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本日も学園生活を満喫します  作者: 室町五丁目
1時間目

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我らが秘密基地へ

 校外へ出れば俺らの天下である。薄らバカ3人で商店街を練り歩き、土手を降りて河原の上流にある秘密基地へと向かった。


 俺の住む貝東市は地方の田舎で、山と畑、田んぼが広がる牧歌的なところだ。

 貝東地区というだけあって東側が海に面しており、チャリで20分も走れば憧れのビーチに到着する。漁港周辺では貝類の養殖が盛んに行われている。町の名前はそこから付けられたらしい。

 海の幸と山の幸が楽しめて便利ではあるが、如何せんド田舎である。

 余談だが、田舎町の特徴として横断歩道を渡る際、気を付けないと車が突っ込んで来る。という風習がある。

 地方は車移動が絶対のため、道を歩く人は滅多にいない。たまに歩いている人を見かけると「奇特な人」と任命される。そのため横断歩道で停止する習慣がない。そもそも役割を知らないんじゃないかと思う。

 都会では人が当たり前の顔で渡る。田舎町では、止まってくれた車に頭を下げて急いで渡る。人より車の方が偉い。

 地方へ遊びに来る際は覚えておいてね。


 余談が過ぎたので話を戻そう。



 ド田舎と言っても何もない訳じゃない。

 近年は駅前開発が盛んに行われ、駅直結の大型ショッピングモールが作られた。衣料、食品、生活雑貨などが一通り揃っていて、ホームセンターまで併設されている。ここへ行けば生活の全てが賄える規模だった。

 土地が腐るほどある田舎のモールは規模が違う。駐車場で車を見つけられず迷子になり、店内に入って再び迷子になる。土日に行こうものなら、他県や近隣市町村から怖ろしい数のヒマ人が寄せ集まり、人生の迷子になるほどである。

 地元民は「休日は近寄るな」を合言葉に暮らしている。


 目を見張るほどの勢いで再開発が進められ、昔ながらの風景は様変わりしたが、未だに昭和が根強く残る場所もある。

 駅前大通りを真っ直ぐ歩いて行くと、玉川という河川敷に突き当たる。隣町へと続く大きな橋が掛かっており、そのわき道に古びたアーケード商店街がある。

 その名も銀座玉川商店街。八百屋、肉屋、衣料品から雑貨まで生活に欠かせない店が軒を連ねている。今時には珍しいアダルト映画館まである。

 学校と自宅の中間にあり、アーケードなので雨の日などは便利ではあるが、いかんせん古い。経営者の殆どがじーさん、ばーさん。訪れる客も年寄りが多い。昭和のまま令和を突っ走っている感じだ。

 入口の看板が老朽化のため銀の横文字が朽ちて無くなり金座になっている。俺らは金玉商店街と呼んでいる。

 この商店街を抜け、玉川を上流へと向かうと俺らの秘密基地がある。

 最初に見つけたのは克己だった。



「おい三次、面白い場所を見つけたぞ」


 川に沿って手つかずの森をかき分けること数分。鬱蒼とした木々に囲まれてポッカリと開いた空間が出現した。心地よい広さといい、人里離れている場所といい、まるで異世界に入り込んだ感覚だった。


「お前、よく見つけたな」

「河原でエロ本探しをしてらた偶然に」

「エロ本探しって……」

「よく落ちてるだろ」

「……見た事ねぇよ」


 克己の言う通り、そこは秘密基地には最適だった。誰も人が入って来ず、商店街もほど近い。腹が減ったり喉が渇いたりした時は便利である。学校と自宅の中間地点で休憩場所にも好都合だった。本宅へ帰る前の別宅。そんなイメージである。


「お手柄じゃねぇか」

「だろ?」

「よし。ここに小屋を建てるか」

「作れるのか?」

「余裕だぜ」


 ここを第二の故郷にすれば、自由気ままな暮らしが約束される。

 心地よさを追及するべく作業に取り掛かった。


 俺は昔から手先が器用だった。特にカッターワークが得意で、木材の匠と呼ばれている。授業中に鉛筆を削ってご神体を製作。それを女子の筆箱にソッと忍ばせ、何人もの子が歓喜の悲鳴を上げた。

 夏休みの自由課題でチンコ型木刀を製作したこともある。完璧な仕上がりに自信を持って提出したが、受け入れを拒否されたのは言うまでもない。

 克己も同様に手先が器用だ。フィギュア制作を得意としており、美少女からロボットまで何でもこなせる。特にアニキャラ系に特化していて、その出来栄えはなかなかの腕前である。

 俺らは器用さを生かして小屋を製作した。制作といっても木材を組み上げただけの簡易な代物だが、自分たち専用の拠点は嬉しさ倍増である。


「おい克己。屋根はどうする?」

「アクリル板で仕上げるか」

「波板の方が安いだろ」

「入口のドアはRX‐78‐2っぽくするか」

「そんなん作れねぇよ」

「絵を描くだけだ」

「なるほど」


 俺らが慌ただしく活動している最中、友則は鼻クソを丸めてボーっとしていた。こいつは手先が怖ろしく不器用だった。

 一緒にプラモを作ったら数分で「イィーッ」と叫んで破壊し、彫刻刀を持たせると板よりも指を削る。頭にきて板を手刀で叩き割る。指が丸太みたいなので細かい作業は不向きだろう。

 破壊する以外、建設的な事は何一つ出来ない彼にはチェーンソーを持たせた。


「おい友則。これで伐採してくれ」

「適当でいいのか?」

「好きにやってくれ」

「分かった」


 友則が伐採した木材を克己が加工し、俺がインパクトとビスで組み上げていく。身体能力がサル並みに発達している俺は、足場が無くても頂点まで楽勝である。

 土台作りから始まり、躯体を組み上げ、波板の屋根を張り巡らせて三人が寝られるくらいの秘密小屋を完成させた。

 我ながらいい出来だ。と自画自賛していると、伐採作業を終えた友則が丸太を担いで戻って来た。


「もういいか?」

「ああ、このくらいで十分だ」

「なかなか骨の折れる作業だったぜ」

「ご苦労だった……なっ!?」


 辺りを見渡すと、木々がことごとく伐採されて森の形が変わっていた。


「……やり過ぎだぞ、お前」

「お前がやれって言ったんだろう」

「広さが倍になってんぞ」

「知らねぇよ。気付いたらこうなってたんだよ」

「限度ってモンがあんだろう」

「好きにやれって言ったのはテメェじゃねぇか!」

「ここまでやれとは言ってねぇだろうが!」

「ふ、ふざけんなぁぁー」


 だから。いちいち脱ぐんじゃねぇよ。

 痒いのか。初めての衣服が肌に擦れて痒いのかっ!






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