第1話 希望の誕生
その日彼は、
膨大な魔素の集合を感じ取っていた。
呪いを掛けられ不自由な体。
魔素もあまり残っていない。
数百年前に受けた戦争の傷も未だ癒えていない。
共に戦った友らも、もう居ない。
全ての終わりを悟り、諦めかけていた。
だが、異変が起こった。
何が起こったのか詳細は分からない。
ただわかるのは、膨大な魔素が一箇所に集まり、
その後掻き消えた。
ただそれだけだった。
それが希望の光なのか、
はたまた、この状況に追い打ちをかける
絶望なのか。
一切分からない。
だが、だからこそ、何が起きたのか。
突き止めなくてはいけない。
彼はこれを希望の光なのだと。
そう思うことにした。
そしてこの状況を打開するために
今、自分で出来ることをもう一度1から考え始めた。
たった一人の孤独の中で。
あの悪神を倒すために。
ーーーーーーーーーーー
目が覚めた。
すごい長い眠りから覚めた時のような気分だった。
目が覚めてすぐに違和感を感じた。
質素な材木むき出しの天井.....
・・・・・
知らない天井だ.....
自転車に乗るといつもこうだ.....
ごめんなさい言ってみたかっただけっす。
てかここどこだ?
ボロいな....病室じゃないよな....
壁や屋根は塗装も何もなく、木、そのまま。
と言った感じだ。部屋も木の机と木の椅子のみで
とても病人を運び込む部屋とは思えなかった。
部屋の広さも一人暮らしをしているワンルームの
アパートの方がまだ広い。
病院に運び込まれたんじゃないのか?
そんな事を思いながら部屋の中を歩き回る。
全体的に何かがおかしい。
部屋といい、置いてある家具といい、
とても日本とは思えない。
ていうか俺ってどうなったんだっけ?
自動車に轢かれなかったっけ?
そう思い、腕を上げる。
そこで俺は度肝を抜かれ、思わず声を上げる。
「えぇ!?」
手が小さい。小さすぎる。腕が細い。細すぎる。
意味がわからない。どういうことだ。
事故で手術したのか?にしてはおかしい。
手術痕もない。
何より、手術をしたからって、
こんなことにはならないはずだ。
急いで起き上がり、下半身も見てみる。
oh.....何ていうことだろう。
下半身も上半身と同様に
小さくなっていた。
少し気になり息子もチェックしてみる。
何ということだ.....
息子もクソガキサイズ.....
いやまあいいか....
元々、元気マックスにならないと小さかったし.....
ていうかほんとにおかしいだろこれ、
これじゃ身長1mと半分くらいじゃないか.....?
180cmの身長と少しの筋トレで身につけた筋肉だけが
俺の取り柄だったのに.....
その時、部屋の外から大きな足音が聞こえる。
先ほどの声で誰かがこっち来てるらしい。
おそらく親か医者だろう。まあ来た人に話を聞こう。
ドアが開き、二人の背の高い大人が入って来た。
いや誰ですか?というか、なに人ですか?
入って来た大人は男女のペアで、
明らかに、この二人は看護師や医者の見た目ではなかった。
二人は俺の顔を見た瞬間に、
こちらに飛びついてハグしてきて、
「ーーーーーーー!」
とよく分からない言葉で話しかけてきた。
いやいや飲み込めない、飲み込めない。
どういうこと?さっきからこの連続なんですが。
ていうか胸すごいな。これは気分がいい。
じゃなくて.....
「医者か看護師の方を呼んでもらえますか。」
俺はゆっくりとそう答える。
二人は顔を見合わせ、頭を傾げる。
な、なんだ?もしかして海外の人か?
「プ、プリーズ ゴー
ゲット ア ドクター オア ナース....」
言ってはみるものの、やはり伝わらない。
えぇ.....どうしよう.....
とりあえず、胸押し付けられてるのは少し嬉しいけど、
状況が飲み込めないから離れてほしいな.....
そう思い、肩に置かれた女の手を掴み、肩から下ろす。
というか日本語と英語しかわからないのに、
両方通じないのまずくね?
とりあえず俺は毛布から出て、
ベッドに腰掛ける。
女は立ち上がり、心配そうな顔で男と
やはりよく分からない言語で何かを話している。
言語やアクセント的に、ヨーロッパ系かな?
などと考えつつ、二人を観察する。
男の方は灰色の髪色をしており、筋肉が結構あり、
ガタイが少し良かった。
が......幸の薄そうな顔をしていた。
女の方は綺麗な白髪をしており、
西洋の昔の主婦を彷彿とさせる見た目で、
とても大きな胸をしている。
うん。とても大きな胸をしている。(二回目)
正直そこにしか目がいかない。
少しして、二人が出ていき、何となく状況がわかって来た。
俺は生まれ変わったのだろう。
輪廻転生というやつだ。
よく考えたら当たり前だ。あんなに強く車と当たったのだ。
生きてるはずがない。
もしかしたら夢の中ということもあるが、
まあそんなことは言っていても仕方がない。
いや、まさか俺が記憶を持ったまま、
生まれ変わりをするとはなぁ....
でもこっからどうすればいいんだ?日本に戻るか?
戻った方がいいよな....言葉も通じないもんな....
しかし今更戻って、大学を、「はい続けます!」
というのもな....
というか元の俺は死んでるんだし、
もう帰ってもしょうがないのか。
じゃあまあ、この人生でまた新しくやり直すか....
そうだな。
せっかくだし、この人生を楽しく生きよう。
そして二度と学校に行くなんていう。
愚行を犯さないようにしよう。
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半年が経った。
最初は何を言っているのかわからなかった言葉も
徐々にだがわかるようになって来た。
まず先に言わせてもらおう。
この世界は、異世界だった。
魔法がありふれていた。
気づいた当初こそ興奮し、この世界にワクワクしたが、
実際、その世界はそれは元の世界とはまた別に不便な
点も多く、考えると不満も多い。
それはまた後で詳しく説明させてもらうとして。
俺の名前はノア・マックイーンというらしい。
なかなかいい名前じゃないか。
家族構成は、父と母と俺の3人だけだ。
父はルツ・マックイーンで
母はリーネ・マックイーンだ。
俺の家は地方の片田舎の農家だった。
父親であるルツの畑で農作物を育て、それを収穫して、
食糧にし、余った分は、ルツが街まで馬車に乗せて、
売りに行く。と言った感じだ。
俺と母親のリーネの方はというと、リーネが家事をしつつ、それを俺が手伝い、俺はまだ言葉が怪しいので、合間を見つけて勉強をする。と言った感じだ。
以前、両親は、
あまりにも俺が言葉を喋らないのを心配して、
その集落の医者のような奴を呼んで、
俺を診てたが、正直よくわからなかったみたいだ。
まあそりゃそうだよな.....
だって、この世界の住人じゃねえもん.....
と言った感じで、
医者は首を傾げながら回復呪文っぽいのをかけて終わった。
その後も心配した二人は色んな医者を呼んだが、
結局、俺の秘密を暴いたやつは誰もいなかった。
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これ以上心配させるのはまずいと思った俺は、
覚えたての意味もよくわからない単語を
発音して、そこから語学の勉強にめちゃくちゃ勤しんだ。
その甲斐あり何となくの言葉は喋れるようになり、
そして俺の日本語は永遠に別れを告げた。
最近では、日常会話程度ならできるようになり、生活も
あまり困らなくなって来た。
そして最近わかったのだが、
この体の元の持ち主である、ノア君は
もう既に亡くなっているらしい。
親曰く、元のノア君は、非常に好奇心旺盛で
活発な子だったようで、一日中家の中にいる俺とは
違い、出かける子だったようだ。
特に、ノア君は植物に、興味を示していたみたいで、
家の中に、一冊だけある植物図鑑をどこに行くにも、
持ち歩いていたみたいだ。
試しに彼が使っていたらしいボロボロの図鑑を開いてみると、全ての花と薬草(?)に、謎の金額が書いてあった。
なんのこっちゃ。
まあ、んで、亡くなる数日前も、
植物の観察をしに、
大森林に行っており、
谷に生えている珍しい植物を取ろうとして
誤って谷底に転落してしまったのではないか。
とのことらしい。
そして夜になっても帰ってこないノアくんを心配した両親が
集落の人達に協力を要請し、捜索したが、
見つかった時には既に冷たくなっていた。
急いで、家に連れて帰り、
回復魔術を2重、3重にかけ、
外傷は修復したのだが、
医者からは、蘇生の見込みはない。
と言われていたそうだ。
だが、4日後に生き返えり、
俺は、ノア・マックイーンくんに、成り変わった。
というのが、俺が転生した経緯らしい。
と、まあそんな感じで最近はこちらの世界の言葉も
覚え、徐々に生活に適応してきていた。
だがこちらの世界では、元の世界とはまた違った
不満点も多くあり、そのうちの一つがとてつもなく、
暇だということだ。
こちらの世界では、
スマホやパソコン等の電子機器類は一切ないので、
あまりやることがなく、
リーネの手伝いと日々の語学勉強ぐらいしかやることがなく、面白くない。
正直、魔術の鍛錬をしてみたいのだが、
魔術の呪文をスラスラと言えるほど俺の言語能力はそこまで
発達していなく、やりたいこともできないような状況で、
魔術の練習が始められることを楽しみに頑張る。
というような毎日だった。
強くてニューゲーム!
を期待していたんだが......
そもそも、魔術というもの自体、使用できる人物が、
この世界にはあまり多くないようで、
使用できたとしてもせいぜい、水を出す、火を起こす、
そよ風を吹かせる。その程度のようで、
しっかりとした魔術を行使できる人物というのは、
限られているようだった。
そんな話をリーネから聞いたものだから
俺は、せっかくこの世界に来たのに、
魔術が使用できなかったら、どうしようと
戦々恐々とした。
だが幸いうちの家は、
リーネが魔術をある程度行使できるようで、かつ、
元のノア・マックイーン君も使っていたようで、
痕跡が所々に残っているから、
まああまり心配する必要ないみたいだけど.....
でもやっぱりできなかったらって考えると怖いよね。
とまあ、そんな世界で俺は、
新しい人生を始めることになった。
この世界では、彼女を作り、童貞を脱却し、
リア充になる。全てを変える。そう心に誓った。
銃も撃ってみたいとは思っていたが、
この世界では無理だろう.....
だってこの世界、
井戸で水くみ上げてるような
超アナログ世界なんだもん!!!!
ということで、
とりあえずの目標は、言葉を覚えて、魔術の練習を開始だ。




