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本日も学園生活を満喫します  作者: 室町五丁目
5時間目

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29/34

調子に乗るんじゃねぇ

 次の日。


 克己から入手したDVDを大切に抱え、興奮状態で急かす友則。


「おい三次。早くしろよ」

「ちょっと待て」

「もう3分以上経ってんだぞ」

「もう少しだ」

「うどんでも茹でてんのか?」

「いま佳境に入った所だ」

「どんだけクソしてんだよ」

「いちいち便所まで付いてくんな!」


 早く観たい気持ちは分かるが、便所まで付いてくる事はなかろうに。

 出すモノを全部出し、身軽になって学校を後にした。


「おせーんだよ。新鮮味が無くなるだろうが」

「新鮮味って何だよ」

「熱く煮えたぎってんだよ!」

「そんなに興奮するんじゃねぇよ」

「これが興奮せずにいられるか」

「何を貰ったんだよ」

「これだ!」


 題名は「隣のママは40代」であった。

 お前がマザコンじゃねぇか。とツッコミを入れたかったが、人の趣味にとやかく言うのはお門違いである。みなそれぞれに性癖を持っており、俺に「なぜ巨乳好きなのだ」と問われても答えようがないのと同じだ。好きなモノは好き。それだけである。


「おら早くしろよ」

「だから、焦んなっての!」


 商店街を急ぎ足で抜けようとした時だった。

 顎にテーピングをした短髪と、こめかみにシップを貼ったブタが立っていた。彼らの後ろには金髪野郎と角刈り野郎が鎮座しており、4人揃って俺らに鋭い眼光を向けていた。

 間違いなく昨日の連中である。他の2人は助っ人だと思われる。


「友則、昨日の奴らだぜ」

「あんだよ。この忙しい時に」

「報復戦かよ」

「めんどくせぇーな」


 コソコソ話をしていると、顎にテーピングを貼った短髪野郎がオラオラ感満載で近づいてきた。


「何だ。昨日の負け犬かよ」

「にゃ、にゃんだとぉ~」

「は?」

「てみゅぇー。いいきゅになるなよ!」

「……何言ってんの?」

「てみゅぇーのせいで、あぎょがガタガタだじゃぜ」

「あのう。それは日本語? それとも宇宙語?」

「にゃ、にゃめんじゃにぇー」

「ごめん、ごめん。ネコ語かぁ~」


 顎を砕かれた男は、言葉すらまともに発せなかった。

 イキがってはみたものの、目がキョドっていて本人的にはやりたくなさそうな雰囲気だった。昨日の連続ニーバットが脳裏を過ったうえ、ケガも治らぬうちに報復戦は誰だって嫌だろう。

 だが、ここで弱気はご法度である。仲間がいる以上、根性無しと認定されたら今後の学園生活に支障を来す。無駄な気合を見せるのがバカ連中の鉄則である。


「きゅううは、かきゅごしるやぁぁ」

「にゃめてー。きょわいわぁぁ」

「き、きしゃまぁ」

「んもう。言ってる意味がわきゃんないわよぉ~」

「びゅっこりょしてやりゅわぁぁぁ」


 意味不明の言語を発し、痛々しい姿でパンチを繰り出してきた。

 ただでさえ弱いのに、ケガをさらけ出して喧嘩を売るのは狂っているとしか思えない。ちなみに俺は、相手の弱点を突くのが得意である。

 スローモーションのパンチをサクッと避けて顎を狙い撃ちした。かなり痛かったのだろう。地面をのたうち回って痙攣していた。

 昨日の一撃を思い出して焦りが見えるブタ野郎だったが、状況的には彼も同じである。ここで根性を見せておかないと仲間内からハブられる。

 ブタ野郎は、右へ左へ蛇行しながら近づいてきた。


「その状態でやれんの?」

「テメェらみたいなゴミに負けてたまるかよ」

「でも君、フラフラしてるよ?」

「う、うるせーんだよ!」

「目の焦点が合ってないね。これ、何本に見える?」

「ふざけんな」

「残念。2本でした」

「やろぉぉぉ」

「早く病院へ行かないと歩行困難になるよ」

「ぶちのめしてやるわぁぁぁ」


 フラフラ状態でパンチを繰り出してきた。そこまで仲間に忠義を尽くさなくても良かろうに。

 あまりイジメでも可哀想なので、遠慮がちに2本指を突き立ててカウンター目つぶしをした。そして鼻をもぎ取るようにアッパーを喰らわせた。奴の鼻から血が四方へ吹き出し、「ぐぎゃぁぁ」と叫びながら地面を転げ回った。

 二人を一気に血祭りにあげると、傍らで見ていた金髪野郎が絡んできた。


「てめぇ。いい加減にしとけよ」

「いい湯加減?」

「な、なめんなよ」

「さっきから同じ事ばかり言うね。他に言葉知らないの?」

「……お前、何中だ」

「今時学ランって……お前こそどこの田舎モンだよ」

「俺らは紺中だ」

「こ、昆虫ぅぅ!?」


 そういえば、河原に架かる橋を渡れば隣町で、確か紺藤町こんどうまちだった気がする。紺藤町にある中学で昆虫。まあ、貝東市にある中学で回虫よりマシだが。


「こ、昆虫って……ギャハハハ!」

「さ、三次。腹いてぇぞ」

「ダメだ。今年最大のギャグだぜ」

「グハハハ! ショ、ションベン漏れる」


 友則はDVDで腹を押さえ、死ぬほど笑っていた。大爆笑している俺らにカチンときたのだろう。金髪野郎がグーで肩パンしてきた。


「い、痛てぇなコラッ!」

「やんのか?」

「上等だよ」

「紺中なめんじゃねぇぞ」

「昆虫に負けたら人として終わりだな」

「く、くたばりやがれえぇーー」


 虫みたいにブンブン言わせて向ってきたが、パンチが遅すぎてハエが止まる。

 華麗に交わした後、奴の腹へケリを食らわし、腰が崩れ落ちた所を狙ってシャイニング・ウィザードを炸裂させた。この時点で既に勝負あり。そして必殺技であるツームストーン・パイルドライバーでトドメを刺した。動かなくなった。

 仲間を3匹もやられ、理性がブチ切れたのだろう。角刈り野郎が速攻で近づいて来て友則の腹を蹴り上げた。

 次の瞬間、DVDがバキッと音を立てて割れた。


「……」


 すこぶるマズい展開になってきた。

 朝から楽しみにしていたDVD。受け取った時、嬉しさのあまり克己を抱きしめていた。これを励みに今日一日の辛い授業を耐え忍んできた。

 そんな友則の顔から一切の笑顔が消え、無口になった。

 奴の特徴として、本気になった時は口を一切開かない。問答無用で潰しにかかる。たぶん、動物的本能なのだろう。


「友則。あんまり本気……」


 止める間もなく、ドストレートの拳が鼻先に入った。角刈りは、たった一発で意識を失った。衝撃で膝を落とした野郎の顔面を掴むと、得意のアイアンクローをかました。激痛のあまり再び意識を取り戻した角刈りは、断末魔の悲鳴を上げた。

 その間、友則は何も言わない。しかも左手を右手首に添えるアイアンクローは本気のポーズであり、相手を粉砕する合図である。


「もう止めとけ!」


 慌てて押さえ付けた時、真後ろから警察官が駆けつけた。商店街の誰かが通報したのだろう。アーケードに「止めなさーい!」という甲高い声が響き渡った。

 振り返ると、下着ドロの時に一悶着あった例のBカップ警官とその一味だった。


「またあなた達なの?」

「……」

「ちょっと止めなさい」

「……え?」


 その声を聞いた友則は、我に返って手を離した。相手は全身を痙攣させてションベンを漏らしていた。虫の息とはこの事である。

 友則は駆けつけた男性警官に取り押さえられ、俺はBカップに背負い投げをされた。


「ぐわっ、痛てぇーよ。何すんだ!」

「いい加減にしなさい」

「いきなり人を投げるんじゃねぇよ」

「抵抗したからでしょ」

「抵抗なんかしてねぇだろうがっ!」

「大人しくしなさい」

「これには事情があるんだよ」

「どんな事情であれ、暴力はダメでしょ」

「暴力じゃねぇ。人助けだ」

「それにあなたには、公然わいせつの罪があります」

「不自然だったから確認しただけだろうが」

「とにかく話は署で聞きます!」


 男性警官に腕を捕まれ、再び貝東警察署まで連行された。






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