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『凡人の俺、一万円札に転生して最強の幼馴染の財布を目指す』  作者: 凪塩 未来


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シーズン3第2話:闇の足音

突如として消え去った巨額の資金と、再びうごめき出すかつての裏社会の影。

救おうとした人々の未来を再び奪う悪質な罠に対し、佐藤駆と無糖峰の二人が立ち上がる――。

圧倒的な頭脳と、かつて「お札」として全ての闇を見てきた者たちの反撃が始まる、緊迫の第2話。


それでは、シーズン3第2話「闇の足音」の本編をどうぞ!

『ミネ&サトウ・ホールディングス』の本社会議室には、緊迫した空気が立ちこめていた。

ホワイトボードには、ここ数日で消失した資金のルートが複雑な相関図として描き出されている。被害は一箇所の定食屋だけに留まらなかった。かつてセーフティネットの融資を受け、ようやく自立の道を歩み始めていた小規模な事業者や、一度は多重債務から脱却したはずの個人が、次々と不可解な「借金の再ループ」に引きずり込まれていた。


「被害総額は、すでに億を超えているな」

無糖峰は腕を組み、ホワイトボードを見据えたまま低く呟いた。その声には一切の動揺がないが、眼鏡の奥の瞳には鋭い光が宿っている。

「ふざけやがって……。あいつら、人間の更生しかけてる隙を狙って、わざわざ昔のトラウマを掘り起こすような真似を……!」

駆は机を拳で叩いた。その怒りは、かつて自分自身が底辺の生活や借金の恐怖を間近で見てきたからこそ、人一倍強いものがあった。


「怒るな、駆。感情に流されれば、相手の思う壺だ」

無糖は冷静にペンを回しながら言った。

「今回の手口は非常に巧妙だ。システムをハッキングしたわけではない。彼らは『人間の弱み』と『過去の契約の抜け穴』を熟知している。つまり、この背後には、かつての裏社会のネットワークをそのまま引き継ぎ、さらに洗練させた知能犯が確実に存在する」


その言葉に、会議室の空気が一段と重くなった。

かつて駆が「お札」として巡り合ったヤクザの組事務所や、悪質な闇金の残党。彼らはただ暴力を振るうだけの存在ではなく、現代のデジタル社会の仕組みを悪用し、合法と非合法のグレーゾーンで再び牙を剥いているのだ。


その時、静まり返った部屋に、デスクの上の内線電話の音がけたたましく響いた。

駆がすぐに受話器を取る。

「はい、佐藤です」

『佐藤さん! 杉山です! 今、被害に遭った人たちの一人を連れて、こちらのシェアオフィスに戻ってきたんですが……大変なことが分かりました!』


受話器越しに聞こえてくる杉山の息は荒く、ただ事ではない緊迫感が伝わってきた。

「どうした、落ち着いて話してくれ」

『被害に遭った佐藤さんが、「金を返すか、さもなければ例の裏カジノで一発勝負しろ」って脅されていたらしいんです。しかも、その裏カジノの胴元は……かつて、この街で悪名を馳せていたあの組織の残党なんです!』


――裏カジノ。

その単語を聞いた瞬間、駆の脳裏に強烈な記憶が蘇った。

お札として過ごした日々の中で、幾度となく目撃した人間の欲望の成れの果て。大金が動くテーブルの上で、身を滅ぼしていく人間たちの醜さと哀しさ。


「わかった、今すぐそっちに向かう。杉山さん、被害者の保護を最優先にしてくれ」

駆は電話を切り、すぐに無糖に向き直った。

「聞いたか、無糖。裏カジノだ。あいつらは、かつてと同じやり方で、再び人間を『お金の奴隷』に落とし込もうとしている」


無糖はわずかに口角を上げた。その笑みは、氷のように冷たかった。

「なるほど。表向きの経済から金を吸い上げ、それを裏の賭博資金として洗浄しているわけか。……いいだろう。これ以上、僕たちの作ったシステムを勝手に汚させるわけにはいかない」


夜のとばりが下りた東京。

ネオンが眩しく光る繁華街の裏手、古い雑居ビルの地下に、その違法カジノへの入り口が存在していた。

表向きは会員制のバーを装いながら、その奥の重厚な鉄板扉の向こうでは、幾千もの人間の欲望と狂気が渦巻くアンダーグラウンドな賭博場が広がっている。


「潜入ルートは確保した」

無糖はタブレットを駆に見せた。そこには、ビルの構造図と、警備員たちの巡回ルートが完璧にマーキングされている。

「さすがだな、無糖。で、どうやって中に入る? 俺が札束を懐に突っ込んで、大金持ちのボンクラのふりでもするか?」


駆の冗談めかした問いに、無糖はやれやれといった表情で首を振った。

「冗談にしては悪趣味だが、あながち間違いではない。今回の勝負、ただ正面から突入しても相手に証拠を隠滅されるだけだ。我々自身が『最高の客』としてあの場に乗り込み、あいつらの土俵で完全に叩きのめす」


無糖の瞳に、絶対的な自信の色が宿る。

かつて全ての勝負で駆を圧倒し、そして今や世界の経済を動かす天才。その頭脳が、裏社会の連中を追い詰めるための完璧な罠をすでに構築し終えていた。


「いいだろう……。あのとき、お札としてただ見ていることしかできなかった俺たちが、今度は人間の手で、あいつらの野望を根底からへし折ってやる」


駆は自分の手のひらを強く握りしめた。

十七年間の凡人としての人生。

お札として巡った果てしない旅路。

そして今、この現実の世界を取り戻すための戦いが、まさに始まろうとしていた。


深夜0時。

漆黒のスーツに身を包んだ駆と無糖は、静かにあの雑居ビルの地下へと続く階段を下りていた。

奥から漏れ聞こえてくるのは、チップがぶつかる乾いた音と、人間の熱狂的な嬌声、そしてかすかな絶望の匂いだった。


扉の向こうには、どんな人間の業が待ち受けているのか。

しかし、二人の足取りに迷いはなかった。


消えた千万円の謎を解き明かし、闇の組織を壊滅させるための反撃が、今、音もなく幕を開ける。

シーズン3第2話「闇の足音」をお読みいただき、ありがとうございました!

被害の拡大とともに、かつての裏社会の残党が絡む「裏カジノ」の存在が明らかになり、物語はいよいよ緊迫した潜入・反撃フェーズへと突入します。

次回の第3話では、いよいよカジノの内部へ潜入し、敵との直接対決が描かれます。どうぞお楽しみに!

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