完全勝利のその後は
寒川ファンクラブVSエロモンスター克己
小池親衛隊VS脳筋クレイジー友則
両者の熱き戦いの火蓋が切られた。
長く険しい道のりが続くと思っていたが、勝敗はあっけなく決まった。
結論から先に言うと、我が軍の完全勝利であった。
相手はコソコソと卑怯な手口を使う輩たち。こちらは正々堂々と卑怯を売りにするバカ者たち。一日の長ではないが、日頃から狂った行動しかしていない俺らに敵うはずはなかろう。
克己に今までの経緯を説明し、いいアイデアを募ると。
「そんなん簡単じゃねぇか」
「もう思いついたのか?」
「そいつらを黙れせりゃいい訳だろ」
「で、その方法とは?」
「俺に任せておけよ」
PCでサクッと加工画像を作成。それを校内の至る所に張り付けた。これが驚くほど精巧で作り物とは思えないリアルさだった。貼り付け前に見せて貰ったが、結合部分がまったく見当たらなかった。
コラ画像に群がった男子諸君は何の疑いもなく、みな腰を引き気味に歩いていた。張り紙を盗んでいく者や、追加発注をかける者までいた。克己は上機嫌で新たな画像を作成し、欲する者たちへ配っていた。
結果、寒川ファンクラブのファンクラブが新たに設立され、克己がリーダーに任命された。
「今回はマジで感謝するぜ」
「楽勝だ」
「よくこんなバカな事を思いつたな」
「要は、噂より過激ならそっちに食いつくのは道理だからな」
「なるほどな」
さすがエロに関しては研究し尽くしているだけの事はある。この技術を他に生かせば出世すると思うが、そうしない所が親友たる所以である。
その頃、関取はというと。
「ねえ友則」
「何だ」
「最近、しょこたんがイジメられてるらしいよ」
「誰にだ」
「小池親衛隊って奴ら」
「親衛隊? 何だそりゃ」
「淫乱ビッチな変態娘って噂が……」
「ほう。あの小池がそんな娘に仕上がったのか」
「傍にいる男が底辺系だって」
「三次の事だな」
「いや、あんただよ」
「な、なんだとぉぉ~」
「そいつら、友則は虫以下のカスって言ってたわね」
「俺を三次みたいな鬼畜と一緒にすんな!」
「文句があるなら、いつでもかかって来いってさ」
「よし。案内せい」
親衛隊の元へ辿り着いた友則は、
「貴様ら。全滅じゃぁぁぁーー」
そう叫び、上着を脱ぎ捨てた。
イキがった連中が束になって向って行ったが、リンゴを握りつぶし、ダイレクトにリンゴジュースを飲む輩である。
動物以下の彼には言い訳も懇願も届かない。唐突に現れた脳筋ゴリラと関取の夢のタッグマッチに成す術もなく、訳の分からないまま壊滅させられた。
今後、小池親衛隊を名乗る者が現れた場合、小池医院が引き受けてくれる手筈になった。愛する人の元で長期滞在。彼らも喜んでいる事だろう。
そして俺ことバーサーカー三次は、職員室で正座させられていた。
「お前、何て事をしてくれたんだ」
「すいません」
「学校中がパニックになったんだぞ」
「誠にすいません」
「何であんな事をしたんだ」
「小池や寒川を守るためです」
「だからって、やっていい事と悪い事があるだろう」
「本当にすいません」
「まったく!」
「全て俺の指示です。彼らは操り人形です」
「誰がやっても同じだ」
「俺が全責任を負いますから、彼らは勘弁して下さい」
「どうやって責任を取るつもりだ!」
「……」
その言葉に一瞬とまどった。中学生に停学はない。退学もない。義務教育である以上、責任の全ては親にある。親を呼んでも構わないが、俺以上に狂った親父である。息子をボコボコに殴った挙句、担任に向って、
「先生。今からこの子を谷底へ突き落とします。きっと野性味溢れる子になるでしょう」
真顔でそうのたまうだろう。
一人前な事を言ってもまだまだ子供。全ての権限は大人の手中にある。
「本当に責任を取るんだな?」
「はい」
「俺の言う事は何でも聞くんだな?」
「はい。何でもします」
「分かった。じゃあ、来週のテストで100点を取れ」
「なっ……」
「寒川と小池に伝えておく」
「……」
「お前は男だろ。約束は守れるよな?」
「……はい」
さすがは曲者揃いの3組を率いる大谷先生である。俺の最も弱い部分を的確に突いて来た。
男同士の約束。それは、守らなければいけない必須科目である。
それからの一週間は、まさに地獄だった。
「なあ寒川。もう勘弁してくれよ」
「ダメだ。男同士の約束だろ」
「もう脳が混乱してるんだよぉ~」
「泣き言を言っても許さねぇからな」
「なんだよ、このシスコンがっ!」
定規で首筋をビシッと叩かれた。
「小池。助けてくれよぉ~」
「あら。分からない所は手助けしてるでしょ」
「お前らの為にした事なんだぞ」
「それは感謝するわ」
「じゃあ、許してくれるのか?」
「それとこれとは別!」
「ふざけんな。この淫乱ビッチがっ!」
「今度は私たちが三次を助ける番よ」
「そんな助けはいらねぇんだよ」
「いい? 必ず100点取りなさいね」
ボールペンで額に100と書かれた。それを見て心の底から楽しそうに笑う寒川&小池。彼らの笑顔に報いたい所だが、人間には向き不向きというものがある。
お前らがどれだけ頑張ってもダンクシュートが出来ないのと一緒で、俺がいくら努力しても学習は身に付かない。その前に日本語すら危ういのだ。
「100点取らなかったら、ずっと続けるからな」
「そうよ。永遠よ」
「……」
もうダメだ。本気で止めてくれ。
これ以上追い詰められたら、本物のバカになっちゃうきゃらぁぁぁ。




