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大賢者と、お茶会の謎②

「…そもそもあの男は、シャーロット嬢が目的では無かったのかもしれません。」

「ほう、では何が目的だと?」

「ラクア殿下か私の殺害です」

「なんと…!それはまたどうしてそう思ったんじゃ?」

「目的を持って男を屋敷に送り込むのであれば、お茶会に出席する人物について調べるはずです。そしてあの場であの男を比較的安全に対処できる力を持っていたのは、ラクア殿下と私、ランドルト殿、そしてエドガス様くらいです。剣を基本使わないエドガス様とランドルト殿は敵にあまり近づかないでしょうから、半径5m以内に入る可能性が比較的高いのはラクア殿下と私の2人です。だから、我々のうちどちらか、もしくは両方を狙ったと考えました。かなり憶測が混じった考えにはなってしまいますが…」

「ふむ……難しいのう。かなり理にかなっているように思うんじゃが、いかんせん確かめようがない。」

「はい。せめてあの男が生きていれば話は変わってきたのでしょうが…」

「そういえば、男の死因は何か分かったのかの?」

「それが、結局詳しくは分からずじまいなようで、男が普段から使用していたと思われる依存性の薬物が原因ということになったそうです。」

「本当の死因は違うとでも言いたそうじゃのう。」

「はい。これも推測の域を出ませんが、これまでの不審な点を考えると、男は口封じに殺されたと考えています。」

「もしそうだとすれば、口封じした人物はかなり厄介な人物かもしれんな。」

「と、言いますと?」

「呪法具の入手ルートのことじゃ。途中までは流れを追えたんじゃが、なんとも調べづらいところに行き着いてのう。」

「調べづらいところと言うと…」

「他国じゃ。具体的には共和国じゃな。」

「な…では共和国の人間が関わっていると?」


帝国は基本王国と友好関係にあるのに対し、帝国と同じく隣国の共和国は戦争こそ無いものの国境を越えるのは中々難しい。そのため国を超えて何かを、ましてや違法物を持ってくるのは至難の業である。


「その可能性が高いな。共和国の人間が持ち込んだのか、王国の人間が共和国まで入手しにいったのかは分からぬが、いずれにせよ敵は一筋縄ではいかなそうじゃのう。」

「そうですね…」


どうやら想像以上に規模が大きい話になってきた。さすがに私だけで考えることではなさそうだし、他国が絡んでいるなら国際問題にもなりかねないので、王族からの支援を期待して1度ラクアに報告するとしよう。


――――――


その後もう少しエドガス様と議論し、とりあえず一段落ついた。


「さて、例の件で話せそうなことはこれくらいかのう。」

「そうですね」

「この後は呪法具と魔法銃の実物を確認してもらうついでに研究室見学でもしてもらおうと思っておったんじゃが、どうかの?」

「よろしいんですか?」

「もちろんじゃ。ワシも研究に関して話し相手が欲しいんじゃが、中々言ってることを理解してくれる人が少なくてのう。お嬢さんなら分かってくれそうじゃ。」

「そういうことであれば、ぜひお願いします」

「では、さっそく行こうかの」


私達は来賓室を後にし、エドガス様の研究室へと向かった。


「さて、ここじゃな」


地下へと繋がる階段を降りると、魔法薬やら本やら実験器具やらでもはや迷路と化しただだっ広い空間についた。大きさは教室4個分くらいだろうか。


「おお…」

「まあ、先程も言ったようにごちゃごちゃしとるが、ゆっくりしてってくれ。」

「ありがとうございます」

「あ、先に例の呪法具と魔法銃を確認しておくかの?」

「はい、お願いします」


その後呪法具と魔法銃を改めて見直した。とは言っても当然ながら、素人目で見たところでエドガス様が突きとめた以上のことは分からなかった。


「ところで、エドガス様はあのときなぜこれが呪法具だとわかったのですか?」

「ああ、それは"呪力視(じゅりょくし)"を使ったんじゃ」

「呪力視…?」

「そうじゃ。お主、魔力視や元素視は知っているかのう?」

「はい、一応どちらも使えます」

「ほう、その歳で使えるとは大したものじゃのう。…それで、呪力視と言うのはその名の通り、呪力を可視化できる力じゃ。」

「そしてエドガス様はその呪力視を使って呪法具だとわかった、と」

「そういうことじゃ」


なるほど、呪力視なんてものがあったのか。それがあれば魔術大会のときに見たあの謎の男が呪法師かどうかも分かったんだろうな。それに奴が私の魔法陣を消した方法を見つけるヒントになるかもしれない。


「…その呪力視を、私が習得することは可能でしょうか?」

「できると思うぞ。基本的な習得手順は魔力視と同じじゃからな。もっとも呪力のあるものを持っていないと使えているか確認出来ないから自力では厳しいと思うが…ワシに習ってみるかのう?」

「…よろしければ、ぜひお願いします」

「ふむ。それなら度々ここに来て習いに来るといい。ワシはどうせ暇人じゃから、いつでも大歓迎じゃ。」

「ありがとうございます」

「あとは…そうじゃな。呪力視の習得の仕方をまとめた資料が確かこの辺にあったんじゃが…」


そう言ってエドガス様は近くの本棚を(あさ)り始めた。本棚と言っても置いてあるのは論文らしき紙束で、整頓されておらず結構ぐちゃぐちゃである。


パサッ…


すると、エドガス様が漁っていたところの隙間から1つの紙束が落ちてきた。


私はそれを拾い上げ表紙を見る。表紙にはこう書いてあった。


"複数属性の魔法使用の可能性について


著者 : シェルシェーレ・シュバルツ"


「複数属性の魔法使用…?」

「ん?ああ、それか。それは帝国の魔法研究所に勤めてるお嬢さんが書いた論文じゃな。知り合いがそこに勤めておって面白いからと送ってきたんじゃ。良かったら貰っていくかのう?」

「え、しかし貴重な資料をいただく訳には…」

「いや、それは論文と言ってもエッセイや小説に近い内容じゃから無くても問題ないわい。まあ内容自体はなかなか面白いんじゃがな。」

「…それなら、ぜひ」

「じゃあ、その資料はあげて、それと別にこの呪力視に関する資料は貸そう。こっちは急ぎではないが必要なくなったら返しとくれ。」


そういうとエドガス様は別の紙束を渡してくれた。その表紙には "呪力視の習得について" と書かれている。


「わかりました、ありがとうございます」

「さて、それじゃあ今日は真面目な話はこの辺にして、お喋りでもしてから帰るかの」

「はい」


――――――


その後エドガス様から趣味や研究について色々と聞き、今は帰ろうとしているところだ。呪力視の資料や貰った論文モドキと、その後さらに借りた面白そうな論文の内容は家に帰ってからゆっくり読むとしよう。


「それじゃあ、気をつけて帰るんじゃぞ」

「はい。今日はありがとうございました、それでは…」

「…お嬢さんや」

「なんでしょうか?」

「もし、呪力視のこと以外でも困ったことがあればワシに言っておくれ。こんな老いぼれじゃができることなら協力しよう」

「…ありがとうございます、それは心強いです。それでは私はこれで。」


こうして私はエドガス様の屋敷を後にした。


「しかし、随分と勤勉な15の少女がいたものじゃな。何かの拍子に潰れないといいんじゃが…」



―――――― 大賢者と、お茶会の謎終わり

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