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本日も学園生活を満喫します  作者: 室町五丁目
2時間目

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9/35

地獄の練習開始

 井上に見初められた俺は、放課後に居残り練習をさせられた。


 大会は来週の土曜日に行われる。本日が月曜なので13日後である。

 多少なりとも経験があるなら話は別だが、バスケの素人が今更練習しても、13日では基本の「き」すら覚えられないだろう。長い年月と日々の努力があってこそのスポーツだ。逆に強制練習の無理がたたり、本番当日に高熱を出して終わりな気がする。一夜漬けで何とかなるほど単純ではない。

 それは井上が一番良く知っているはずだ。しかし、彼女の頭には優勝の二文字しかなかった。


「三次。飛んでみろ」

「はい?」

「いいから飛べ」

「この場で?」

「と・べ!」

「……」


 その場でピョンピョン飛んだ。


「次はターンだ」

「……回るの?」

「そうだ」

「手ぶらで?」

「グダグダ言わずにやれ!」

「……」


 手ぶらでクルクル回った。


「次は反復横跳びだ」

「それに何の意味が?」

「いちいち口答えをするんじゃない!」


 奥歯が取れるかと思うくらいの激烈パンチを喰らった。


 何も持たず、その場で飛び跳ねながら左右に移動して回転する。不平不満を言うと、グーパンチが飛んでくる。熱血指導で基本を教えてくれていると思うが、彼女の指示に従って行動する姿は、猿回しのサルを彷彿とさせる。サル顔の俺がやったら本物である。

 罵倒され、辱めを受け、精神的屈辱が限界に達した後、本格的な練習がスタートする。

 ボールの扱い方に始まり、パス、ドリブル、ガード方法など。少しでも反抗的な態度を取るとボールをぶつけられる。「疲れた」と言うとケツキックを受ける。

 体育館に俺の名前と罵声が響き渡り、それを見た部活連中にクスクス笑われた。


 本気で迷惑過ぎる。皆は大会をお遊びと割り切り、楽しみながら練習している。それが本来の主旨だ。スポーツを経て他クラスと交流を深めるのが目的。勝ち負けは副産物である。

 井上はハナから交流するつもりなどない。勝ち負けが全てを支配すると思っている。この時点で方向性を見失っている。

 その事を切に訴えても、バスケバカには届かなかった。


「コラッ三次。よそ見するなぁ!」


 近くで練習中の新体操部に目線を向けた途端、変則的に飛んできたパスが床にバウンドしてボールが俺のボールに。


「うぐぅぅ」

「そのくらい何だ! お前は男だろ」

「お、男だからイテェーんだよ」

「バスケは戦いだ。我慢しろ」

「我慢出来る痛さじゃねぇーんだよ」

「情けない……」

「お前も一度味わってみ。鈍痛がキツイから」

「私に玉などないわ!」


 ボールをバシバシぶつけられた。それを見てさらに大きくなる笑い声。一生懸命に練習して笑われるなんて……。

 一刻も早く家へ帰って冷やしたかったが、熱い魂を持つ女に、熱くなった玉氏の叫びは伝わらなかった。

 時間が経つにつれ、集中力が増して情熱が溢れ出してくる。


「そこでシュートだぁぁ」

「うげっ。ちょ、ちょっと……」

「何やってるんだ、貴様ぁぁ」

「肘が玉に……」

「だから言っただろ。バスケは戦いだって」

「玉を狙うのは反則だろうが!」

「女に玉はないから大丈夫だ」

「そういう問題じゃねぇー」


 本日二度目の鈍痛を喰らって悶絶する俺。

 全国大会で優勝を味わった井上にしてみたら、協力して何かを成し遂げる素晴らしさを知って欲しいと思っているのだろう。その経験は自分の宝になる。気持ちは痛いほど分かるが、今の俺は玉が痛い。

 その後もディフェンダーのかわし方や、シュート態勢に入る前のテクニック論を叩き込まれた。

 もはや体が悲鳴を上げ、心が折れ、涙が溢れた。何時間もの荒行に耐え抜き、酸欠で脳に栄養がいかなくなった頃。


「よし。そろそろ実践経験だな」

「実践?」

「大事なのは試合感覚をつかむ事だ」

「試合感覚って、メンバーが誰もいないのだが」

「修平、省吾。こっちへ来い」


 隣のコートでチンラタ練習している2人を呼び出した。

 一体何が始まるのか。体育館がザワつき、部活連中が手を止めて俺らを凝視した。


「1つでも多く試合を重ねれば経験値になる」

「それはいいが、友則がいねぇぞ」

「あいつは居ても居なくても一緒だ」

「それに人数が足りねぇよ」

「あんたのチームには私が入る」

「で、対戦相手は?」

「相手は優勝を誇る女子最強のレギュラーメンバーだ」

「なっ……」


 何という暴君。地獄の女子バスケ部と恐れられ、肝っ玉の据わった鬼のような連中と練習試合をする。女子と言えども侮れない。最強バスケ部を名乗る通り、身長170センチ以上の巨漢がゴロゴロいる。先ほどから腕が鳴るぜとばかりにウォーミングアップをしている。特にディフェンダーは、首や手足をグルグルと回し、俺らを破壊する気まんまんの様子だった。


「おい修平。どうするよ」

「こうなりゃ、やるしかないだろう」

「奴に言っても意見は通らねぇだろうしな」

「覚悟を決めた方がいいぜ、三次」

「覚悟?」

「あいつらは鬼畜だからな」

「ヤバイのか?」

「自分の名前忘れるぞ」

「……」


 修平も省吾も毎日のように練習風景を見ている。男子バスケ部だけではない。他の部活連中でさえ呆れるほどの練習量らしい。

 これから始まる地獄の舞踏会に生唾を飲むギャラリー。


「どうした。やるのかやらないのか」

「ち、ちょっと待て」

「貴様ら、それでも男か!」


 何度も言うがバスケは肉弾戦。ドリブルをした瞬間に近寄ってきて肌が触れ合う。ボールを奪い合った時に当たる柔らかい膨らみ……。

 健全な男子として一言。これは頑張ったご褒美なのかい?


「おっしゃ。やってやんよ」

「後悔するなよ」

「お前らに男の実力を見せてやるぜ」

「女子バスケ部、なめんなよ」


 エロ根性満載で男女対抗戦に挑んだ。





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