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第一話 後編

学校についた。


校門の前の、桜の木。


ちょっと葉っぱが多くなってる。五月くらいだろうか。


教室に入ると、わーっと、騒がしい声に包まれた。


ああ、このうるささ。


懐かしい。


でも、同時に、頭がちょっと痛くなる。


席に座ろうとして、気がついた。


オレの席、どこだ。


「ヒロキ、そこ、ちがうよ」


横から、声がした。


「窓際の、うしろから2番目。昨日と同じだよ」


振り向いて、固まった。


男の子が、立っていた。


細くて、色白で、前髪が少し長くて。


笑うと、片方のほっぺにだけ、えくぼができる。


……ユウタだ。


そうだ。


こいつ、ユウタだ。


どうして、今まで、思い出せなかったんだろう。


顔も、声も、名前さえ、ずっとぼんやりしてた。


でも、今、目の前にいるのは、間違いなく、ユウタだった。


胸の奥が、ぎゅっと、ぎゅーっとなった。


さっきより、ずっと強く。


「……ユウタ」


「なに? 変な顔して」


「いや、その……」


言いたいことは、いっぱいあった。


でも、何から言えばいいのか、わからなかった。


オレ、お前に、ずっと謝りたくて。


あのとき、ひどいこと言って。


お前が転校した理由、たぶん、オレのせいで。


でも、ユウタは、きょとんとしたまま、笑った。


「へんなの。今日、ヒロキ、なんかおじさんみたい」


「……え?」


「うそうそ! 冗談! ほら、座れよ!」


ユウタは、オレの肩をポンと叩いて、自分の席に戻っていった。


おじさんみたい。


……みたい、じゃないんだけどな。


実際、おじさんなんだけどな。


ふっと、笑いそうになった。


でも、その直前で、喉のあたりが、きゅっと詰まった。


オレは、ひとつ、深呼吸をした。


窓の外の、桜の葉っぱが、さわさわ揺れていた。


とりあえず、今日一日、やってみよう。


何が起きてるのか、まだぜんぜんわからない。


でも、この教室に、ユウタがいる。


それだけは、はっきりしてた。


「起立!」


日直の声が響いた。


オレは、パツパツの半ズボンで、ガタッと立ち上がった。


椅子が、ミシッと鳴った。

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