↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『凡人の俺、一万円札に転生して最強の幼馴染の財布を目指す』  作者: 凪塩 未来


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/37

シーズン3第3話:地下賭博場の罠

裏社会の残党が牛耳る違法カジノの存在を突き止めた駆と無糖。

被害者たちの未来を取り戻し、悪質な罠を粉砕するため、二人はついに禁断の地下賭博場へと足を踏み入れる。

人間の欲望が渦巻く極限の空間で、天才と凡人のコンビが仕掛ける巧妙な罠とは――?


それでは、シーズン3第3話「地下賭博場の罠」の本編をどうぞ!

会員制バーの奥に隠された重厚な鉄の扉が、鈍い音を立てて開いた。

地下へと続く階段を降りるにつれて、むせ返るような熱気と、けたたましい電子音、そして人間の欲がぶつかり合う独特の濁った空気が鼻をつく。


そこは、表社会の法律や倫理が一切通用しないアンダーグラウンドの巨大なカジノだった。

中央のルーレット台やバカラのテーブルの周りには、高級スーツに身を包んだブローカー崩れの男たちや、目を血走らせたギャンブラーたちが群がっている。その頭上では、複雑なシャンデリアが怪しく光り、人間の狂騒を冷ややかに見下ろしていた。


「……相変わらず、悪趣味な空間だな」

隣を歩く無糖峰は、周囲の喧騒などまるで気にする様子もなく、冷ややかな視線をフロア全体に巡らせていた。その洗練された佇まいは、この闇の世界において逆に異様なほどの存在感を放っている。

「ああ。かつて、俺が『お札』としてこの手の連中の財布を渡り歩いていた頃と、本質的には何一つ変わってない」

駆は低く呟きながら、ポケットの中で拳を強く握りしめた。

あの頃の自分は、ただの紙切れとして人間の愚かさを見つめることしかできなかった。しかし、今の自分には意志があり、仲間がいて、そしてこの腐った仕組みを叩き潰すための「力」がある。


「緊張しているのかい、駆?」

「まさか。武者震いってやつさ。……で、今回の標的はどこにいる?」

「ふっ、慌てん坊だな。すでにデータは揃っている」


無糖はスマートフォンの画面を軽くタップし、フロアの奥に陣取るVIPルームの方向をあごでしゃくった。

「今回の裏資金の洗浄と、被害者たちから金を巻き上げている元凶――このカジノの真のオーナーであり、かつての闇金組織の幹部だった『鬼頭(きとう)』という男が、あそこの奥の個室にいる」


二人はフロアを進み、目当てのハイローラー(高額賭博者)向けのテーブル席へと陣取った。

ディーラーを務める男は、鋭い眼光を隠そうともしない冷酷そうな顔つきをしていた。テーブルの上に積み上げられたチップの額は、一般人の一生分の給料に匹敵する。


「おや、見慣れない顔だな。新規のお客さんかい?」

冷ややかな笑みを浮かべたディーラーが、二人を一瞥して声をかけてきた。

「大勝負をしに来ただけだ。……このテーブルの最高レートはいくらだ?」

無糖が涼しげな笑みを浮かべ、あえて挑発的な口調で言い放った。その落ち着き払った態度に、周囲の客たちの視線がちらりと集まる。


「ほう、威勢がいいねぇ。このVIPテーブルでは、一回の賭け金の上限はない。ただし、持ち込むだけの『信用』が証明できればの話だがね」

ディーラーが含みのある笑みを浮かべる。それは、ただの金持ちではなく、裏の事情に通じた人間しか相手にしないという暗黙のサインだった。


無糖はあらかじめ用意していた電子ウォレットの暗号鍵をスマートフォンの画面で提示した。

そこに表示された数字を見た瞬間、ディーラーの顔色が変わった。

「……これは失礼しました。大口のお客様のようですね。すぐにオーナーをお呼びしましょう」


計画通りだった。

無糖が意図的に巨大な資金の匂いを漂わせたことで、裏で糸を引いている者たちが自ら姿を現さざるを得ない状況を作り出したのだ。


数分も経たないうちに、VIPルームの扉が開き、ぎらぎらとした金のネックレスを首から下げた大柄な男が姿を現した。

かつての闇金組織の幹部――鬼頭だった。

その顔には、かつて駆が多重債務の夜や組事務所の隅で目撃した、人間の不幸を吸い取って肥え太った者特有の醜悪な笑みが張り付いていた。


「へぇ、こんな若い連中がウチのシマで大金を使おうってのか。最近の若いもんは度胸がいいねぇ」

鬼頭は不敵な笑みを浮かべながら、二人の向かいの席にドカッと腰を下ろした。

「君たちが、このカジノの裏で小賢しいマネーロンダリングを仕掛け、真面目にやり直そうとしている人間たちから金を巻き上げている連中か」

無糖は微動だにせず、真っ直ぐに鬼頭の目を据えた。その声音には、恐怖のかけらもない。


鬼頭の表情がわずかに険しくなった。

「なんだ、お前ら……。うちの商売に難癖をつけに来たってのか?」

「難癖じゃない。事実の確認と、精算だ」


その瞬間、駆はテーブルの上にスマートフォンを放り投げた。

画面には、鬼頭たちの組織が不正に吸い上げた資金の全送金ルートと、被害者たちの口座履歴、そしてこのカジノの違法な裏帳簿のデータが完璧に映し出されていた。


「なっ……!? お前、一体どこでそのデータを……!」

鬼頭の顔から血の気が引く。周囲に控えていた黒服のボディガードたちが、一斉に懐に手を伸ばし、緊張した空気が一瞬で張り詰めた。


「驚く必要はない。君たちがどれだけ巧妙にシステムを隠蔽しようとも、人間の欲望の痕跡には必ず『数字の歪み』が残る。それを読み解くのが、僕たちの仕事だからね」

無糖は眼鏡のフレームを押し上げ、冷たく言い放った。


「ふざけやがって……! ガキどもが生意気な真似を……! お前らをここで生きて帰すと思うなよ!」

鬼頭が激高し、テーブルを激しく叩いた。周囲のボディガードたちが一斉に近づき、二人の退路を塞ごうとする。


しかし、駆はその威圧感に怯むどころか、かえって不敵な笑みを浮かべた。

「生きて帰れないのは、どっちだか分からないぜ、おっさん」

「なんだと……?」


「暴力で脅して、金を奪い返すしか能のないお前らに、正当な勝負を持ち込んでやるよ」

駆はテーブルの前に仁王立ちし、ハッキリと言い放った。

「この勝負、俺たちが勝ったら、お前らが巻き上げた全ての資金を今すぐ被害者たちの口座に全額返還してもらう。――どうだ、受けるか?」


鬼頭は歪んだ笑みを浮かべた。

「生意気な口を……! うちのカジノで俺に勝てる奴なんていねぇんだよ! いいだろう、その代わり、お前らが負けたら、その全財産と……お前らの人生そのものを根こそぎいただくぜ!」


地下賭博場の熱気が最高潮に達する中、かつての「お札」と「天才」が仕掛けた反撃のゲームが、ついにそのゴングを鳴らした。

シーズン3第3話「地下賭博場の罠」をお読みいただき、ありがとうございました!

ついに黒幕である鬼頭との直接対決へと発展し、地下カジノを舞台にした緊迫のマネーゲームが幕を開けました。果たして、二人は悪質な闇の組織をどう打ち負かすのか――。

次回の第4話もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。