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第4話

中世の堅牢な石造りの王城。かつて私が「おままごと」をしていた子供部屋は、今や冷徹な独裁者の執務室へと姿を変えていた。

窓の外には、私の恐怖政治と引き換えに、飢えから解放され、平穏を享受する従順な民たちの活気ある声が響いている。


「いい子たち。私に従っている限り、あなたたちは安全よ」


私は満足げに目を細め、最後の一口のコーヒーを飲み干した。そして、この部屋の隅、影の中に控える「二人の老いた男女」へ視線を向ける。


そこにいたのは、かつてこの国の王と王妃であり、私を「可愛いルナちゃん」と呼び、子供扱いしていた両親だった。

今の彼らに王冠はない。身に纏っているのは、一兵卒よりも粗末な従者の服だ。


「……陛下、お飲み物のおかわりは、いかがでしょうか」


父が、震える声で私を「陛下」と呼ぶ。

その屈辱に染まった表情。かつて私に「おやすみのキス」を強いた威厳ある王の面影はどこにもない。


「あら、お父様。そんなに震えて、ティーカップを落としそうよ? 私がこの国を制圧した時、私に向かって『子供の悪戯はやめなさい』なんて言った時の勇気はどこへ行ったのかしら」


私はわざと、磨き上げられた軍靴を父の目の前に差し出した。


私は、自分より上の存在を認めない。たとえそれが血の繋がった親であっても、私を「庇護すべき弱者」として扱った罪は、服従でしか贖えない。


「お母様も、そんなところで黙っていないで。私の軍服の汚れを落としなさい。昨夜、国境で野盗を一人で皆殺しにした時の返り血がついているの」


母は青ざめた顔で跪き、私の膝元で布を動かし始める。

かつて私にマナーを叩き込み、優雅に振る舞うよう強いた母が、今や私の足元で泥を拭っている。


その光景を見下ろしていると、背筋にゾクゾクとするような、熱く歪んだ快感が走り抜ける。


(ああ……。なんて気分がいいのかしら。私を閉じ込めていた『親』という名の壁が、今や私の足元を飾る絨毯に成り下がっている)


「ねえ、お父様、お母様。あなたたちが守れなかったこの国を、私はたった一人で、ボロボロになりながら守り抜いているわ。自給自足で、誰にも邪魔させず、完璧な中立を保って」


私は二人の顎を交互に指先で掬い上げ、至近距離で冷たく微笑んだ。


「あなたたちの役目は、死ぬまで私の『凄さ』を一番近くで崇め続けること。私を子供扱いした罰として、永遠に私の偉大さに怯えなさい」


彼らの瞳に宿る絶望と、隠しきれない畏怖。

それこそが、私の乾いた魂を潤す最高の贅沢だった。


私は再び、窓の外の平和な街並みに目を向けた。

愛すべき従順な羊たちと、足元に転がしたかつての飼い主。

最強の独裁者ルナの物語は、この歪んだ完璧な調和の中で、どこまでも深く、残酷に刻まれていく。

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