朝
目が覚める。
理由はない。
外が明るくなり始めたことだけが、分かる。
布団を出ると、空気は冷たすぎず、
昨日の朝ほどの差も感じない。
畳の感触は、記憶の中のものと区別がつかなかった。
身支度を整え、障子を開ける。
庭は、すでにそこにある。
昨日と同じように見える。
山茶花の木も、
咲いているのか、落ちているのか、
気に留めるほどの違いはない。
縁側に出る。
足を置く位置は、意識せずに決まる。
立ち止まることも、迷うこともない。
庭の奥で、何かが動く。
鳥か、風か、
確かめようとは思わない。
背後に、人の気配。
振り返らずとも、誰かがいることは分かる。
それが誰であるかを、考える必要もない。
しばらく、そのまま立つ。
時間が過ぎていることは、
影の動きで知る。
足音が遠ざかる。
近づくことも、声をかけることもない。
朝のうちに済ませることを、順に片づける。
廊下を歩き、
戸を開け、閉める。
その一つ一つが、
昨日の続きでしかない。
食事の場に行く。
席に着く。
器に手を伸ばす。
誰かが向かいに座っている。
だが、その存在は、
向かいに椅子があるのと同じ程度だ。
言葉は交わされない。
それを、不足だとは感じない。
食事が終わる。
立ち上がる。
それぞれの場所へ戻る。
庭に出ると、
朝の光はすでに強くなっている。
同じ日が、
確かに始まっている。
それが、
昨日と違うかどうかを考える理由はなかった。




