第1話「拾ったものが、全てを変えた」
「ハルト、お前はもういらない」
言われると思っていた。
だから、驚きはあまりなかった。
「……そう、ですか」
小さくそう返すと、リーダーは少し困ったように笑った。
「“ゴミ拾い”ってなんだよ。そのスキルじゃ戦えないだろ」
後ろで仲間たちも苦笑している。
責めているわけじゃないのは分かる。
でも――
「はい……」
頷くことしかできなかった。
自分でも分かっているから。
「すみません。足を引っ張ってばかりで」
「いや、まあ……そういうことだ」
軽く手を振られる。
それで終わりだった。
「……今まで、ありがとうございました」
頭を下げて、僕はその場を離れた。
誰も引き止めなかった。
⸻
一人で森の中を歩く。
少しひんやりした風が頬に当たる。
「……どうしようかな」
これからのことなんて、何も決まっていない。
お金もないし、強くもない。
「ゴミ拾い、か……」
自分のスキルの名前を呟いて、少しだけ苦笑する。
そのときだった。
足元に、小さな光が落ちているのに気づいた。
「……あれ?」
しゃがみこんで近づく。
小さな欠片みたいなものが、淡く光っている。
「これ……拾えるのかな」
そっと手を伸ばす。
触れた瞬間――
《スキル取得:断片・剣術》
「……え?」
頭の中に、声が響いた。
同時に、体の感覚が少し変わる。
「……なんだろう、これ」
軽く腕を動かしてみる。
すると――
「……あれ?」
自然と、振る動きができる。
まるで、前から知っていたみたいに。
「これ……今の欠片のせい?」
足元を見る。
もう光は消えていた。
「……拾ったから?」
信じられないけど、そうとしか思えない。
試しに近くの木の枝を持ってみる。
そっと構えて、振る。
ヒュンッ、と風を切る音。
「……できてる」
少しだけ、驚く。
戦ったことなんてほとんどないのに。
「これって……」
ただのゴミ拾いじゃない。
“何か”を拾っている。
そう思った。
そのとき――
ガサッ。
「……っ」
振り向く。
魔物が一体、こちらを見ていた。
怖い。
正直、すごく怖い。
でも――
「……大丈夫、かな」
小さく呟く。
さっきの感覚が、まだ残っている。
「やってみよう」
逃げるより先に、足が動いた。
魔物が近づいてくる。
僕も一歩、前に出る。
「……っ」
怖い。
でも、目を逸らさない。
振る。
ザンッ。
「……え?」
気づいたときには、魔物が倒れていた。
動かない。
静かだ。
「……倒せた?」
自分でも信じられない。
でも、確かに。
今、戦えた。
「……すごい」
小さく呟く。
でも同時に思う。
「これ……僕の力じゃない」
さっき拾ったもののおかげだ。
誰かが、どこかで失ったもの。
それを、僕が拾った。
「……だったら」
手を見る。
少しだけ、握りしめる。
「大切に使わないと」
誰かがいらないって思ったものでも、
本当は大事なものかもしれない。
「無駄にはしたくないな」
そう思った。
そのとき、また足元に光が見えた。
さっきより少し大きい欠片。
「……まだあるんだ」
ゆっくり近づく。
そっと拾う。
《スキル取得:断片・魔力操作》
「……え?」
また、体の中に何かが流れ込んでくる。
「これ……」
思わず少し笑ってしまう。
「すごいな……」
森の奥を見る。
さっきまでは怖かった場所。
でも今は、少しだけ違う。
「……僕でも、やれるかもしれない」
小さく、そう呟いた。
誰もいらないなら。
僕が拾う。
そして――
「ちゃんと、役に立てるように」
そう決めて、歩き出した。




