表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔素の兆-サイン-  作者: 錦の旗印
第二章 学園入学編
28/30

第26話 前衛

翌朝。

目を覚ますと、窓の外は薄く明るくなっていた。

昨日は依頼を受けたわけでも、魔物と戦ったわけでもない。

それなのに、体の奥に妙な疲れが残っている。


たぶん、何度も断られたせいだ。

隣のベッドを見ると、カイルはまだ眠っていた。

いつもより少し寝息が重い。


俺はしばらく天井を見上げてから、ゆっくり体を起こした。

今日は昼前から授業がある。

第三等級実践魔術の授業だ。

それが終われば、今日もまたギルド。


昨日だめだったからといって、今日もだめだとは限らない。

そう思いこむことにして、朝の支度を始める。


洗面台の前に立ち、冷水で顔を洗う。

ひんやりとした水が肌に染み込み、

引き締まる感覚を感じる。


顔の水をタオルで拭き取り、

鏡で髪を整える。

後ろ部分についた寝癖が上手くまとまらない。


洗顔を終えて、制服に着替える始めると、

今日の授業がちょっとずつ億劫になってくる。


一人で受ける授業はちょっと.....

なんか、うん。面白くない。


そう思いつつもしょうがないと思い直し、

諦めて袖を通していると、

カイルも起きて、準備を始めた。


袖を通し終わり、

授業用の紙と羽根ペンを用意し、準備を全て終えると、

俺は、再びベッドに寝転がった。


あぁ二度寝したい。


そんなことを思いながら、カイルの準備を眺める。

あいつは、俺と違って寝起きがめちゃくちゃいい。

起きる時もそうだが、準備も素早い。

俺の2倍くらいのスピードで準備を終える。


そんなこと言ってたら、ほらもう準備終わってるもん。


「ノアおはよう。早速、朝食行こう。」


返事をして羽根ペンとノート用の紙を持って、

部屋を出て食堂に向かう。


食堂までの道を歩いていくといつも、

1、200メーター手前位から良い匂いが漂ってくる。

大量にいる生徒の飯を作ってるんだから当たり前か。


扉を開けて中に入ると、いつも通り大量の人。

飯の列に並ぶと、後ろからニコラが合流してくる。


三人で並び、飯を受け取る。


今日は、牛骨スープに、パンと、謎の野菜の和え物。

飲み物は牛乳っぽい何か。羊のミルクとかだろうか。

飲んだことないからわかんないけど。


飯を受け取り、入口から近いところの席が空いているので、三人で腰掛け、今日の予定を聞く。


ニコラとカイルは、このあとすぐに「スポーツ演習」 という授業があるそうだ。


この世界の「オーミック」というメジャースポーツをやるらしい。内容はよく分からなかったが、陣取り合戦形式のスポーツらしい。


飯のすぐ後にやるって、腹痛くならないのか?




飯を食い終わり、食堂を出ると、

廊下には授業へ向かう生徒たちがぞろぞろと流れていた。


ニコラとカイルは、

外の演習場の方へ向かっていく。

二人とも飯を食ったばかりなのに、足取りが軽い。


俺は二人とは反対に、校舎の中へ入った。


朝の校舎は、昨日より少し騒がしい。

扉の開く音、床を踏む足音、

どこかの教室から聞こえる笑い声。

学園らしいと言えば学園らしい。


中央階段まで歩き、手すりに沿って二階へ上がる。


石造りの階段は幅が広く、

何人かが横に並んで歩いても余裕がある。


壁には魔術の図解らしき板がいくつか掛けられていて、

属性ごとの魔力の流れだとか、

基礎術式だとかが描かれている。


見ても半分くらいしか分からない。

いや、半分分かるだけ成長か。


二階に上がると、別館へ続く連絡通路に入った。

校舎と校舎の間をつなぐ、細長い通路だ。

片側は大きな窓になっていて、外の演習場が見える。


遠くの方では、すでに何人かの生徒が集まり始めていた。


あれが「スポーツ演習」だろうか。

陣取り合戦形式のスポーツ、「オーミック」少し気になる。


いや、今の俺が見るべきなのはそっちじゃないな。


今日も第三等級実践魔術の授業だ。

連絡通路を抜け、別館の廊下を進む。

一番手前の大きな教室。


扉を開けると、すでに何人かの生徒が中にいた。

中学生くらいに見えるが、

俺より三つか四つ上の先輩たち。年上と言っても、

見た目だけならそこまで大人びているわけではない。

ただ、やはり俺やカイルとは雰囲気が違う。



固まって雑談している連中が数組。


壁際で杖を手入れしている生徒もいる。

いいなぁ。


黒板の前では、

何かの術式について話し込んでいる生徒。


俺は軽く周囲を見渡してから、端の方へ移動した。


やはりアウェーだ。

吸い寄せられるように隅っこによる。


何人かがちらりとこちらを見た。

すぐに視線は外れる。


俺は気づかないふりをして、壁際に立った。


しばらくすると、教室の扉が開き、教師が入ってきた。

雑談していた生徒たちの声が少しずつ小さくなる。

教師は黒板の前まで歩くと、

いつものように教室全体を見渡した。


「では、始める」

短い一言で、空気が切り替わった。

全員が黒板の方を向く。


最初は前回の復習をダラダラとやり、

魔術においての第三等級の位置づけがどうの、

第三等級からはどうのと、

どうでもいいことを言っていたが、

ある程度説明が一段落すると、

教師が今日の授業内容を話し始める。


「今日は雷魔術の第三等級、ライトニングを扱う。」

教師がそう言うと、教室の何人かが小さく反応した。


雷魔術。

火や土も分かりやすいけど、雷はもっと魔術っぽい。

いかにも異世界。いかにも強そうだ。かっくいい〜。


こういうものに反応してしまうあたり、

自分の心の中の男子中学生はまだ元気に生きている。

まったく。困ったもんだぜ。


教師はチョークを手に取り、黒板に図を描き始めた。

まず、大きく渦のような図。

その横に、細い線がいくつも走る図。


「ライトニングは、

純粋な雷の生成だけで作ろうとすると難度が高い。

第三等級の段階では、まず「風魔術第二等級ーーストーム」の感覚を基礎にする。」


教師は渦の図を軽く叩いた。

「ストームで空気の流れを作り、

そこへ雷魔術第二等級ーーパラライズの魔素を流し込む。」

次に、細い線の図へチョークを移す。


「これで、弱いライトニングを発生させる。

威力は低めにしてもらうが、

雷魔術の性質を掴むには十分だ。」


黒板には、

渦の中心に細い雷が通るような図が出来上がっていた。


なるほど。



「受ける側は、土魔術第一等級ーークレイ

で盾を張って受けろ。直撃すれば痺れる。

ふざけて受けるなよ。」


.......ふざけて雷を受けるやつがいるのか?


「慣れればこの工程を踏まずとも、

ライトニングが出せるようになる。強力な呪文なので、

習得したい者は是非練習を頑張って欲しい。」


「では、説明は以上にして、早速始める。

前回も言ったように、雷魔術を極めない者は、この時点で退出してもらって結構だ。退出する際に名前だけ言って出てくれ。もちろん成績が下がることはない。では二人組を作ってくれ。はい、始め。」


の言葉と共に周りのヤツらが、二人組を作り始める。

意外にも、退出する奴はほとんどおらず、二人ほど教室を退出し、そのまま授業が続く。


前回の人と組もうと思ったが、

よく見たら既にもう組んでいる。


終わった。嘘ですやん。


いやいや、前回一緒にやったんだから、

そこは、今回も一緒にやろうよー.....


そんなことを考えながら、

周りを見渡すが、もうほとんどペアができている。






うっっっっ!(心停止)






となりそうな所を必死でこらえ、残っている人を探す。


教室の後ろの隅っこを見ると、

まだペアになれてない子がいる。


あの風貌は女の子か.....

緊張するし、まだ少し苦手だが、まあ仕方ない。

そう思い、近づいていく。




スラっとした細身で引き締まった体型。

濃い紺色っぽいウルフ系のショート髪。

触るもの全部傷つけそうな、青い目。

中性的な顔。


ん?


ん?


アルファ個体に殺さかけてた俺たちを救ってくれた彼女、

ミオ・ヴァレンだ。いた。


制服を着ているせいで印象は少し違う。

だが、あの目つき、髪色は間違いない。


数日間ギルドに行っても見つからなかった相手が、

なぜか普通に授業にいる。


俺は足を止めた。


彼女はこちらを見ていない。まだ気づかれていない。


よし、今のうちに戻ろう。

これは別に逃げるわけではない。戦略的撤退だ。

世の中にはただの逃げと必要な撤退がある。


これは後者なのだ。そう。後者なのだ。

これは必要な撤退がある。


俺は静かに体の向きを変え、

壁際の元いた場所へ戻ろうとした。


「ねえ。」


背中に一、二週間前に聞いた声が刺さった。


あっおわたー\(^o^)/


「何戻ろうとしてんのよ。私と組みなさいよ」


ゆっくり振り返ると、

彼女は腕を組んでこちらを見ていた。

目が合う。相変わらず、視線が強い。


「いや、その……もう誰かと組むのかと思って.....」


「組んでないから一人でいたんでしょ。」


「……じゃあ、お願いします。」


「さっさとそう、決めなさいよ。」


なんで怒られてるんだろう。

助けてもらった相手ではある。

それは間違いない。


だが、できればもう少し他人を威圧しない、

柔らかい会話というものを覚えては貰えないだろうか。


俺たちは教室の空いている場所に移動した。

まずは俺が放つ側だ。

俺は手を前に出し、教師の説明を思い出す。


まず、風魔術第二等級ーーストーム。空気の流れを作る。

そこに、雷魔術第二等級ーーパラライズ。の魔素を流し込む。


ストームを作ろうと魔素を集めると、

小さな風が手の前で渦を巻いた。よし。


次に雷の魔力を流そうとした瞬間、風の渦が乱れて消えた。


「あんたそういえば、なんでこの授業いるのよ。」

彼女が話しかけてくる。


「....もっと強い魔術を覚えようと思って。」


「あっそ。」


会話しながらも、

風を作る。雷の魔力を流す。

今度は少しだけ青白い火花が散った。


だがそれだけだった。

これじゃ雷というより静電気だ....。


「……あんた、こんなのもできないの。」

冷たい一言だった。


分かってる。

できてないのは俺が一番分かってる。

でもそれを真正面から言われると普通に腹が立つ。


勢いでつい、投げやりな言葉が出てしまう。

「じゃあ、見本見せてくださいよ。」


しまった。と思いつつ、彼女を見ると、

彼女は特に怒った様子もなく、俺と位置を入れ替えた。


「ん、じゃあ受けなさい。」


「は、はい....」


俺は土魔術第一等級、クレイで前に盾を作る。

念の為、そこそこ厚めに張る。


彼女が片手を上げた。

手の前で空気が一気に渦を作る。

俺のものよりずっと細く、まとまっている。

次の瞬間、渦の中心に青白い線が走った。


「風雷魔術。第三等級ーーライトニング。」


バチッ、と短い音が鳴る。

渦の中心に集まった細い雷が真っすぐに飛び、

こちらに飛んでくる。



真っ直ぐ飛んできた雷が作った土の盾に当たり、

バリンとガラスの割れるような音を立てる。


盾の表面が弾け、更に腕まで軽い痺れが伝わる。

ミオを見ると、彼女は何事もなかったように手を下ろした。

「できたけど。」


俺は手に残る痺れを、上下に振って逃がす。

こんの女ぁ.....念の為厚く張った「クレイ」を貫通して、

手が痺れるほどの威力出しやがって。


弱い威力って言ったよなぁ??あぁん??

以前からの態度と言い、ブチ〇したろか??







......なーんて嘘♡ 冗談♡




手の痺れが取れるようになるまで手を振って、

また俺が放つ側に戻る。




彼女がやったように、同じように手を前へ出し、

風を作り、雷の魔力を流す。



火花は散るが、だがしかし、雷が出来上がる感覚はない。



もう一度。



また失敗。



三度目。また失敗。



また失敗。今度は先程までできていた、

風の渦ごと崩れてしまった。


彼女を見ると、やれやれ。

みたいな顔をしてため息をついている。


ちょ、あの、ため息やめません?

僕が下手なのはわかってますけど、

ため息つかれるとすごい心に来るんですよ。


見兼ねた彼女がアドバイスをしてくる。


「あんたは、風が広いのよ。

この魔術は、雷魔術の通り道を狭く絞らないといけないの。

もっと魔素の出力あげて、かつ狭めなさい。」


は、はあ。まあ確かに風魔術が弱くて広かったのは確かだ。


じゃあまあ、もう一度。


魔術というのはイメージが大事だ。

狭めるイメージ.....絞るイメージ.....


最初は、漏斗のイメージをするが、

どこか違う気がする。

このイメージに魔素を流しても成功する気がしない。


通り道。雷の通り道.....

今度は銃腔をイメージし、魔素を練る。


作った風魔術の魔素は手の中で完璧に安定し中央に通り道ができている。その中へ、雷の魔力を流すと手の先で青白い閃光が起こる。


「雷魔術、第三等級、ライトニング」


今度は、短い雷が前に伸びた。

バチッ、と音がして、彼女が作った土の盾に当たり、

表面を軽く削った。成功だ。

威力は弱いが、このイメージを元に出力を上げていけば、

かなり強い魔術になるだろう。


浮かれる気持ちを抑え、

アドバイスをくれた彼女にしっかりと礼を伝える。

が、適当に流される。


その後も何度か交代しながら練習した。


俺のライトニングはまだ安定しない。

出たり出なかったりする。


彼女の方は毎回ほぼ同じ威力で成功させていた。

すげえな。一度もミスしてない。

そして威力もずっと同じ感じだから普通に痛い。



しばらくして、授業終了の合図が出た。


「今日はここまでだ。ライトニングは扱いを誤ると危険だ。授業外で練習する場合は必ず場所を選べ。以上」


生徒たちが少しずつ教室を出ていく。

俺は荷物をまとめながら、横にいる彼女を見る。

言うなら今しかない。


「あのぉ。大変申し訳ないのですが、少しお時間よろしいでしょうか。」


「何。キモいわよ。」


返事が早い。そして怖い。


俺は、緊張しながら、しっかりと背筋を伸ばし真っ直ぐな目で彼女を見て、礼を伝える。


「この前の森でのこと。俺とカイルを助けていただいて、

ありがとうございました。カイルの応急処置も、

治療所まで運んでもらったのも、本当に助かりました。

僕らだけじゃ確実にあのまま死んでいたと思います。」


彼女は特に表情を変えなかった。


「あと、依頼報酬と牙の売却についてなんだけど、

ギルドではこういう扱いになったというのを伝えたくて、」


俺は細かい説明は省きつつ、ギルドの見解を簡単に伝え、

受け取った分の金銭の一部を後日払いたい旨を伝える。

彼女は最後まで黙って聞いて、最後に一言。


「ふーん。そう。ていうか、あんたこの前とは大違いね。

あの狼獣の剥ぎ取りの時はあんなに堂々としてたのに....

ま、どうでもいい。」


それだけ言うと、彼女はさっさと教室を出ていった。

俺はしばらく扉の方を見ていたが、少しして正気に戻る。


やっぱ俺、女の子って無理かもしれない。

とりわけ、ああいう性格の子は.....ちょっと.....

ほら女の子ってね、もっとお淑やk

おっとやめとこう。今の時代、これの考え方はまずいよね。


ミソジニストになりそうな気持ちをしっかりと抑え込み、

文句も言わず、俺は荷物をまとめて教室を出た。


次の時間は授業がない。いわゆる空きコマってやつだ。


やることもないので、俺は寮戻ることにした。

廊下を歩き、連絡通路を抜ける。


先程のように外を見ると、

まだオーミックの授業らしきものが続いていた。

生徒たちが走り回り、各陣地の中央にある銅像に触ったり、

生徒同士で魔術決闘のようなことをしたりしている。



寮に戻り、部屋に入ると、紙と羽根ペンを机に置き、

椅子に座って、さっきのライトニングの感覚を忘れないうちに簡単にメモを残して、すぐにベッドに潜り込んで昼寝をすることにした。



ーーーーーーーーーーー


扉の開く音がして、

浅い眠りの中から、意識が引き戻される。

ぼんやりと目を開けると、

部屋の入口にカイルが立っていた。


三十分ぐらいのつもりだったが、

思ったより深く眠っていたらしい。

体を起こすと、机の上にはさっき書いたメモがそのまま置かれていた。


「もう授業終わったの?」


「うん。今から食堂行くけど、行く?」


「もちろん。」



部屋を出て、歩きながら、

「そういえば、オーミックってどうだった?」

と尋ねると、カイルは少し考えるように視線を上げた。


「結構疲れた。走るのもあるし、

魔術も使うし、周りを見ないといけないし。」


まあ見ている限り、確かに結構大変そうだった。

それからまた授業なんて、何も頭に入ってこないだろう。

そんな事を思いながら、食堂に向かう。


昼の食堂は朝ほど混んではいなかったが、

それでも生徒は多い。

適当に飯を受け取り、空いている席に座る。

今日は豆の煮込みとパン、それから焼いた肉が少し。

昼はいつもメニューが似たようなものになりがちだ。


食べ始めて少ししてから、俺は思い出したように口を開いた。


「そういえば、今日の授業でさ。」


「うん。」


「森で僕達を助けてくれたあの彼女。いたよ。」


カイルの手が止まった。


「え?」


「この学園の生徒だった。第三等級実践魔術の授業にいた。」

「本当に?」


「うん。しかも同じ授業でペア組むことになった。」


カイルは少し驚いた顔をしたあと、

すぐに身を乗り出してきた。


「どんな感じだった?」


「どんなって……相変わらず目つきが鋭い。口もきつい。あと、魔術が上手い。ライトニングっていう難しい魔術を一発で成功させてた。」


「あと授業終わった後に、しっかり前回のお礼と、報酬の一部を彼女に払うっていうの伝えた。」


「そっか。ありがとう。でもすごいね。第三等級の魔術を一回で成功させちゃうなんて。それにあの一際大きい狼獣にも勝てるくらい剣術も強いわけで....しょ.....」


カイルは少し言い終わってから考えるように、

手を顎に当てた。


「彼女って、ソロ冒険者っぽかったんだよね?」


彼女の様子を思い返し、答える。


「まあそうだね。一人だったし、戦い方がそれっぽかった。剣さばきや立ち回りもそうだけど、何より、あの剣術でチームだったら魔術を使った戦いはしないと思う。」


「じゃあさ」


すごく嫌な予感がした。

というか何を言おうとしているのかわかった気がした。


「僕らのパーティに入ってもらえないか聞いてみようよ。」


ほらきた。


「いや、無理だろ。あんな強い子が僕らのパーティに入ってくれるわけない。」


そのまま俺は続ける。

「なにより、あんなキツい子と上手くやっていけるわけがない。」


それを聞いてカイルが切り返す。

「でも、すごく強かったんでしょ?」


「強いのは強いけど....」


「僕らのパーティはまだ弱いし、前衛もいない。

昨日もギルドで全然見つからなかったし、

聞くだけでも聞いてみてよ。」


「聞くだけって簡単に言うなよ。」

てかなんで俺頼みなんだよ。お前が頼めよ。


「お願い。」


その後俺は何度も断ったが、

カイルはなかなか折れなかった。


そして飯も食い終わって、

一時間以上経過してからもカイルは折れず、

とうとう俺が折れた。


「わかったよ!もう.....

次の授業でまた会ったら、聞くだけ聞いてみるよ....」

結局、俺はそう言った。


その言葉を聞いた瞬間カイルの顔が明るくなる。


「ありがとう」


「期待するなよ。多分断られると思う。」


「それでもいいよ。聞かないよりはいい。」


「はいはい。」


ーーーーーーーーーーーーーー


そして次の週の頭。

第三等級実践魔術の授業の日。


約束の事をを考えると、だいぶ憂鬱で来たくなかったが、

俺はカイルとの約束を守るために、教室の入口の前に立つ。


もうここまで来たら仕方ないと、

溜息をつきながら、ドアを開けて、教室の中に入る。

彼女を見つけるためいつもより早く来たので、

前回来た時間より人は少ない。


教室内を見渡し、濃い紺色の髪のキツい顔の女の子を探す。

いました。いらっしゃいました。

今日も誰とも群れず、

壁際で窓の外を見ていらっしゃいますね。


俺は深呼吸をして近づき、彼女に話しかける。


「すみません。今日もこの授業の後、少しいいですか。」


「あんたか。えっ、また....?」


「はい、あのぉ、お手数お掛けするんですけど、よろしいですか?」


「だからキモいっての。」


「はい。すみません。で、どうですか。」


「......わかったわよ。」


「ありがとうございます。」


「ではまた後で.....」


「どこ行くのよ。ペアいないのよ。どうせ今回もできないからあんた今回もアタシと組みなさい。」


そう言われ、俺は彼女の横で授業が始まるのを待った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ