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乙女ゲームの世界に転生してよっしゃ勝ち組!と思っていたら内容がBLゲームに書き換わっていた件  作者: KP


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3/4

不良の先輩とワンコ系男子


私、アリシア・ヴェルブラント。

花も恥じらう16歳。

乙女ゲー世界のヒロインに異世界転生して、早一ヶ月が経とうとしている。

…まだ彼氏はいない。

連続してホモップルの恋の鞘当てに巻き込まれたせいでね!

どうなってるのよこの世界!?

これじゃ乙女ゲーじゃなくてBLの世界じゃないの!?

と、憤り嘆いていたこともあるわ。

フッ…

昔の話よ。

ここ最近の私は違うッ!

ついに、有望な攻略対象……もとい、恋愛対象を見つけて、彼との距離を少しづつ縮めていく充実した毎日を過ごしているわ!




その彼とは!

じゃじゃーん!

ゴーシュ・スタリオンくんでーすっ!

王立学院に通っていることから分かる通り、彼も上級貴族なんだけど、最初様付けで呼んでたら「そーいうの慣れないから…」って照れくさそうにタメ口を許してくれたのよ!

気さくで素敵♡

騎士団長の息子ってことで、ゴーシュくんもバリバリの体育会系元気っ子だけど、その中では小柄な部類でシュッとした痩せマッチョってところかしら。鍛え抜かれた肉体の上に、ちょっと童顔気味の目のくりっとした可愛いお顔が乗ってるの。

本当に可愛い…♡

明るい笑顔が魅力的だし反応もいちいち素直で。

ワンコ系男子ってこういう感じなのね!ってしみじみと思っちゃったわ。

ゲームだとそこまでメインの攻略対象ではなかったんだけどね。

人気もそこそこで、だけど好きな人はすっごく好きっていうコアなファンがついてたっけ。

ここは剣と魔法の世界だから、それを複合したスポーツ競技も盛んで、彼はその選手だったりする。

競技名は、マジックシューター。

魔法で空を飛んで魔法の玉を打ち合い、相手ゴールにたくさん入れて得点を競うってやつ。

要は、空中で行うバスケやサッカーみたいなものね。

細かい部分の差異はもちろんあるけど、おーむねそんなものと思っていれば間違いではないはずよ。

王立学院にはクラブ活動もある。

乗馬クラブ、剣術クラブ、魔法研究クラブ等と並んで、マジックシュータークラブもかなり活動が盛んなメジャーなクラブのひとつだわ。

私はゴーシュくんの練習を見学に行ったり、タオルを渡したり、模擬試合を応援したりして、彼へのアピールを日々続けているの。

きっかけは、あまりにもまともな男子との出会いや進展がなくてウンザリしてた私が、何か気分転換になる娯楽でもないかなーってアンテナ張ってたところから。

スポーツ観戦なんて、いいんじゃない?

そこで、この世界ではメジャー競技だというマジックシュータークラブの模擬戦を見に行ったのよね。

その試合で、ゴーシュくんは大活躍だったの!

初見の素人目にも、彼が頭一つ抜きん出ている有望選手だってことはすぐ分かった。

普段は子供っぽくてあどけない感じの彼だけど、勝負に集中している時の真剣な眼差しはまるで別人!

キリッと凛々しくて、雄々しくて、何気なく見ていた私の胸もトゥンク…と一発でときめいちゃったってワケ!

今はまだ、スポーツ競技を通してちょっと仲良くなったクラスメイトって立ち位置だけど…

いずれ彼のハートを射止めて、最終的にはハッピーエンドまで辿り着いてやるわ!

今のところ感触はそう悪くないと思ってる。

試合中に声援を送ればちょっと視線を寄越して微笑んでくれるし、タオルとかお菓子とかの差し入れも笑顔で嬉しそうに受け取ってくれるし。

元の世界の私のビジュアルじゃこうはいかなかったかもしれないけど。

なにしろアリシアは美少女だから!

ホモ被害に遭い続けて自信がグラつきかけてたけど、まごうことなき美少女だから!

大事なことなので二度言ったわ!

きれいな女の子に構われて嬉しくない男子なんてそういないわよ。

というわけで、私は着々と幸せなエンドロールに向けての日々の努力を重ねていた。




その日の放課後も、クラブに行こうとするゴーシュくんにくっついて一緒に廊下を歩いていた。

和気藹々とおしゃべりなんかしながらね!

話題は専らマジックシューターのことで、この前の試合がどうだったとか、そんなことばっかりだったけど。

色気がないとか言うなかれ。

スポーツに夢中になってるのがゴーシュくんのいいところなんだから!

それに、私も下心ありとはいえ、ちゃんとスポーツ観戦的にも楽しんでるのよ。

魔法で空を飛ぶ競技なんて、前世ではありえなかったから、新鮮で面白いし見ごたえがあるしね。

私とゴーシュくんは健全で平穏な青春を正しく謳歌していたわ。

ところが、そこに波乱が。

「あっ…」

ゴーシュくんが唐突に立ち止まった。

彼の視線の先を追って、すぐに私も原因に気付いた。

「…チッ。てめえかよ」

制服を着崩したいかにもガラの悪い生徒……ゴーシュくんと同じマジックシュータークラブ所属で、ひとつ上の学年であるカルロス・セレイン先輩がそこにいた。

廊下でたまたま行き違っただけ、って感じだけど…

もう放課後のクラブ活動の時間になるのに、カルロス先輩はクラブ室ではなく校門の方へと歩いていこうとしてた。

ゴーシュくんから、薄っすらと聞いて知ってるわ。

カルロス先輩は元々はマジックシューターの選手としての才能を見込まれて、特待生としてこの王立学院に入学したんだけど、ゴーシュくんが入部してすぐの他校との練習試合で酷いヘマをしたらしくて。

部員たちから負け試合の戦犯だって非難されて、それ以来クラブをサボってばかりいるそうなのよ。

いわゆるドロップアウト寸前まで身を持ち崩した状態ね。

ゴーシュくんは、すごく腹を立ててた。

「たった一回の負けくらいで投げ出しちまうなんて!あんな奴だとは思わなかった!」

なんでも、入部する前はカルロス先輩のことすごい選手だって尊敬してたんだって。

だから余計に今の状態が許せないし、もどかしいんでしょうね。

…なーんて知ったかぶって語ってる私だけど、実はより詳細に知ってるわ。

だって、カルロス先輩も乙女ゲーの攻略対象キャラだったのよ!

それも隠しキャラの位置付けだった。

一周目では絶対に攻略できなくて、何回か周回プレイしてゴーシュくんとのエンディングも一度は見ているって条件で、初めて攻略フラグが立つの。

ゴーシュくんのルートだと、単に憎らしい先輩で、引き立て役の当て馬ポジションだったんだけど。

カルロス先輩ルートで、初めて彼の本質とか葛藤とかが判明する。

本当の彼は、真面目で誠実で責任感が強くて……プライドも人一倍高い。

才能があるから特待生として入学できたけど、最初は地方出身の田舎貴族ってバカにされて苦労してたのよ。そのへん、アリシアも同じ境遇だから親近感が湧くわよね。

斜に構えた態度は、上級貴族たちにナメられないため。

周りを認めさせるために、人の見ていないところでの努力も惜しんだりしなかった。

才能がある上に努力家なんだから、そりゃゴーシュくんが憧れるくらいのすごい選手にもなるわけよ。

なのに、たった一回の失敗で、彼のそれまでは全否定されることとなった。

練習試合でのヘマっていうのが、まだ新人だったゴーシュくんの意見を入れなかったことで相手チームに得点を許して負けてしまったってことなんだけど。

試合に「もしも」はない。

仮にゴーシュくんの意見通りにしていたとしても、負けは変わらなかったかもしれない。

であるにも関わらず、それが全ての敗因だってふうに四方八方から責められちゃって。

ゴーシュくんは騎士団長の息子。当然、王都の上級貴族。

結局、どんなに頑張っても身分の高い奴が優遇されるのか……って、投げやりになっちゃったのよね。

ゲームだとアリシアとの出会いと交流によって、立ち直って再び選手として大活躍!真の誇りを取り戻す!ってストーリー展開だった。

なお、カルロス先輩のルートだと、逆にゴーシュくんが引き立て役の当て馬になる。

この二人は対になってるけど、完全にストーリーが分岐している相容れない存在ってことね。

ま、ゲームの話はこれくらいでいいわ。

肝心なのは、たった今、直面してる現実よ。

今までの経験上、ある程度はゲームの設定通りだったりしそうだけど…?

「どこ行くんだよ!クラブ室はあっちだぞ!」

「…るせえな。俺の勝手だ」

「なんでクラブに出ないんだ!?このままじゃ、おまえ…」

「礼儀がなってねえな、おぼっちゃん。それが先輩に対する口の利き方か?」

「先輩だってんなら、ちゃんとしろよ!ほら、俺と一緒に行こうぜ!」

「鬱陶しい……反吐が出るぜ!」

カルロス先輩に詰め寄って、その手を取って強引にクラブ室に引っ張っていこうとしたゴーシュくん。

でも、カルロス先輩は乱暴にその手を振り払ってしまった。

取り付く島もないって感じ。

…やっぱりかー。

この二人の関係性、ゲーム通りだわ。

カルロス先輩も実はゴーシュくんの実力は認めていて、だからこそ対抗心も強くて、練習試合じゃ意固地になって意見を入れなかったって部分があるのよね。

同じチームなんだから、この二人が協力したらすっごい強くなりそうなのに…

って、乙女ゲーをプレイしてて思ったものよ。

この現実でも、そう。

ゴーシュくんからこんなふうに言われたんじゃ、カルロス先輩は意地でもクラブ室に行きそうにないわ…

と、ハラハラして様子を見守っていたら、

「なんでだよっ…!」

「!?」

えっ!?

ゴーシュくん、泣き出しちゃっ…

えええっ!?

「俺、おまえと一緒に、戦いたいっ……また、一緒に……なあ、カルロスっ…」

顔を真っ赤にして、ぐすぐすと小さな子みたいにベソをかきながら、ゴーシュくんはまたカルロス先輩の手を取った。

離したくない、と主張するかのように。

えっ…

「バカが、なんで俺なんかをそこまで構う?」

「なんか、なんて言うな!俺はっ…」

「まるで俺に惚れてるみたいに聞こえるぜ?」

「あ、う………」

「おい…?」

「………」

「…マジかよ」

マジかよ!?

ヤバい、あまりのことに心の声がカルロス先輩とハモっちゃったわ!?

ゴーシュくん、耳まで真っ赤になって俯いちゃってる。

それでもカルロス先輩の手を離そうとしない。

な、なんか…

健気…!?

さすがのカルロス先輩も気まずそうに目を泳がせてるわよ!?

ってゆーか、こっちもほんのちょっと頬に赤みが…

…あー。

…あー、あー。

…全部分かった。

把握したわ。

なんせ、今回が初めてじゃないからね。

これじゃ乙女ゲー世界じゃなくてBLゲームの世界じゃないの!?って思ったのは!(涙)

まさかゴーシュくんまで……と思うと本気でやるせないけれど。

よござんしょう!

このアリシア、一肌脱いでやろうじゃないの!

今までの連中と違って、ゴーシュくんは自分から私をホモに巻き込んだりしたわけじゃないしね。

仄かに芽生えていた恋心は、心の涙と共に振り切って!

友のために、私は行動を起こすッ!

二人の会話に割って入ることもできず、完全に傍観してるだけのモブと化していた私。

…つーか、この時点でもう私はヒロイン枠から外れてたわよね。

しかし、思い切って二人の傍まで歩み寄ると、膠着状態に陥っている二人の手をいっぺんに取って、強引に引っ張っていった。

実は腕力にはちょっと自信があるわ!

前世の小学校では卒業記念のクラス総当たりアームレスリング大会で優勝したこともあるっ!

うおおおっ!甦れ!あの日の私のマッスルぅぅぅぅッ!!

よし!

二人が唖然としてる隙に、そのへんの空いてる教室へと一緒くたに放り込み完了っ!

えーと、ここは……あんまり使われてない準備室、ね。ちょうど良かったわ。

勝手に出てこれないように、ドアの外側からつっかい棒をして、と。

「えっ!?ちょっ……アリシア!?」

「どういうつもりだ、てめえ!?」

いーから。

あなたたち、そこで二人きりでお互いに納得するまで存分に話し合ってください。

解決するまでは出さないから、そのつもりでね!

「えええええっ…」

「ふざけんな!?」

ええ、ふざけてません。

大真面目です。

ガチです。

マジ気です。

少なくともゴーシュくんを泣かせちゃった責任は取ってください、カルロス先輩。

あとクラブにもちゃんと出てくださいよ。

私、マジックシューターのいちファンとして、二人の超強力コンビプレイとか見てみたいんで。

「アリシアっ…!?」

「………」

じゃっ、そーゆーことで!

その場で待ってるのも無粋だと思い、私はしばらくそのへんで時間を潰してくることにした。




ああ、そういや思い出した。

前世の乙女ゲーで、コアなファンがついてたゴーシュくんだけど。

あれって専ら腐女子人気だったわ…

リアリストかつ腐女子の友達もやたらと力説してたっけ。

「相容れないからこそ惹かれ合う!絶対にゴーシュたんはカルロス先輩とできてるって!」

乙女ゲーを穢すんじゃねえええ!?って、ホモ滅殺拳で対抗していた私。

…よかったわね、前世の友よ。

あんたの吐いてた妄言、どうやら現実になったみたいよ。

さすがリアリストの目は確かだったってことかしら…

ははは…(泣き笑い)




十分に時間を潰したなって頃合いを見計らって、私は準備室へと取って返した。

中は、シーンと静まり返っている。

なんとなくゴクリと固唾を呑んで、ドアをコンコンとノックしてみた。

二人ともー、元気ですかー?

ちゃんと話し合えましたかー?

「あっ…アリシア!?」

「………」

んん…?

なんか、急にドタバタと慌ただしい物音が?

ゴソゴソという衣擦れの音も?

んんん…!?

ねえ、もう開けるけど。

大丈夫?

「ちょ、ちょっとだけ…待って…!」

ハイ。

さっきからゴーシュくんの声ばっかりで、カルロス先輩の発言がない。

どういう状況だろ…?

…開けるわよ?

開けた。

二人揃って出てきた。

けど、なんか…

カルロス先輩は妙に気だるげな色気を漂わせてるし…

ゴーシュくんはそんなカルロス先輩の片腕に縋り付くようにして掴まって、生まれたての仔馬のよーに足をプルプルさせてるし…顔は真っ赤だし…!

二人とも頭髪とか衣服とかに若干の乱れがあるし…!?

………。

…色々と察したわ。

あの、ねえ…?

私、話し合ってね、とは言いました。

けど、そこまで一気にことを押し進めろとは一言も言ってないんですけどぉぉぉぉぉぁ!?

おのれカルロス先輩!

可愛いゴーシュくんになんてことを!

可愛いからか!そうか!

じゃあしょうがないわね…って、なるわけないでしょー!?

「待ってアリシア!怒らないで!」

ああっ、ゴーシュくんが庇うようにカルロス先輩の前に出て!?

先輩の腕に掴まったままだから、いまいち決まってないけれど!

「その、俺が………お願いしたんだ」

はぁ!?

ゴーシュくんから!?

冗談にしてもキツすぎるわ!

そんなの絶対ありえないでしょ!

「本当だよ!その………なんでもするから、クラブに出て欲しいって………頼んだ」

なんでも。

「う、うん…」

「クラブには出てやる。それでいいんだろ?」

ここでやっと、カルロス先輩からの発言が。

へえー。

そっか。

なるほどー。

では、判決を下します。

有罪!

ギルティ!

ゴーシュくんの純情に付け込んで、なんつーゲスいことしてくれてんのよこの男ーーー!!!

こうなったら山田家秘伝・ホモ滅殺最終奥義を出すしか…!

私は拳を固めて半身に構え、鋭くカルロス先輩を睨みつけた。

ゲス男には手加減も遠慮も無用!

そう思って、容赦なく必殺拳を繰り出すつもりだった。

…だけど。

気付いちゃった。

一見、ぶっきらぼうで素っ気なくて、酷い態度のカルロス先輩だけど。

ゴーシュくんを見遣る目つきだけ、とても穏やかで優しくて…

いやもうはっきりと甘々だわ!ゲロ甘だわ!

明らかに愛しくてたまらない、って感情がダダ漏れなんですけどー!?

…ああ、でも、よく考えたら乙女ゲーでもそうだった。

カルロス先輩って色々あって捻くれてて素直じゃないけど、実は結構情の深いタイプなのよね…

一度懐に入れて心を許した相手にはとことん優しくて甘くなるっつー。

………。

私はひとつ深呼吸して気持ちを落ち着け、ゆっくりと構えを解いた。

ゴーシュくんがホッと安堵の息をついている。

カルロス先輩は……見た目上、反応なしだけど。

ねえ、先輩。

ひとつだけ、確認させてください。

ちゃんと責任取るんですよね…?

「…当たり前だろ」

そう。

「んな覚悟もなしに、騎士団長の一人息子に手を出すかよ」

「カルロス…!」

…なら、いいです。

私から言うことは何もありません。

あ、いや。

ひとつだけ。

…お幸せにね、二人とも!




私は、チックショー!という気持ちを押し殺して、二人の前から立ち去った。




その後。

カルロス先輩の復帰した我が王立学院のマジックシュータークラブは、他校との試合で連勝記録を打ち立てて、歴史に残る快進撃を繰り広げることとなる。

私は、その歴史を見届けた。

いちファンとして、試合観戦に赴いてね。

劇的なその勝利の数々もさることながら、試合終了後にいつも満面の笑顔でカルロス先輩に抱きついているゴーシュくんの姿がとても印象的で。

隠れてちょっと泣いたのは秘密だ。

…いいのよ!

女は流した涙の数だけ、強く美しくなるんだからっ!

私もあの二人に負けないくらい、素敵な相手を見つけて今度こそトゥルーエンドに辿り着いてやるーッッ!!




あ、それはそれとしてマジックシュータークラブの応援は続けるわ。

だって楽しいもん、スポーツ観戦。


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