↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本日も学校へ逝きます  作者: 室町五丁目
6時間目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/40

毒々しい女の登場

 調子に乗せられ、余計な手間をかけることになった。校内中に広まった噂をかき消す方法。それは皆無だと思われる。

 噂の出所も不明で肉弾戦には持ち込めない。得意のムーンサルト・プレスは封印されている状態だ。

 友人のツテを辿って聞き回ったが、最初に声を掛けた奴がバカだったため、どこまで行ってもイカレた連中としか出会えなかった。バカの連鎖は怖い。


 これといったアイデアもなく、悪戯に時間が過ぎて行くだけ。解決方法は見当たらなかった。早急に対策を講じなければ、妹はもちろん、寒川や小池まで不登校になってしまうだろう。

 ここで諦める訳にはいかない。俺は神に選ばれし漢。愛と平和のために日夜戦い続けるサンジーである。

 足りない頭をフル回転させて一つの結論に辿り着いた。


『毒を持って毒を制す』


 我がクラスに千葉奈美という女がいる。おしゃべりで口うるさく、何かにつけて苦言を呈してくる厄介な奴だった。俺らがバカな事をするたび担任にチクリを入れ、そのお陰で何度となく苦汁をなめてきた。

 胸はなかなかのボリュームでイケてるのだが、性格が男勝りだった。どっしりとした安定感のある身体で力も半端なく、加えて暴力的である。


 友則が彼女のスカートをめくった際「何するのよ!」と叫び、振り向き様に裏拳を喰らわせた。それを見た克己が反撃の狼煙を上げて後ろから抱きついたが、みぞおちに肘打ちを喰らい、ベルトを掴まれて上手投げで転がされた。


 安定した下半身と、ふくよかなガタイから繰り出される攻撃は横綱級で、クラスの男子から陰で「関取」と呼ばれている。

 本人はそのアダ名が気に入らないらしく、目の前で言おうものなら、がっぷり四つからの外掛けで転がされる。からかった友人が合掌捻りで潰された時には恐れをなした。

 ちなみに、俺はジェントルマンなので、そういう下品な行為はしたことがない。


 彼女の主な特徴として、耳年増が挙げられる。

 他人の噂が大好物で、聞くのも流すのも大好き。校内のありとあらゆる情報に精通している。


「千葉奈美。ちょっと聞きたい事があるんだが」

「近寄らないでよ。バカ菌が飛び散るでしょ」

「……」


 喋り出しからこんなに気を遣う女は初めてである。

 下手にご機嫌を損ねると「三次は下半身から膿を出している」などと根も葉もない噂をばら撒かれる。そうなったら、俺が登校拒否に陥る。

 ここは一旦冷静になり、彼女が食いつきそうなネタから話すのが良かろう。


「おい、千葉奈美」

「何よ!」

「例の件、知ってるか?」

「ん?」


 耳がピクッと反応し、みだらな顔つきになった。


 俺は寒川から聞いた一部始終を説明し、それによって寒川と小池が被害を被っている旨を伝えた。

 奈美様ほどの知性と洞察力があれば、噂の出所など一瞬で割り出せるに違いない。しかも仲間思いで正義感の強い奈美様だ。困っている2人を見捨てるはずがない。

 さらには巧みな情報操作で相手を翻弄し、二人にまつわる悪評を吹き飛ばしてしまうことだって可能だろう。

 可愛い。賢い。頼りになる。三拍子そろった奈美様は、まさしくみんなの憧れの的である。

 という感じで言ってみた。


「三次。あんたもなかなか分かってるわね」

「どうだ。協力してくれるか」

「誠君としょこたんの為だもの。喜んで協力するわ」

「面倒くさい事を頼んで悪いな」

「水臭い。友達でしょ」


 こういう奴を単純明快という。


「それにしても腹が立つわね。そいつら」

「俺じゃ探しきれなくてな」

「任せておきなさい。名誉にかけて探し出すから」

「頼むな」

「捕まえたらどう処理する?」

「延髄蹴りであの世へ送ってやんよ」

「その時は私も呼んで。自慢のタックルで骨ごとバラバラにしてやるから」

「……よ、よろしく」


 これで解決の糸口が見えて来た。関取の情報は怖ろしいほど広く正確だ。何故かはしらんが、彼女の元には様々な情報が集まる。

 誰と誰が付き合ってるとか。屋上に上がる階段の踊り場は愛の巣窟だとか。何組の誰々ちゃんは既に経験済みだとか。人生で最も役に立たない情報を掌握している。


 耳年増だけでも厄介なのに、加えて暴力的だからタチが悪い。

 以前、授業中に突然非常ベルが鳴り、パニックになったことがある。消防車が駆けつけて現場検証をした所、単なるイタズラだと分かり安堵した。しかし、学校側としては放って置く訳にもいかない。再犯を防ぐため、各クラスに犯人の有力情報を求めた。


 それから二日後、関取があっけなく犯人を捕まえた。やったのは三年生のバカ共だった。


 彼女のお手柄で無事御用となり、めでたし、めでたし。のはずだったが……。

 何故か非常階段に投げ捨てられ、変わり果てた姿で発見された。

 その事を問いただすと、関取は満足げな顔で語った。


「あいつら以前から「非常ベルを押したらどうなるか」って話をしてたみたいなのよ」

「ふ~ん」

「鳴った瞬間に犯人を特定したわ」

「で?」

「脳みそ足りない連中でしょ。また必ずやるとふんだのよ」

「……で?」

「隠れて見てたら、案の定ね」


 再び非常ベルを押そうとした瞬間、得意のぶつかり稽古で奴らをまとめて吹き飛ばした。そのまま転がしておくのも気が引ける。廊下を通る者の邪魔にならないよう、つっぱりを連打して非常階段の踊り場へ投げ捨てた。

 連中が気絶していることを確認した後、先生への報告に向かった。

 聞いた話では、何人かは肋骨を折って救急車で運ばれたらしい。


「スゲェーな、お前」

「まったくハタ迷惑な奴らね」

「ホントだな」

「消防車じゃなく救急車を呼んだわね。ウフッ!」

「……」


 話を聞いた全員が「今こそ非常ベルを押す時」と思ったのは言うまでもない。


 そんな彼女が本気を出したら……。

 果たして、どうなることやら。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。