第5話「はじめての依頼と、守るための魔法」
ギルドの中は、にぎやかだった。
「まずは、依頼を見てみましょうか」
ミアさんにそう言われて、掲示板の前に立つ。
紙がびっしり貼られている。
「……すごい量ですね」
「はい。ここから自分に合った依頼を選ぶんです」
そのとき、ふと気になって聞いてみる。
「そういえば、冒険者ってランクがあるんですよね?」
「ありますよ」
ミアさんが指で順番をなぞるように説明してくれる。
「下からF、E、D、C、B、A、そしてSランクです」
「Sが一番上……」
「はい。そこまで行く人は本当に一握りです」
なるほど。
「僕たちは……」
「Fランクですね」
少しだけ苦笑しながらミアさんが言う。
「最初はみんなそこからです」
「……頑張らないとですね」
小さく頷く。
でも、不思議と嫌な感じはしない。
ここから始まるんだと思えた。
「このあたりが良さそうですね」
ミアさんが一枚の依頼書を指差す。
「森の浅い場所での薬草採取……危険も少ないです」
「いいですね」
すぐに決める。
受付で依頼を受けて、再び森へ向かった。
森に入ると、少しだけ空気が変わる。
「この辺りなら大丈夫だと思います」
「はい」
周囲を確認しながら進む。
しばらくして、ミアさんがしゃがみこんだ。
「これです」
緑色の葉を指差す。
「これが薬草……」
「はい。優しく摘んでくださいね」
「分かりました」
慎重に手を伸ばす。
こういう作業、なんだか落ち着く。
「……こういうのもいいですね」
「ふふ、そうですね」
ミアさんが少し笑う。
そのとき――
ガサッ。
「……っ」
気配。
でも、少し違う。
魔物じゃない。
「誰か……いる?」
周囲を見る。
すると、木の影から男が二人出てきた。
「へぇ……こんなとこに二人きりか」
嫌な雰囲気だった。
「その子、いいね」
「……っ」
ミアさんが少しだけ僕の後ろに下がる。
「下がっててください」
小さく言う。
「ハルトさん……」
「大丈夫です」
そう言いながらも、内心はかなり緊張している。
でも――
守らないといけない。
「その子、ちょっと借りるだけだよ」
男が近づいてくる。
明らかに普通じゃない。
「……だめです」
はっきり言う。
自分でも驚くくらい、声は震えていなかった。
「は?ガキが何言ってんだ」
男が手を伸ばす。
その瞬間。
「……っ!」
前に出る。
止める。
「邪魔すんな!」
突き飛ばされそうになる。
でも、踏ん張る。
「絶対に……」
そのとき、頭に浮かぶ。
さっき手に入れた力。
「水属性……」
意識する。
体の中の流れを感じる。
「お願い……出て」
手のひらに、冷たい感覚が集まる。
そして――
「ウォーターボール!」
ポンッ!
小さな水の球が生まれる。
「……え?」
自分でも一瞬戸惑う。
でも次の瞬間。
「行け!」
弾くように放つ。
バシャッ!!
水の球が男の顔に直撃する。
「ぐっ!?」
予想以上の衝撃だったのか、男がよろめく。
「な、なんだ今の!?」
もう一人も驚いている。
「……もう一回」
今度は少し落ち着いて意識する。
さっきより、はっきり形が作れる。
「ウォーターボール」
ポンッ。
「はっ!」
放つ。
バシャッ!!
今度はしっかり当たる。
「くそっ……!」
男たちが後ずさる。
「魔法使いかよ……!」
「行くぞ!」
そのまま、逃げていった。
静寂。
「……はぁ」
力が抜ける。
怖かった。
本当に。
「ハルトさん……!」
後ろからミアさんの声。
振り向く。
「大丈夫ですか!?」
「はい……なんとか」
少し笑う。
「よかった……」
ミアさんがほっとしたように息をつく。
その表情を見て、安心する。
「……守れた」
小さく呟く。
「すごいです、今の魔法……!」
「いえ、まだ全然で……」
でも、ちゃんと使えた。
初めての水魔法。
「……でも」
少しだけ拳を握る。
「もっと上手くなりたいです」
守るために。
ちゃんと力を使えるように。
「はい、一緒に頑張りましょう」
ミアさんが優しく言う。
「……はい」
頷く。
こうして、僕たちの初めての依頼は――
少し予想外の形だったけど、
無事に終わることになった。
そして僕は、
“守るための力”を、また一つ覚えた。




