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『凡人の俺、一万円札に転生して最強の幼馴染の財布を目指す』  作者: 凪塩 未来


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シーズン3第4話:漆黒のテーブル

裏社会の黒幕・鬼頭が仕切る地下賭博場。

逃げ場のない極限の空間で、佐藤駆と無糖峰の二人は、被害者たちの未来を取り戻すための「一世一代の大勝負」に挑む。

暴力と欲望が支配するルール無用のテーブルで、天才の頭脳と凡人の執念が激突する緊迫の第4話。


それでは、シーズン3第4話「漆黒のテーブル」の本編をどうぞ!

地下賭博場のVIPルームに漂う空気は、息が詰まるほど重く冷たかった。

鬼頭の合図で、周囲を取り囲む黒服のボディガードたちが威圧的な視線を突き刺してくる。だが、無糖峰はそんな殺気などまるで空気のように無視し、目の前のフェルト地のテーブルを静かに見据えていた。


「勝負の方法はシンプルにしようか、鬼頭さん」

無糖は涼しげな笑みを浮かべ、指先でチップを一つ軽く弾いた。

「ただの運任せのルーレットでは君たちのような素人がイカサマをする余地が残りすぎる。だからといって複雑なゲームでは時間の無駄だ。――テキサスホールデム、一戦勝負。持ち込むレートは、君たちが巻き上げた全資産に相当する額だ」


その言葉に、鬼頭の顔がわずかに歪んだ。

「一戦勝負だと……? なかなかいい度胸をしてやがる。だが、お前らにその額を支払うだけのバックボーンが本当にあるのか?」

「心配いらない。僕たちの資産はすでにこの端末を通じてクラウド上で担保されている。君が勝てばすべて君のものだ。ただし――」

無糖の瞳が、ふっと鋭い光を帯びた。

「僕たちが勝てば、今すぐ全被害者の口座へ資金を全額返還し、君たちのその汚い組織のデータすべてを警察とメディアに開示する。異論はないね?」


鬼頭は不敵な笑みを浮かべ、鼻を鳴らした。

「上等だ。ガキが調子こいてんじゃねぇところを見せてやるよ。ディーラー、カードを配れ!」


ディーラーの手によって、無情なまでに正確な手つきでカードが配られていく。

駆は自分の手元に配られた二枚のカードをそっと確認した。

――弱くはないが、決して決定打にもならない、微妙なハンドだった。


テーブルの向かいに座る鬼頭は、余裕の笑みを崩さない。長年、この裏社会の修羅場をくぐり抜け、人間の弱みや絶望を喰らい物にしてきた男のハッタリは、素人が見ればそれだけで気圧されるほどの重圧を持っていた。


(こいつ……! 手元は見えなくても、明らかに裏で何かを仕込んでいる目をしてやがる……)


駆の脳裏に、かつて一万円札として財布の中にいた頃の記憶がフラッシュバックする。

多重債務で追い詰められ、震える手で金を差し出す男たちの涙。あのとき、人間を食い物にする連中はいつも、こうした狡猾な騙し合いで弱者を追い詰めていたのだ。

許せない、という怒りが駆の胸の内で静かに、しかし激しく燃え盛る。


「どうした、坊主。手が震えてるぞ?」

鬼頭が嘲笑うようにチップを大きく前に押し出した。

「レイズだ。これ以上勝負したけりゃ、同額を乗せてみな」


場に漂う緊張感がピークに達する。

無糖はまだ、自分のカードすらまともに見ようともせず、ただじっと鬼頭の指先の微細な動きや、瞳の動きを観察していた。


「……ふむ」

無糖は小さく呟くと、自分の手札を伏せたまま、ゆっくりと口を開いた。

「鬼頭さん、君のその左手の小指の微かな震え、そして呼吸の間隔。統計学的に見ても、君の手札はそこまで強くない。あるいは、ディーラーとのアイコンタクトで次のカードを特定の場所に誘導する『仕込み』を疑っているところかな?」


鬼頭の顔色が変わった。

「なっ……何をわけの分からないことを……!」

「図星だろ。君のような人間が、正々堂々とした勝負で勝てるわけがない。だからこそ、こうした裏の賭博場でしか生きられないのさ」


無糖の冷徹な指摘に、周囲の空気が凍りついた。

しかし、鬼頭はすぐに冷ややかな笑みを貼り直し、凄みのある声で言い放った。

「口が上手いガキだな。だが、勝負はカードの強さで決まるんだよ! お前らに何が分かる!」


「すべて分かっているさ」

その時、それまで黙って戦況を見守っていた駆が、スッと立ち上がり、自分の持っていたすべてのチップをテーブルの中央に力強く叩きつけた。


「お前は、人間の『欲望と絶望』しか計算に入れていない。だから、お前はこの勝負に負けるんだ」

「なんだと……?」


「俺は、人間が泥水をすすりながら這いつくばる姿も、一万円札の紙切れになって人々の温もりに触れた瞬間も、その両方を知っている。お前みたいな人間のクズが、どれだけ金をかき集めても絶対に手に入らない『本当の価値』をな!」


駆の瞳に宿る圧倒的な熱量が、鬼頭の虚勢を根底から揺さぶった。


運命のコミュニティカードが、次々とテーブルの上に開かれていく。

場の空気が止まったかのような静寂の中、最後のカードがめくられた。


――その瞬間、駆と無糖の手元にあるハンドの組み合わせが、奇跡的なまでの最高役(ロイヤルストレートフラッシュの布陣)へと昇華した。


「なっ……馬鹿な……!? そんなはずが……っ!」

鬼頭が絶叫し、自分の手札を確認して青ざめる。彼の仕込んだイカサマのトリックさえも、無糖の完璧な予測と、駆の直感が導き出した「人間の執念」によって完全に打ち砕かれていたのだ。


「ゲームセットだ、鬼頭さん」

無糖は静かに立ち上がり、冷徹な視線を浴びせかけながら言い放った。

「君の時代は、ここで終わりだ」


地下賭博場の静寂を破るように、周囲のモニターが一斉に切り替わり、鬼頭たちの不正資金のデータが警察のサーバーへと自動転送されるアラート音が鳴り響いた。


悪質な罠を粉砕し、被害者たちの未来を取り戻すための反撃の第一幕が、見事に勝利で幕を閉じたのだった。

シーズン3第4話「漆黒のテーブル」をお読みいただき、ありがとうございました!

地下カジノでの緊迫のポーカー勝負がついに決着し、鬼頭の不正を暴いて見事に勝利を収めた駆と無糖。果たして、この事件の本当の結末と、救われた人々が迎える未来とは――?

次回の第5話もお楽しみに!

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