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魔術大会7日目︰閉会式

「じゃあ皆さん、午前は自由行動ですが午後から閉会式なので、それまでには戻ってきてくださいね」


日付も変わり、今日は魔術大会7日目、つまり大会最終日だ。長かったような短かったようなこの大イベントも終わりを迎える。


本来なら一仕事終えてスッキリするところなのだが、私はむしろ気がかりなことが増えてしまった。


まず雑音と共に見えたゲーム画面の内容。これはジークの父親である騎士団長とのコンタクトで何か進展があることを祈る。


そして昨日見た不審な中年男。あれは絶対ただの不審者ではない。


そもそも彼からは魔力が感じ取れなかったのだが、こうなる可能性は大きく3つ。


魔力を何らかの理由・手段で隠しているか、そもそも人間では無いか、魔法の代わりに呪法を使う呪法師か、だ。


呪法というのは魔素の代わりに呪素というものをエネルギー源にするもので、名前は似ているし発動のメカニズムも近いが、その用途は全く違う。


呪法でやることと言うと、疫病の病原菌を作ったり、特定人物を呪いにかけて殺したり、死者をゾンビにしたりなどだ。一般的なファンタジー作品の闇魔法に近い。


ちなみにリアムール王国は呪法の使用を法律で禁止しているが、一部の犯罪者にその力は確実に受け継がれている。


そして呪素や呪力は魔力視では見えないので、奴が呪法師である可能性が浮上するという訳だ。


そういう訳で、可能性のうちのいずれの場合にしても、ただのそこら辺のおっさんでないことは明確だ。


そもそもあとをつける私の気配を気取ったり、私の魔法を消したり、"あんたを外しておいて正解だった"などと意味深長なことを言ったりしている時点で怪しさ満点だ。これは勘でしかないが、奴もジークの身に起こる"何か"に関わりがあるのではないかと思う。


私はあのとき制服を着ていたので、この学院の生徒であることはわかるはずだ。そしてそれ以前に、"あんたを外しておいて正解だった"というセリフから、私のことを何らかの手段で知り、何らかの選定にかけた結果外したということになる。状況からして、奴は魔術大会で戦っている様子を見て判断を下したと考えるのが妥当だろう。


もう少し考察できそうだが、あんまり決めつけすぎても良くないので、とりあえずあの後すぐにあった出来事と今の考察をジークに関してだけ伏せてクラス担任の先生に報告した。するとどうやら学院の方で調査してくれるらしい。まあ、私が動いたところでどうにもなりそうにないし、ここはプロに任せておこう。


――――――――――


「えーこの度は魔術大会の閉会式へお招き頂き…」


午前中はダラダラ過ごし、午後になって今は閉会式の最中だ。いろんなところのお偉いさんがスピーチをしている。魔術大会の代表ともなると将来有望な生徒も多いので、視察やスカウト目的で来る人も多いのだ。ちなみに祝辞を言う人以外は学校関係者しかおらず、試合のときとは打って変わって粛々とした雰囲気だ。


――――


「続きまして、表彰を行ないます。まずは1年生の部。」


表彰では各入賞者にメダルが授与され、それに加えて総合成績1位、つまり総合優勝のクラスにはトロフィーが送られる。


「団体戦、3位B組、2位H組、そして1位A組の代表者、前へ」


B組ランドルト、H組ベークマン、A組からはアランが前に出る。私は何となくベースマンに見つからないようにジークの影に隠れる。


「おめでとうございます」


それぞれの首にメダルがかけられる。代表者以外も後で貰えるそうだ。


「続いて個人戦、3位B組ラクア・リアムール、2位A組カナ・ベルナール、1位A組ジーク・ロバン、前へ」


団体戦もそうだが、3位決定戦では両方B組のランドルト達とラクアが勝ったらしい。


「おめでとうございます」


私たちにもメダルがかけられる。私の首元には銀メダルが光っている。


「そして最後に総合成績が210点で3位のH組、230点で2位のB組、330点で1位のA組の代表者、前へ」


結果だけ見れば、A組は結構ぶっちぎりで1位だった。私個人としてはそんな余裕しゃくしゃくという感じでもなかったが。


代表はジークがやるだろうと思いボーッと立っていると、ジークが耳打ちしてきた。


「カナ!前でなよ!」

「え、でも獲得点数的にはジークの方が多い…」

「いいから!」


そういって背中を押してくるので、そのまま私は前に出る。


「おめでとうございます」


今度は金メダルとトロフィーが渡される。


「それでは総合優勝のA組代表者カナ・ベルナールさん、一言お願いします」


え、一言?特に事前に知らされてはいなかったので少しまごつく。


「…この度は、1年生の部で総合優勝できたことを非常に嬉しく思います。この成功体験を糧に、更なる高みへと行けるように、これからも日々精進していきたいと思います。」


パチパチパチパチ……


会場全体から拍手が起こる。まあ、変なことは言っていないだろう。


――――――


「それでは、閉会式を終わります」


閉会式も終わり、みんなぞろぞろと戻っていく。このまま特にHRもなく解散らしい。


私達も人の流れに乗って移動していると、見覚えのあるメガネの少年が近づいてきた。


「少しよろしいでしょうか、ベルナール様」

「ええ、大丈夫ですが、どういったご用件でしょうか?」

「用件について話す前に、私についてきて頂けませんか?」

「…承知致しました」


そういうとランドルトはどんどん人がいない方へと進んでいく。え、何決闘でもするの?と思ったが、ランドルトがそういうことをするタイプにも思えない。


そうこうしているうちに目的地に着いたようだ。ここは校舎裏だ。昨日といい校舎裏に縁があるななどと考えていると、ランドルトが口を開いた。


「実はベルナール様に折り入ってお頼みしたいことがございまして…」


頼み事という割に、ランドルトがまるで告白前の男子かのようにまごつく。


「…ラクア・リアムール殿下の婚約者になっていただけないでしょうか!」


「…は?」


…え?どういうこと?

思わず"は?"などと言ってしまったが、実際問題状況が飲み込めない。


「えっと、それまたどういうことでしょうか?」


ランドルトがジリジリと寄ってくる。


「ベルナール様の凄さは身をもって体感致しましたし、何よりあの殿下を倒してしまわれた。女性で、いや性別を問わずその年齢でそこまで洗練された力をお持ちになっている方はそうそういらっしゃいません。それに殿下もあの試合以降特に、あなたの事をよく話してらっしゃいます。そこでベルナール様を是非婚約者にと考えている所存でございます。」


ランドルトがまくし立てるように話す。しかし、その理屈は無理があるだろう。強いって言うなら婚約者より騎士とかに誘った方がいいし、ラクアが私に興味を持っているのは単純に推薦合格者なのと自分を負かした相手だからだ。


それに、私はラクアと結婚したいとは思っていない。この世界の女性の常識として、王族と結婚するのは最大の幸福とされているが、あいにく異世界生まれなものでそういった価値観は無いのだ。ラクア個人に対しても、同期生として親睦を深めたいと思っている程度だ。


とりあえず、失礼にならないように遠回しに断ってみる。


「なるほど。しかし、私は平民ですから王子であらせられる殿下との婚約は厳しいのでは?それと、殿下ご自身はどう思われているのでしょうか」

「それに関しては、あなたのように将来有望な方なら国に貢献する意思さえあれば国王がベルナール様に男爵位を授けることが可能かも知れませんし、そうでなくとも養子に欲しがる貴族も多くいるでしょうから問題ないかと。ちなみにこのことは私の独断で、ベルナール様の同意が得られれば殿下に推薦しようと考えておりました」


やはりそうなるか。この国には国に大きく貢献した平民に1代限りで爵位を与える制度が存在する。実際、私が「Amour(アムール) Tale(テイル)」で唯一プレイした第1王子ルートでも、"ヒロイン"に爵位を与えようだのどこかの貴族の養子にしようだの言う話は出ていたし、どっちかは忘れたが実際そうしていた気がする。


しかし、ラクアに話を通す前というのは唯一の救いだ。


「申し訳ありませんが、殿下に直接お声がけ頂いたのならともかく、私の方からそのような差し出がましい申し出をするのはいくらランドルト様の推薦があるとはいえはばかられます。」

「………」


さすがにまずかったか…?


「…そういうことであれば仕方ありません。今は手を引きましょう。しかし、普通の女性なら全力で食いつくであろう提案を断ってしまわれるとは、さすが殿下がお認めになったお方ですね。もし気がむくことがありましたらいつでもお申し付けください。」

「…承知致しました」

「それでは、失礼致します。あ、あとラクア様にタメ口なら次から私にも敬語は無しでお願いしますね」


そういうとランドルトは去っていった。


なんだか余計沼にハマった気がしないでもないが、かと言ってこれ以上どうしようもない。


しかし、ラクアが直々に生徒会役員に誘ってきたことといい、突然ランドルトが"婚約者に"なんて今までこの字も出てこなかったワードを出してきたことといい、正直ちょっと彼らの行動は不自然だ。


もしや、元の「Amour(アムール) Tale(テイル)」のストーリーから大きく外れている今の状況から元の状態に戻すために、彼らにも無意識の内に"修正"が入っているのでは?


……これはあくまで憶測に過ぎないわけだが、もしそうだとしたら私はもっと「Amour(アムール) Tale(テイル)」のストーリーに向き合わなくてはいけないのかもしれない。


――――――――― 魔術大会編終わり

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