第2話
中世。周囲の強国が領土拡大の野心に燃え、絶えず戦火を上げている時代。
私は、武力で制圧したこの国を「永世中立国」と宣言し、同時にすべての国境を封鎖した。
「外の世界なんて、奪い合いと汚れに満ちているわ。この国は、私という神が統治する、清らかな箱庭になるの」
独裁者としての私の仕事は、もはや戦闘だけではない。
今日から、この国は鎖国し、完全な自給自足へと舵を切る。
「護衛も役人も不要。私がすべてを決める」という宣言通り、私は一人で領土を駆け巡る。
朝は荒れ地を耕す開拓の最前線に立ち、自らクワを振るって土を掘り返す。
「陛下、どうかお休みに……!」と涙ぐむ農民たちを、「黙って見てなさい。この土のひと粒まで、私の支配下にあるのだから」と一蹴する。
昼には、法を無視して私腹を肥やそうとする旧貴族の隠れ家を単身で襲撃し、彼らを労働力として農場へ叩き込む。
私の身体は、華やかな王城ではなく、常に泥と汗、そして酷使による筋肉の痙攣と共にあった。
鎖国から数ヶ月。
輸入に頼っていた贅沢品は消え、食卓には私が自ら検品し、分配を決めた麦と野菜が並ぶ。
私は、国中の用水路の清掃から、国境の石壁の積み上げまで、すべてを監視し、時には自ら石を運ぶ。
肩は重い石で痣だらけになり、かつての白く柔らかな手は、マメが潰れ、硬くひび割れている。
軍服はボロボロで、もはや継ぎ接ぎだらけ。
それでも、私は満足だった。
> 「見て。この国には、私以外の意志は存在しない。この一粒の麦も、この一枚のレンガも、私の苦痛が生み出した結晶なのよ」
極限まで体を追い込み、意識が朦朧とする中で見る夕焼けは、どの宝石よりも美しく輝いていた。
周辺諸国は、この不気味な沈黙を保つ小国を「狂った姫の国」と呼び、手出しを控えるようになった。
あるいは、たった一人で軍を壊滅させる私の「噂」に怯えているのかもしれない。
私は、城のバルコニーから、黄金色に染まる田畑を見下ろす。
もう歩くことさえままならないほど足は浮腫み、全身が火を吹くように熱い。
けれど、私の「支配」という夢は、この自給自足の循環の中で完成された。
「誰の助けも借りない。誰にも依存しない。私は、この国そのものになるの」
私は、血を吐くような咳を一つして、それでも満足げに微笑んだ。
最強の独裁者。
それは、自らの命を薪にして、一国という名の炎を燃やし続ける、孤独で気高い生贄の別名だった。




