第5話
鎖国と独裁。その鉄の規律がもたらしたのは、外の世界の戦火や流行に一切左右されない、残酷なほどに美しい「結晶化された繁栄」だった。
街の風景は中世のまま、時が止まったかのように変わらない。しかし、そこには飢えも貧困も存在しなかった。
私が一人で物流を管理し、一人で夜を徹して不純分子を排除し続けているからだ。
「ルナ陛下、万歳!」
「私たちの美しき守護聖人様!」
街を歩けば、かつてより遥かに増えた民衆が、心からの笑顔で私に花を投げる。
自給自足の成功により、倉庫には黄金色の麦が溢れ、広場では子供たちが丸々と太った頬を赤らめて走り回っている。彼らにとって、この国を囲む高い壁の向こうは「存在しない世界」であり、この狭い箱庭こそが宇宙のすべてなのだ。
民衆は、私の軍服がどれほど継ぎ接ぎだらけで、その下が傷だらけであることを知っている。
彼らにとって、その「ボロボロの姿」は恐怖ではなく、自分たちの平和のために身を粉にして働く「自己犠牲の象徴」として映っていた。
> 「外の世界は地獄なのよ。私だけが、あなたたちを愛し、守ってあげられる」
喫茶店のテラス席で、私は集まった民衆にそう語りかける。
人々はうっとりと、私の言葉に聞き入る。彼らは外の世界に興味を持たない。私という完璧な「正解」が目の前にいるからだ。
外の技術も、思想も、病も。すべては私が国境で、文字通りこの身を盾にして食い止めている。
人口が増え、街が活気づくほど、私の「酷使」は激しさを増す。
増えた民の分だけ、夜警の距離は伸び、裁くべき書類は積み上がる。
しかし、両親を跪かせた時のような冷たい快感とは別に、新しい感覚が胸を焼く。
それは、「自分なしでは生きていけない者たち」を飼い慣らす全能感。
「陛下、どうかこれをお召し上がりください。私たちの農場で採れた、一番良い果実です」
ひれ伏す少女から林檎を受け取り、一口かじる。
私の労働と引き換えに実った、この世で最も甘い蜜の味。
支配されることに喜びを感じる民と、支配するために己を削る私。
外の世界を知らぬ彼らにとって、私は唯一無二の神であり、私はその信仰を維持するために、今日もボロボロの軍靴を鳴らして、愛する箱庭を徘徊する。
「ずっと、このままでいましょうね。ここには、私とあなたたち以外、何もいらないのだから」
平和で、豊かで、血の匂いがする。
私の作り上げた「永遠」が、今日も美しく完成していく。




