただけでしたのでそれは把握しておりませんでした。もしや、ラクア殿下と共に不審者の対処をしたもう1人というのはあなたのことでしょうか?」
「はい、恐らくそうだと思います。」
「そうでしたか…大事にならなくて何よりです。」
「お気遣いありがとうございます。それで、その後色々調べてわかったことと気になった点があるのですが、後でお話することは可能でしょうか?」
「それは、外部に漏れるとまずい情報、ということですか?」
「はい。今のところ知っているのは調査に協力してくださったエドガス・ラウエンシュタイン様だけで、それ以外にラクア殿下にはお会い出来次第お話しするつもりですが、それとパトリック様以外には今のところ話すつもりはありません。」
私1人ではどうにもならないので味方を増やす必要があるが、その相手は慎重に選ばなくてはならない。
「わかりました。では後ほど場所を変えてお話しましょう。」
――――――
それからもう少しして食事も終わり、私と騎士団長はダイニングを後にし別の部屋へ移動してきた。見た限りでは騎士団長の書斎のようだ。
「それではカナ殿、先程の件についてお話いただけますか?」
「はい」
私はエドガス様やロンから聞いた情報と、それに基づいた推測をなるべく細かく説明した。
「なるほど、他国の介入の可能性があると…」
「はい。あくまで可能性ですが。」
「わかりました。ではこちらの方でも調べておきましょう。本来個人の犯罪は管轄外ですが、国際問題に発展しかねないのであれば我々も動けるかもしれません。」
「ありがとうございます。しかし大々的に動くと勘づかれて逃げられる恐れもありますので、くれぐれも外部には気取られないようにお願いします。」
「はい、もちろんです。それではそろそろお開きにしましょうか。」
「……そうですね」




