第4話「はじめての街と、新しい一歩」
森を抜けたとき、僕は思わず足を止めた。
「……これが、街」
目の前には、大きな門と石造りの建物。
人の声、馬の足音、店の呼び込み。
森とはまるで違う、にぎやかな世界だった。
「初めてですか?」
隣でミアさんが少し笑う。
「はい……こんなに人がいるの、久しぶりで」
「少し安心しますよね」
「……そうですね」
一人じゃないから、余計にそう思う。
門をくぐると、視線が少し集まった。
多分、森から出てきたばかりで服も汚れてるからだと思う。
「……大丈夫ですよ」
ミアさんが小さく言う。
「気にしなくていいです」
「ありがとうございます」
少しだけ肩の力が抜ける。
そのまま通りを歩いていくと、大きな建物が見えてきた。
「ここが、冒険者ギルドです」
「……ここが」
扉を開ける。
中は思ったより広くて、人も多い。
武器を持った人たちが、あちこちで話している。
少しだけ緊張する。
「大丈夫ですよ」
ミアさんにそう言われて、頷く。
受付の方へ向かう。
カウンターの向こうにいた女性が、僕たちに気づいた。
「いらっしゃいませ……あら?」
少し驚いたようにこちらを見る。
「もしかして、森から来たばかりですか?」
「は、はい」
「その様子だと……無理してません?」
優しい声だった。
思わず少し安心する。
「大丈夫です。なんとか……」
そう答えると、受付の女性は少しだけほっとしたように微笑んだ。
「それならよかったです。でも、無茶はしないでくださいね」
「……はい」
こんなふうに心配されるの、少し久しぶりで。
少しだけ嬉しかった。
「本日はご登録ですか?」
「えっと……はい。冒険者に」
「かしこまりました」
手続きをしながら、女性はちらっと僕を見る。
「……まだ若いのに、頑張ってますね」
「いえ、そんな……」
少し照れる。
そのとき――
「ハルトさん」
ミアさんが小さく呼ぶ。
「……さっきの話、してもいいですか?」
「え?」
少し考えて、頷く。
「大丈夫です」
ミアさんは受付の女性に向き直った。
「この人……ハルトさんなんですけど」
少しだけ真剣な顔になる。
「今、パーティーに入っていなくて……」
「……なるほど」
受付の女性が頷く。
「一人で活動される予定ですか?」
「えっと……」
言葉に詰まる。
正直、まだ何も決めていない。
「もしよければ」
ミアさんが少しだけ勇気を出すように言った。
「しばらく、私と一緒に行動してもいいですか?」
「……え?」
思わず聞き返す。
「私、一人だと少し不安で……」
ミアさんが小さく視線を落とす。
「でも、ハルトさんとなら……」
「……」
少しだけ考える。
でも答えは、すぐに出た。
「……もちろんです」
自然にそう言っていた。
「僕でよければ」
ミアさんの顔がぱっと明るくなる。
「ありがとうございます」
受付の女性も、少し安心したように微笑んだ。
「いいですね。無理のないパーティーが一番です」
その言葉に、少しだけ背中を押された気がした。
手続きを終えて、ギルドを出る。
「……これで、冒険者ですね」
ミアさんが嬉しそうに言う。
「はい……なんだか、まだ実感ないですけど」
少し笑う。
そのとき――
ふと、足元に違和感を感じた。
「……あれ?」
石畳の隙間。
小さく、青く光るもの。
「……また」
思わずしゃがみこむ。
手を伸ばす。
触れる。
《スキル取得:断片・水属性》
「……え?」
体の中に、冷たい感覚が広がる。
さっきまでとは違う感覚。
「どうしました?」
ミアさんが不思議そうに覗き込む。
「い、いえ……ちょっと」
手を見つめる。
意識すると、ほんの少しだけ水の気配を感じる。
「……すごい」
小さく呟く。
街の中にも、落ちている。
誰にも気づかれないままの力が。
「……ちゃんと使わないと」
そう思った。
「ハルトさん?」
「すみません、大丈夫です」
立ち上がる。
ミアさんに軽く微笑む。
「行きましょうか」
「はい」
並んで歩き出す。
街の中を。
新しい場所で、新しい一歩を踏み出す。
拾った力と一緒に。
そして――
「……もっと強くならないと」
小さく決意する。
守るために。
この出会いを、大切にするために。




