第2話「はじめての出会い」
森の奥へ進みながら、僕は何度も足元を見ていた。
「……またある」
小さく光る欠片。
さっき拾ったものと同じだ。
そっと手に取る。
《スキル取得:断片・気配察知》
「……あ」
その瞬間、周りの空気が少しだけ変わった気がした。
「なんとなく、分かる……?」
遠くの気配。
風の流れ。
さっきまで気づかなかったものが、少しだけ見えるようになる。
「すごいな……」
小さく呟く。
でも同時に思う。
「これも、誰かが捨てたものなんだよね」
少しだけ胸が痛んだ。
「……大事に使おう」
そう言って、また歩き出す。
そのとき――
「きゃっ!」
小さな悲鳴が聞こえた。
「……っ!」
反射的に顔を上げる。
今の声。
かなり近い。
「行かなきゃ」
迷いはなかった。
走る。
枝をかき分けて、声のした方へ向かう。
そして――
「大丈夫ですか!?」
開けた場所に飛び出す。
そこには、一人の女の子がいた。
白いローブを着ていて、足を押さえている。
そして、その前には――
魔物。
さっきよりも大きい。
「……っ」
一瞬、足が止まる。
怖い。
でも。
「……僕が、やる」
小さく呟いて、一歩踏み出す。
魔物がこちらに気づく。
低く唸る。
「大丈夫です。すぐに終わらせます」
自分でも驚くくらい、声は落ち着いていた。
魔物が突っ込んでくる。
速い。
でも――
「見える」
さっき拾った“気配察知”。
それと、“剣術の断片”。
両方が、ちゃんと働いている。
「……ここ」
踏み込む。
振る。
ザンッ!!
手応え。
魔物の動きが止まる。
そのまま、倒れた。
静寂。
「……はぁ」
少しだけ息を吐く。
まだ怖い。
でも――
「なんとか、なった」
後ろを振り向く。
女の子が、驚いた顔でこちらを見ていた。
「あの……」
少しだけ緊張しながら声をかける。
「怪我、大丈夫ですか?」
女の子は一瞬きょとんとしてから、小さく頷いた。
「は、はい……でも、少し足を……」
見ると、足首が腫れている。
「……ちょっと見せてもらってもいいですか?」
「え?」
「応急処置くらいなら、できると思うので」
ゆっくり近づく。
怖がらせないように、できるだけ優しく。
女の子は少し迷ったあと、足を差し出してくれた。
「ありがとうございます」
しゃがみ込む。
そっと触れる。
「……少し痛いかもしれません」
「だ、大丈夫です」
僕は持っていた布で軽く固定する。
前に少しだけ教わったやり方を思い出しながら。
「……これで、少しは楽になると思います」
「……あ」
女の子が小さく声を漏らす。
「さっきより……痛くないです」
「よかった」
ほっとする。
ちゃんと役に立てた。
それだけで、少し嬉しい。
「……あの」
女の子が、少し恥ずかしそうに言う。
「助けてくれて、ありがとうございました」
「いえ、そんな」
慌てて首を振る。
「たまたま近くにいただけなので」
「それでも……すごかったです」
まっすぐな目で見られて、少しだけ困る。
「……僕はハルトです」
少し照れながら名乗る。
「あなたは?」
「……ミア、です」
小さく名前が返ってくる。
「ミアさん、ですね」
そう言うと、ミアは少しだけ微笑んだ。
「はい」
その笑顔を見て、思う。
「……よかった」
間に合って。
助けられて。
「……あの、ハルトさん」
「はい?」
「その……もしよかったら」
少し迷うようにしてから、ミアが言った。
「少しだけ、一緒にいてもらえませんか?」
森の奥。
一人では危ない場所。
その不安が、声に出ていた。
「……もちろんです」
僕はすぐに頷いた。
「安全なところまで、一緒に行きましょう」
ミアがほっとしたように笑う。
その表情を見て、少し安心する。
こうして僕は――
この世界で初めて、
“誰かと一緒に進むこと”になった。




