第20話 金を稼ごう!!
休日、大好きなんだ。(^_^)
この学校に入ってから、13日が経過した。
そして、今日は休日。
この世界は基本的に、8日のサイクルだ。
前世では、
5日働いて、2日休む。
学生なら、
5日学び、2日休む。
これで一週間だった。
だがこちらの世界では、
5日働き、3日休む。
学生ならば、
5日学び、3日休む。
これで「一巡」というらしい
現世の「一週間」だろう。
素晴らしい。最高だ。
今日寝ても、まだ2日も休日がある。神か?
ということで、
俺は寮で誰にも邪魔されずに惰眠を貪ることにした。
天日干し布団の温もり。それを全身で感じながら、
昼寝ができる。
ああ〜〜たまらねえぜ。
このまま今日は一日中寝てやるぜ!
「おーい起きて〜ノア〜」
部屋の入り口の方から俺を呼ぶ声が聞こえる。
うるせえなぁ。
俺は今日は一日中寝るって決めたの!!
人の睡眠を邪魔するのは....やめようね!!
そう思い、体の向きを反対方向の壁側に直し、
もう一度眠りにつくと、
「おーい起きろって〜」
声はだんだん近づいてきて、
俺のベッドの横まで来た。
そして体を揺すられる。
なんだよもぉ!!!
そう思いながら、うっすらと目を開けると、
パジャマから、いつもの制服姿とは違う、
出かけるような格好をした、カイルがいた。
なんだカイルか。そうかそうか。
寝るわ。
「起きてよー!お願いだよ!!」
そう言われ、先ほどよりも強く体を揺らされ、
寝るどころではなくなってしまう。
少々ブチギレそうになりながら、
目を開けて、事情を聞くと、
カイルは、街に出ようと言ってくる。
理由を尋ねると、どうやら金がないらしい。
というのも
入学前に払うはずだった
入学金をカイルはまだ納めていないらしい。
カイルの家は貧しく、
親からの援助は見込めないらしく、このままでは
入学早々に退学になってしまうとの事だった。
それを聞いた俺は、どのようにその入学金を工面するつもりか聞いたところ、
カイルはあろうことか俺に、一緒に働いて、
その報酬の金をしばらく貸して欲しいと言ってきた。
とんでもないことを言うな....と、
そう思いながらもせっかくできた、
友達を失うのは惜しいので、
協力はしたいと思ったが、
そもそもの問題が思い浮かんできたので、
それについて聞くことにした。
まず、
この休みの三日間だけで、
入学金など稼げる訳無いだろうと、俺が言うと、
これから休みの日は毎週働いて稼ぐのだそうだ。
そしてある程度の額を学校側に納めたら、
残りはまた少し待ってくれるのだそうだ。
......なるほど。
だがまだ問題は解決していない。
俺らはただの学生だ、それもまだ9、10歳だ。
雇ってくれるところなどある訳もないだろう。
そう言うと、
それでもやらなきゃいけない。と
カイルは言う。
そう言うカイルの目は覚悟が決まった目をしていた。
その顔を見て俺はこれを言いたくなった。
こいつ....まじにやる気だ....
こいつにはやると言ったらやるスゴ味がある!!!
「わかったわかった。手伝うよ....」
そう言うと、カイルはパァッと笑顔になり、
寝ている俺にいきなりダイブし、
抱きついてから、何度もお礼を言ってきた。
カイルのハグを引き剥がした後に、
外行きの服に着替え、外出の許可を取り、
街に出た。
街はやはり活気があり、
非常に元気だ。
俺は、街の大通りをゆっくりと、
カイルが歩くすぐ後ろをついて行く。
カイルは既に働く場所の目星をつけているかのように
真っ直ぐに迷いなく歩いていく。
彼の顔を見るとどこか楽しげに笑っている。
俺は気になって行き先を尋ねることにした。
「カイル、働くって言ったけど、
具体的にどこに向かってるの?」
「うん?そうだね。まあ、決まってないけど一軒一軒手当たり次第に入って雇ってもらえるか聞いてみるつもりさ。」
おいおいおい。
死ぬわコイツ。
ってマジで言ってんのか?
「本当に言ってるの?僕らみたいな子供を雇ってくれるところなんてあるわけないよ....」
「そうだね。そうだと思うよ。だけどやるしかない。」
やっぱ帰ろっかな。
そう思い学園に戻ろうと来た道を引き返すと
慌てて服を掴まれて引き止められた。
「そうは言ってもある程度の職種の目星はついてるよ。」
「というと?」
「ズバリ!ウェイターさ!」
「ここは大陸の物流の中継地だからね。働く人が多くて、そういう人達の為に飯屋が豊富なんだ。見てごらんよ。この大通りだけで既に、飯屋は数え切れないほどある。この店の全てが、人手がしっかり足りてる訳ないだろう?」
「それに、ウェイターならそこまで難しい仕事は要求されないだろうさ。」
まあまあまあまあ.....
筋は通ってるんだけどさ....そう上手くいくかね.....
「まあわかった。でこれからどうするんだい?」
「どうするって。だからさっきも言っただろう?
地道にこれから一軒ずつ声を掛けていくんだよ。
とりあえず二手に別れて声を掛けていこう。
僕は右手沿いの店を。君は左手沿いをよろしく。」
いや無理ですが。
コミュ障だし。
そう思い再び、
学園へ帰ろうと来た道を歩き始めるとまた服を掴まれた。
コミュ障なことをどうにかこうにかうまく説明すると、
カイルは腑に落ちない顔をしながら納得したように。
「じゃあ、まあ一緒に回ろうか。」
そう言って歩き始める。
そうして、俺らは大通りの店を一軒一軒
回り始めた。
一軒目。
どこにでもあるパン屋だった。
カイルがドアを開けて中に入り、俺も続いて中に入る。
中は、朝だからだろう。閑散としており、人は少なく、
店主であろう小柄な男と、客が2人のみだった。
カイルは店主に前まで歩いて行き、
「ここで働かせてください!」
とジブリ映画の湯屋で働く少女のような事を言った。
というか、ようなではなくまんまだった。
そして、当然のように断られた。
同じような事をカイルは何十軒と繰り返し、
朝から始めたこの就職活動は、
太陽が少し傾き始めた昼過ぎとも言えないようなぐらいに
ようやく終わった。
長い。4、5時間はやったんじゃないだろうか。
もうすぐ夕方なるぞおい。
まあ俺はコミュ障で声も小さくて、目も死んでるから、
カイルの就職活動をずっと後ろからついて回っていただけなんだが。
とまあそんなこんなで、
俺たちは、隻眼のダックテイルの髭の中年のイケおじの経営する広い酒場で給仕として働くことになった。
そしてすぐに俺は、
カイルの学費稼ぎを手伝うと言った、
あの発言を後悔した。
理由は単純。
クソほどキツかったからだ。
店内に入り、店の服に着替え、
仕事内容を簡単に教わっている間に、店はみるみるうちに
混み始め、夕方になる頃には、既に、
客席はほぼ満席になり、至る所から注文が飛んでくる。
もうてんやわんやだ。
忙しすぎる。注文が入り、
料理や酒を運んでいる最中にも注文が飛んでくる。
聴き逃したり、間違った物を出そうもんなら即座に
怒号が飛んでくる。
更に酒も料理も量が多い。多すぎる。それに重すぎる。
酒一人分の量だけで、1Lぐらいはあるのではないだろうか。
前世で家族旅行で韓国に行った時に、
父親がビールを頼んだ際にこのぐらいに量が出てきていた気がするが、父は飲み切れていなかった。
料理の量もおかしい。
中学時代の成長期の自分でさえ、
ここまでの量が来たら食えない。そう思うほどに量が多い。
更に店も広く人も多いのだ。
下手な学校の教室より広いこの酒場に、
人が40人以上はいる。
それを俺とカイルを含め、6人で捌き切る。
いや無理だろう。
前世バイトはしていたが、全く職種も違うし、
体も成長しておらず筋肉もない。
こんな重労働をこれから長い間続けて行けるとは
とても思えなかった。
料理と酒をせっせと運びながら、カイルを見ると、
カイルも忙しそうに目まぐるしく働いていた。
だが、俺よりは慣れているようだった。
怒号もあまり飛んできていないところを見るに、
注文ミスもあまりしていないように思える。
そんなことを考えながら、働いて、客足も減ってきて、
仕事が終わる頃には、給仕は全員床に倒れていた。
全員仰向けに倒れた状態ながら、
お互いに安否を確認し合っていると、
店の奥から、おヒゲのイケおじが歩いてきて、
俺たちに労いの言葉をかける。
「おう、全員無事か?」
全員で返事をすると、
イケおじは短く続ける。
「ご苦労だった。 さて、給料だ。」
そう言うと俺らはスクッと立ち上がり、
イケおじの前に並ぶ。
そして順番に給料を受け取り、
最後に俺たちの番になった。
イケおじが手を伸ばしてきて、
俺たちは、手を皿のように丸め、給料を受け取る。
イケおじが手を開き、自分の手の中に、硬貨が落ちる感覚が伝わる。嬉しくなり、手の中を見ると、
手の中には、銅貨3枚が入っていた。
俺は絶望した。
カイルの方を見るが、
やはりカイルも同じく銅貨四枚の様だ。
顔を見ると、絶望した俺とは対照的に
少し満足そうな顔をしている。
が俺は無理だと思った。
こんなきつい労働を
あと何日続けなければいけないのだろう。
そもそも学費の納入期限に間に合うのか?
というかなんで俺がこんなきついことをしているのだろう。
そんな思考がぐるぐると頭の中を駆け巡る。
帰り道もずっとそれだけを考えていた。
お互い疲れていたのもあったのだろう。
その日はお互いに言葉も交わさず眠りについた。
二日目は、昼過ぎにカイルにまた起こされ、
酒場に向かい、前日覚えきれなかった事を教わった。
正直、二日目で既にもう面倒くさかった。
だが、何とかやり切り、三日目も同じようにこなした。
そして三日目の帰り道、
カイルに入学金の費用について聞いてみた。
支払い金額は、
金貨2枚と銀貨2枚らしい。
この世界の貨幣は
銅貨10枚で、銀貨1枚、と同価値。
銀貨10枚で、金貨1枚、と同価値。
金貨5枚で、黑金貨が1枚と同価値。
みたいな感じの貨幣価値になっているようで
物価を見ていると、
銅貨1枚で大体パンが4、5個買えるので、
銅貨1枚で1000円から1500円くらいだろうか。
それが10枚で銀貨1枚なので、
単純計算で銀貨は万札と同じような価値だろう。
それが10枚で金貨1枚なので、
金貨は1枚で10万から15万くらいの価値だろう。
それが5枚で黒金貨なるものになるらしい。
ということで黒金貨は1枚で50万ほどか。
ということは、入学金は20万から30万前後ということか。
うーん無理。
なにか他の稼ぎ方はないのだろうか。
俺もリーネから預かった金に余裕がある訳では無い。
カイルに貸せるほどは無いしなぁ....
そう思いながら、その日も帰宅し、寝て、
週末明け、授業に向かう。
授業を受けている間も新しい稼ぎ方を何かないか
考えるが、やはり良さそうな考え方は何も浮かばない。
そしてそのまま、何事もなくまた週末になってしまった。
休みの日の昼。
その日もまたカイルに起こされ、
食堂で食事を済ませ、
気だるさを感じながら、夕方に俺たちは酒場に向かった。
その日も一段とキツく、
先週よりかは慣れてきてはいるものの、
正直、幼いこの体でこれをずっとやっていては、
入学金を稼ぎ切る前に先に限界が来ると思った。
そんな事を考えながら仕事をして、
夜も更けて、仕事が終わる頃には先週通り、
皆、床に倒れていた。
すると、先週通り、
奥からおヒゲの店主が出てきて、
給料を渡す旨を伝える。
それを聞いたみんなは全員列になって並び
給料を受け取っていく。
そして俺らの番になり給料を受け取る。
手の中に落ちてくる硬貨の感触を感じる
この瞬間は少し嬉しくなるが、額面を考えると苦しい。
給料を受け取り二人で手の中の給料を眺めていると、
店主が店の椅子に座って、話しかけてきた。
「なぁ、おめえらはなんでこんな所で働いてんだ?」
なんだいきなり。
こんな所で雇って働かせてるのはお前だろうが。
そう思っていると、そのまま店主は続ける。
「お前さん達まだ若いだろう。というか若すぎだ。
なんで働いてんだ?」
入学金のためです。とカイルが続ける。
「入学金ってのは、あの学園のか?
お前らあそこの生徒なのか。」
そうですとカイルが答える。
ってかお前、雇ってもらう時に説明しなかったのか。
店主、お前も雇う際に聞かなかったのか。
「入学金ってのはいくらなんだ?」
そう聞かれ、カイルが額を言うと、
店主は少し眉を顰め、質問を続ける。
「それをいつまでだ?」
うんそれは俺も気になった。
「四巡後までです。」
そうカイルが答えると、
「店主はそりゃ無理ってもんだろう。ここで働いてたって、
そんな金額はすぐには貯まんねえよ。」
「何かここ以外にも働く場所があるとか、そういうのはないのか?ここは夜しかやってねえからな。朝とか昼とかもやらねえと短い間に、その入学金を稼ぐってのは無理だろう。」
ないです。とカイルが短く答える。
「そうかぁ....どこか他に紹介してやれるような所があればいいんだがなぁ....あいにくそういうのはなくてなぁ....」
確かに32日後までに、
稼ぎ切るのは無理そうだ。
そう言われ、
俺たちが下向いて黙っていると、
後ろから声が飛んできた。
「それじゃああんた達、
冒険者になればいいんじゃないのかい?」
振り向くと、
40代半ばぐらいのガタイのいいおばさんが
店の奥から、こっちに歩いてくる。
店の服を着ており、服には所々や油や調味料が跳ねている。
どうやら厨房で料理を作っていた人みたいだ。
おばさんが話を続ける。
「話を聞いてたけど、あんた達アルメリアの生徒なんだろ?
だったらある程度の魔術は使えるだろ?
なら、冒険者になればいいじゃないか。
手燭級ぐらいの依頼をいくつかこなせば、
その入学金くらい稼げるはずさ。」
なぜそんなことを知っているのかとカイルが尋ねると、
おばさんは少し自慢気に、
「なんでって、そりゃ冒険者だったからさ。
あたしとこの人とあと何人かでパーティを組んでたのさ。」
そう言いながらおばさんは、座っている店主を指差す。
指を差された店主は頭だけ振り返って後ろに立っている
彼女に向かって言う。
「しかしなぁ。
この子達はまだ子供だぞ。
子供には無理だ。冒険者は危険を伴う。
それはお前だって知ってるだろう。」
「何言ってんだい。あんただって、冒険者を始めたのは12、3の頃だっただろうが、変わりゃしないよ。」
「それに無鉄砲なあの頃のあんたと違って、
この子らは見たところしっかりしてるじゃないか。
そっちの子も声は小さいし、注文は間違えるし、
皿落っことして、割ったりしてるけど。
あの頃のあんたよりよっぽど真面目でしっかりしてるよ。」
あ〜すみませんね。声小さくて、仕事覚えられなくて。
そう思っていると、彼女は続ける。
「そういうことだから、あんた達、
ここやめて、冒険者になりな。
人手足りてないから働いてくれるのは嬉しいけどね。
そういう目標があるなら、こんな汚い、広いだけの酒場で、
安い給料で働かされてないで、冒険者になって、
大きく稼ぎな。」
その発言は、
俺ら以外のここで働いてる給仕、
4人のモチベーション下げてねえか?
そんな事を考えていると、
カイルは
「わかりました!早速明日、
ギルドに行って登録して来ます!」
と言った。
てか俺はまだ同意ないんだが....
まあいいか。冒険者....ちょっと楽しみだ.....
そう言われ、彼女はにっこり笑って、
「そうかい。頑張りな。何かあったら、いつでも来な。」
そう言われ、俺らは彼女に深く頭を下げて、
酒場を後にして、足早に寮に帰った。
ーーーーーーーーーーーーー
そして次の日。
労働の筋肉痛で痛い体を起こして、
二人で冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは、街のちょうど中央にあった。
隣には郵便ギルドと街の役場?のような建物と三つ並んでおり、三つとも全て他の建物より大きく作られており、一目でこの建物たちがこの街の中核を担っているのだと理解出来た。
冒険者ギルドは、
立派な赤レンガ作りで、他の二つより少し縦に長かった。
上の屋根を見ると、冒険者ギルドのマークの旗が
大きく、堂々と風に揺れている。
少し見とれていると、
カイルが足早に両開きの大扉を押し開けて、
建物中に入っていく。それを見て俺も後に続いて中に入る。
ギルドの中は一階が受付となっており、
腕に自信がありそうなヤツらがゴロゴロいる。
提げている武器も、普通の剣と盾の奴もいれば、大剣や双剣、弓に、斧、更には盾のみ奴、大きな杖を持ったやつ、
小さなナイフのみの後方支援を行うのであろう奴、
などと様々だ。
よく見ると、人間じゃない、他種族?
恐らくは、ドワーフ、オークみたいな奴らも何人かいる。
だがそれぞれが自信に満ち溢れた顔をしており、
冒険者の風格を感じさせる。
二階がホールのような空間となっており、3階が応接室や
各種会議室、作戦室のような構造になっている。
俺達は、とりあえず、受付で冒険者登録と、
パーティ申請を行うことにした。
俺たちはまだ子供なんで、
登録も時間がかかるかと思ったが、案外すんなりいき、
名前とパーティ名、
行使できる魔術等級などを書いて終わった。
しばらく座って待っていると、
再び呼び出され、
個人名とパーティ名が書いてある首から下げるタイプの
プレートが渡された。
プレートに彫られている文字を見ると、
カイルの名付けた
「若芽の剣」
という名前が書いてある。
なかなかセンスがいいじゃないか。
まだクソガキの俺らにぴったりな名前だ。
その後、
ギルドのルールを説明された。
冒険者の等級は、数字ではなく灯火で表されるらしい。
理由は、冒険者とは
「人の暮らす場所から、
危険な暗い外の世界へ灯りを持っていく者」
だからだそうだ。
受付嬢は、俺たちに渡したプレートを指で軽く叩きながら説明を続けた。
まず、登録したての冒険者は火種級。
まだ灯りと呼ぶには頼りなく、採取や配達、街の周辺調査などが中心になる。倒せる魔物も、せいぜい角兎や大鼠、森蛇のような小型のものに限られるらしい。
次が小灯級。
一人前とはまだ言えないが、短時間なら街の外で活動できる者たち。ゴブリン単体、牙犬、毒羽虫の巣の駆除など、村人では危ないが、熟練冒険者を呼ぶほどではない依頼を任される。
その上が手燭級。
ここまで来て、ようやく「冒険者」として周囲に認められる。数体のゴブリンの群れ、森狼、低級の魔素変異獣などを相手にでき、護衛依頼や簡単な討伐依頼も受けられるようになる。
その次が灯籠級。
一人で手元を照らすだけでなく、周囲の仲間の足元まで照らせる者たち。小規模なパーティの中核として動ける段階で、オーク単体、武装した盗賊数人、魔素に侵された獣の群れなどを相手にできる。危険な森の奥や、簡単な遺跡の外層調査も任されるようになる。
さらに上が篝火級。
一つのパーティとして、周囲を守るだけの実力がある者たち。オーク、オーガの若個体、武装した盗賊団、小規模な魔物の巣の討伐など、失敗すれば死人が出る依頼を任される。
その次が烽火級。
名前を聞けば、近隣の町や村が頼るような実力者。大型魔獣、ワイバーンの幼体、魔術を使う魔物、魔素濃度の高い森や遺跡の調査など、国や領主からの依頼も混じってくる。
さらに上が暁光級。
夜を終わらせるほどの灯り、という意味らしい。竜種の亜種、古代遺跡の深部、上級魔族、災害級の魔物など、人間社会そのものを脅かす存在に対応できる者たちだ。
そして最後が星火級。
もはや冒険者というより、生きた伝説に近い。真竜、神獣、古代戦争の遺物、禁域の魔物。普通の依頼としては出されず、国家やギルド上層部から直接指名されるらしい。
俺たちのプレートには、当然のように一番下の火種級を示す小さな炎の印が刻まれていた。
受付嬢は淡々と続ける。
「火種級のうちは、原則として討伐依頼は推奨されません。受けられるとしても、街道沿いの小型魔物か、ギルドが危険度を確認済みの依頼のみです」
「昇格には、同じ級の依頼を十回以上成功させる必要があります。その後、ギルドの審査に掛け、通った場合に昇格となります。ただし、失敗が続けば降級、悪質な虚偽報告や他人の手柄を強奪した等の違反行為を行って依頼を完了させていたことが発覚した場合は即座に登録抹消です。」
その後も
長々と説明が続いた。
要約するとこんな感じだ。
・依頼を何度も失敗すると、冒険者ランクが下がること。
・同ランク帯の依頼であれば、
他パーティとチームを組んでの同行も可能。
但し、報奨金等の分け方などの取り決めは各自で行うこと。
・自分たちの冒険者ランクより、
上の依頼は受けることはできず、同行もダメ。
・ランクは同じランクの依頼を5回以上成功させ、
申請すれば昇格可能。
・依頼完了の証として、討伐モンスターの一部、もしくは全部を持って帰ってくること。
・他人の手柄を奪うのはご法度、
・倒したモンスターや手柄は全て報告、
・ギルドメンバー同士のいざこざは自分たちで解決。
・怪我や死亡は原則自己責任。
・会議室や作戦室を使用出来るのは篝火以上の冒険者のみ。
・依頼は依頼ごとに受注してから制限時間があり、
それを過ぎると、失敗扱いになること。
みたいな感じだった。
というか長くて正直途中から聞くのをやめた。
そして俺達は冒険者デビューをした。
一発目に受ける依頼は、
最初からモンスター討伐は荷が重い気がしたので、
採取依頼にすることにした。
内容は、街の外れにある、
大森林の薬草採取だった。
採取する薬草も採取に当たっての注釈と見分けがつきやすいように絵の描いてある
メモが依頼者側から渡されており、
非常に簡単だった。
5、6時間程掛けて採取してきた薬草を提出すると、
銅貨7枚が支払われた。
更に自分たちで森に行き、適当に取ってきた薬草を提出し、換金してもらった。まあ銅貨2枚だけだったが。
消して高くはないが、安易な依頼なので、まあ仕方ない。
もう少し等級が上がれば、
報奨金も高くなるだろう。
それになんだか、ワクワクした。
冒険者は危険の伴う職業だというのはもちろんわかっているが、それ以上に、俺は冒険者というものに憧れていた。
いいじゃないか.....
モン〇ンで、狩りをソロで行っていた頃からずっと
夢に見ていた。
その状況が今ここにある!
うーん興奮してきたな。
早く、モンスター討伐をしてみたい!
そんなことを思いながらその日は明日受ける依頼を見繕い、帰宅した。明日はいよいよモンスターの討伐だ。
帰宅し、ベッドに寝転がり、
今日の薬草採取の依頼の事を思い出しながら、
今日受けとったパーティプレートを眺める。
モンスター討伐、どんなモンスターがこの世界には、
いるのだろうか。ドラゴンとかもいるんだろうか。もしかしたら魔法を使ってくるモンスターもいるかもしれない。
そんな事を考えていると、
向かいのベッドで同じく、
プレートを眺めていたカイルから
話しかけられる。
「ノア、いよいよ明日からモンスター討伐に行くんだよね。
君も僕も近接戦闘はあまり苦手だから、
どっちも魔法主体で戦うことになるよね。
なら、僕たちにも杖が必要じゃないかな。」
杖か。
確かに必要かもしれない。
この世界は、杖がなくとも魔術は使える。
だが、杖を使用すると、
魔術に効果が大きくなったり、
詠唱を短縮できたりする。
更に良い素材を使用した杖ならば、
自分が得意としない属性の魔術も軽々あつかえたり、
詠唱が必要なくなる場合もあるそうだ。
高価なので低学年では、どの生徒も使用していないが、
魔術決闘の授業でも杖の使用は許可されている。
なるほど。確かに欲しい。
だが、金無いだろ。
というツッコミはまあいいか。
それに買わずとも金額くらいは確かめておきたい。
そう思い俺は、カイルの提案に同意し、
明日、討伐依頼に向かう前に、
杖を見に行くことにして眠りについた。
か、書き貯めしてたのが減ってきたッピ!




