第2話 魔術の習得
この世界に来て、2年が経った。
最近は、やっと、読み書きもできるようになり、
大抵の書物も読めるようになった。
自慢ではないが、ここまで来るのに相当頑張った。
っということで早速本日只今から、
魔術の練習をさせていただきます。
という事でまず、最初に、魔術について説明をすると、
この世界において魔術は、万物の根底を流れる「魔素」と呼ばれる微細な粒子を操り、「世界に干渉する技術体系である。」とされている。
魔素は空気や水と同じく、
あらゆる場所に存在しているらしく、
呼吸のように自然に体内へ取り込まれている。
多くの学派は、魔素を「世界に満ちる見えないエネルギー」と表現しており、人々は無意識のうちにそれを吸い込み、魔核という器官を通じて加工・放出することで、魔術という現象を起こしていると考えられている。
魔核は、人の胸奥、
魂と肉体の狭間に位置すると言われる精神器官で、
魔素を感じ取り、意思によって魔素の形を変換する、
「第二の心臓」と呼ばれている。
魔核の容量は鍛えれば多少上がるものの、
爆発的に伸びることは無いらしく、
魔核の容量で大体の到達できる
魔術のレベルが決まるらしい。才能か。
こうした才能の差を正確に把握するために、
この世界の住人は、行使できる魔術階位で、
魔術師を八つの階位に分類しているらしい。
その名も、《八等級魔術体系》。
最下位の第一等級魔術師。
火や水などの基本的な現象を模倣し、行使する人物。
第二等級魔術師。
基本的には第一階位と大差がないが、
より高位の魔術を行使出来るものを呼ぶそうだ。
第三等級魔術師。
この領域に至ると、同時に2つの魔術を行使し、
混合魔術なんかを出来るようになるらしい。
一般の者が魔術を鍛え、到達できる限界。
第四等級魔術師。
一般的に才能アリに分類される。
小さな嵐を起こしたり、短い間だが天候を操ったり、
小規模の結界を作成したりと、
できることが更に増えるようだ。
第五等級魔術師。
一般人は到達できない、
才能のあるものが到達できる最高峰と言われる領域。
金属を瞬時に溶かしたり、大規模な嵐を起こしたり、
大規模な結界なども一人で起こせるようになるそうだ。
第六等級魔術師。
選ばれた一部の者のみが到達できる高みで、
重力なども操ることが可能な者もいるようで、
その昔、ある国同士が戦争をした時に、一方の国に、
第六等級術師がいたらしく、その国は、その戦争での死者を
極端に抑え、戦争を勝利したとか。
第七等級魔術師。
ここから資料が減ってきて、
情報があまり見つからなかったが、
第七等級術師は、選ばれた天才の中の天才のような存在で、いない時代の方が多いのだとか。
最上位の第八等級魔術師。別名 根源師
到達者も歴代で、4人しかおらず、
資料もほとんどなく、ほぼ伝説のようなものになってしまうが、強大なその力で、地図を書き換えるような攻撃魔術を
放ったり、時間を停止させたりすることもできるようになるのだそうだ。
だが、反動で魔核が崩壊し、
死んでしまうという伝説があるらしい。
だが過去から現在に至るまで、
根源師は、正式には確認されていないようで、
残っている資料も全て信憑性が薄いらしい。
伝説上で最後に存在していた根源師は、
1000年以上前みたいだ。
眉唾だな。これ。
ちなみに、第七等級術師も
現在は、存在が確認されてないらしい。
前回存在が確認されたのは150年前なんだそうだ。
そして魔核は、魔術を行使するたびに摩耗するそうだ。
休めば戻るが、限界を超えて、魔術を使い続けると
「魔核崩壊」と呼ばれる現象が起こる。精神や肉体の崩壊、あるいは魂の消失、つまり、死亡。ということだ。
現在、各国では「共鳴儀」と呼ばれる魔核の測定を
行っているらしく、冒険者ギルドや魔術学校で測定ができるらしい。
基本的に使用出来る魔術は、普通の人は
第一から良くて第二程度、
上級者の領域になると第三等級、第四等級
達人の領域になると第五等級まで使えるらしい。
とこんな感じで魔術は、
誰もが扱う空気のように身近でありながら、
同時に才能によって線引きされた力でもある。
なので魔核は、
「人間の限界と宿命を最も鮮やかに映し出す鏡である。」
と語り継がれている。
次に、魔術五大属性と等級について説明だ。
まず、魔術は、主に三つに分類される。
一つ目は強化魔術。これは肉体を感覚を
一時的に強化する魔術で、剣士はこの魔術を使い、
魔物と戦ったり、冒険者はこの魔術で危険を避けたりするらしい。
二つ目は回復魔術、これはまぁ、
読んで字のごとく、傷を癒す魔術だな。
三つ目は攻撃魔術。
攻撃魔術は主に、
火 水 風 土 雷
の五つの属性と、
八つの等級に別れていて、
魔術五大属性は、一人一人に、得意不得意な属性があり、
魔素の消費効率を上げつつ威力の高い技を発動できたり、
不得意な者に比べて、
少しだけ発動が早かったりするみたいで、
場面に応じて、使い分けていくみたいだ。
等級は、数字が増えるごとに規模や威力が
大きくなる代わりに、比例するように、
魔核の磨耗と魔素の消費量が多くなるようで、
各元素の得意不得意、
各等級の魔術のメリットデメリットなどがあるみたいで、
非常に奥が深い。
また、五大元素からの派生や改良などを施し、
独自に魔術を開発する者もいるらしく、
開発が出来たら非常に強力なんだとか。
自分だけのオリジナル魔術かぁ〜.....憧れるなぁ〜.....
通常、ギルドや学園に行かないで、
測定をせず独学で魔術の練習を始める場合は、
第一等級から始めるのが普通とのことなので、
得意不得意を理解するためにも、
五つ全ての元素の第一等級魔術をやってみることにし、
魔術書に書いてあった属性、等級、術名をメモして、
森に出かけることにした。
ーーーーーーーーーー
以前、渓谷の谷底に落ち、
四日間の昏睡状態になった原因の森なので、
行ってくると二人に伝えると、
二人はめちゃくちゃ心配して、反対したが、
渓谷には近づかず、森の中での探索のみという約束で、
送り出してもらった。
魔術の練習自体は、家の庭でも出来たが、前のノア君は、
第一等級魔術を難なくできていたようなので、
もし庭で練習していて、入れ替わった俺が、
出来なかった場合、
二人に怪しまれてしまい、誤魔化すのも大変なので、
森でやることにした。
それに、森に採集をしに行きたいといえば、理由としては、あまり不自然ではないだろう。という事で、
家から出て西にまっすぐ歩き、集落の門を出て、
更に10分ほど歩くと森が見えてきた。
普通この世界では、森や林、山なんかでは、
モンスターが出るらしいのだが、この森では、
目撃例が極端に少なく、そもそも周辺に出るモンスターも弱いものが多いので、大丈夫なんだそうだ。
と言っているうちに、
森に到着したので、入り、少し開けた場所を探す。
数分歩き回ると、木々も少なく、
程よく日が差す場所があったので、
そこで練習することにした。
さて、では早速初めよう。
この世界の魔術の発動は簡単だ。属性、等級、術名を言うだけで、あとは魔核の魔素が消費されて発動する。
.....上位に上がるとそうもいかないようだが。
ポケットからメモ紙を取りだして開き、
片手を前に突き出し、
メモに書いてある順番通りに言葉を唱える。
「えっと....火魔術、第一等級。フレイム。」
そう唱えると、胸の当たりが少し暑くなったかと思うとすぐにその熱が肩につたわり、肩から腕へ、そして手に伝わり、指先からボッ!っと鈍い音ともに火が出た。
まじか.....
火が出た瞬間、思わず後ずさる。
まさか本当に出るとは思っていなかった。
もっと難しいものなのかと思っていた。
あの時一瞬だけ、胸の奥で熱が走った感覚、
あれが魔核というやつなのかもしれない。
などと考えていると、
手の中で作った炎は思ったよりも小さかったようで、
手のひらほどの明かりが一瞬だけ灯って、
すぐにしぼむように消えていった。
「……あれ?終わり?」
期待していたほどの迫力もなければ、威力もない。
でも、指先にほんのり残る温かさが妙に心地よかった。
しばらく手を眺めていると、森の奥から鳥の鳴き声がして、
どこかで風が吹いたように木の葉が揺れた。
「……よし、次は水属性だな。」
そう呟き、
メモを見ながら姿勢を整え、森の地面に腰を下ろした。
木々の間を吹き抜ける風が涼しい。
さっきの炎の熱が嘘みたいに冷えていく。
胸に意識を向け、息を整えた。
この世界の魔術師たちは、魔核を意識する時、
「呼吸を胸の奥まで届かせるようにする」らしい。
半信半疑ながら、深呼吸し、肺いっぱいに空気を取り込む。
そしてゆっくりと吐きだしながら、呪文を唱える。
「……水魔術、第一等級。アクアドロップ。」
すると、さっきとは違う感覚が胸を走った。
冷たい。
胸の辺りから、一瞬だけ冷たさを感じ、
次にすぐに肩のあたりが冷たくなっていき、
手のひらの上に湿った空気が集まる。
まるで霧が形を持ち始めたようで、
指先から水の粒が零れ落ちた。
ぱしゃ、と地面に落ち、水滴が、
乾いた土に丸い跡を残す。
「おお……できた……のか?」
手を顔に近づけ、ゆっくりと観察すると、
まだ手のひらに冷たい湿り気が残っていた。
思わず笑ってしまった。
魔術って、本当に出るんだな。
「……はは、意外とやれるもんだな。」
そう呟いた時だった。後ろから、かすかな音がした。
人の足音だ。すぐに気配の方を振り返ると、
木々の間に白い服を着た少女が立っていた。
年は自分よりも、一回りくらい上だろうか。
淡い栗色の長い髪が陽の光を受けて透けて見える。
手には小さな籠を持っていて、
中には薬草のようなものが詰まっていた。
「あ……驚かせてしまい申し訳ありません。」
「え、あ、ど、ど、どうも....」
前世も今世も、母親以外の女性と話すことなんて、
久しくなかったので、とんでもないドモり方をしてしまう。
オマケに相手の顔も満足に見れない。
「魔術の練習ですか?」
「えっ....あ、はい。」
彼女は興味深そうに近づいてくる。
その歩く仕草が綺麗で、思わずドキッとする。
「先程やっていたのは水ですよね、
両方やっているのですか? 珍しいですね。
普通は一属性を決めてから練習するのに。」
「えっ....あっ、そ、そうなんですか?....」
彼女は「なるほど」と言って笑っているようだった。
そんなことないと思いつつも、
バカにされているのではないかと思い、
少し心がギュッとする。
「知らない方もいるのですね。
でも、あまり無理はしない方がいいです。
魔核は、思ったよりも繊細ですから。」
彼女は優しくそう言った。
見ると彼女の手から、ほんのりと光が漂っている。
どうやら彼女も魔術師らしい。
「あっ、あ、あなたも魔術を....?」
「ええ、一応。薬草を育てたり、
採集したりするのにちょっと使う程度ですけど。」
籠の中の草を見せながら、彼女は穏やかに微笑んだ。
光が揺らめいて、草の葉が淡い緑に光る。
彼女の声はやさしかった。
そのあと少し一方的に彼女が話して、
彼女は「もう行きますね」と言って森の奥へ消えていった。
白い服が木々の間に溶けるように消えていった。
振り向いて行ってしまう直前、顔を上げて、
彼女の顔を見る。
淡い栗色のロングの髪がふわりと肩に落ち、
森の木漏れ日に揺れるたびに、
柔らかい金の光を帯びる少女。
落ち着いたオリーブ色の瞳はどこか大人びている。
白いワンピースに包まれた姿は清楚で、
優しく、どこか包容力すら感じさせる。
不思議と安心する気配をまとった少女だと思った。
……なんだったんだろう....怖かったな....
でも結構綺麗な人だったな.....
そんなことを思いながら、
少しの間、その場に立ち尽くしていたけれど、
やがて思い出したようにまた練習を始めた。
その後。風属性、雷属性、土属性。と一通りやってみた。
どれもそれなりに反応はするが、
火と水ほど強くはなかった。
もしかしたら、
俺の得意属性はこのどちらかなのかもしれない。
それとも、単にまだ、魔素を扱う俺の技術が未熟なだけか。
特に火と水は魔術五大属性の中でも、特に基礎的なもので
簡単らしいからな。
練習しているうちに、
気づけば太陽はだいぶ傾いており、
森の影が長く伸びていた。
もうすぐ日が完全に沈む。家に帰るか。
森を出る前にもう一度だけ火を灯してみた。
今度は少しだけ、長く燃え、
それに呼応するように枝や葉が揺れる。
いいところだな。また来よう。
そう思い、俺は森を後にした。
遠くで鳥の鳴き声がして、
空がゆっくりと橙に染まっていく。
手のひらにはまだ、ほんのりとした温もりが残っていた。




