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本日も学園生活を満喫します  作者: 室町五丁目
4時間目

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23/34

妄想大爆発

 克己に絶交を突きつけられ、気分爽快、天下泰平で帰宅の途に着いていた。

 ついこの間までは夕日に向かって歩いていたが、最近は16時を過ぎても日が高く昼間のように明るい。商店街を抜けて河原へ出ると、柔らかい風が肌をかすめて心地の良い季節になった。

 クラスの皆とも徐々に打ち解け、順風満帆な滑り出しである。

 月日が経つのは早い。このままだと、あっという間にじーさんである。いつまでもあると思うな親と金 ないと思うな運と災難。

 時の流れにもののあわれを感じていると。


「三次殿。しばし足止めを」

「え?」


 真後ろから声をかけられた。振り返ると未悠が小走りで近づいて来た。


 正直驚いた。普段の彼女から察するに自ら声をかけて来ることはない。こちらが話しかければ答えるが、積極的に寄って来るのは稀である。常に1人を好み、意識を飛ばして宇宙と交信している。

 俺の記憶が正しければ、出会ってから現在に至るまで、彼女から話を持ちかけられたのは10秒くらいのものだろう。

 数学の時間に俺の方を振り返った未悠が一言。


「三次殿。この方程式は何様のつもりで?」

「う~ん。お互い様かな」

「ほうほう」


 これくらいだ。他に思い当たるフシはない。教室でも他人に話しかけている所を見た事がない。かといって人見知りでもなさそうだ。

 自己紹介の時も臆することなくサラッとアピールしていた。


「吾輩は町田未悠という若輩者。特技は漫画を主軸としておる。不器用なため口数は少なめだが、決して不機嫌に相当するものではない。何かあったら気軽に接点を望んでおる」


 言葉使いが独特過ぎてみな戸惑っていたが、俺は興味をそそられた。

 口数が少ない割には流暢に語る。難攻不落な言語ではあるが筋は通っている。背中から怪しげな雰囲気を漂わせ、クヒクヒと1人笑いする姿が堪らなかった。

 目の前の席という事もあり、例の狂乱ブラザーズ以外で最初に仲良くなったのは彼女だった。



「そういやぁ、お前の本って商品化されるらしいな」

「なんのなんの」

「凄いじゃないか」

「商品化など季節の変わり目」

「はい?」

「その先が要となりうる」

「……通過点って事?」

「常に新作を欲さねば、奈落の底は目前ですぞ」

「休みなく新しいモノを生み続ける……って事か」

「吾輩は既に新境地へ探索の旅路」

「……」


 先日のイベントで商品化が決定した未悠。心血を注いで作り上げた我が分身である。他人に認められるという事は、今までの努力が報われた瞬間でもある。これは嬉しい限りだろう。

 人気になった事で彼女自身の知名度も上がった。大会後、多数のお祝いメールや応援メッセージが届いた。見知らぬ人からサインを求められた時には、嬉し過ぎて挙動不審になったという。

 ただ、喜んでばかりもいれらなかった。これだけ注目を浴びると必然的に次の作品に期待が集まる。ここで下手な物を出したら、積み重ねた努力が水の泡となり、まぐれの一発屋として笑いものになるだろう。


「次のイベはさらに魅せる時」

「そうか」

「吾輩もコスプレで参加を熱望する」

「セクシー刑事みたいにか?」

「たわけた事を。吾輩は胸無しケツデカだぞえ?」

「自分で言うなや」

「現在手掛けている新作のお披露目会とのコラボで」

「……で?」

「注目を浴びている時がチャンス到来。この熱い時期に更なる高みに昇りつめれば、人気は鋼のように強固になりうる」

「なるほどな」


 要するに、鉄は熱いうちに打て。次のイベントこそが力量を図るバロメーターだ。ここで地盤を強化すれば、これから先の未来に明るい日差しが照り付ける。

 言われてみれば確かにその通りである。奇跡の一発でバズった者は沢山いるが、その後鳴かず飛ばずが大多数を占める。そういうのを実力不足という。

 素人の俺が言うのもなんだが、彼女の実力は折り紙付きだと思う。

 真の力が試されるのはここから先であり、次作こそ手加減無用のラッシュを決めねばならぬ。

 そこで、自らコスプレをして新作を披露しようと考えた。

 彼女らしい選択である。


「我が欲求を満たすには三次殿が必須でしてな」

「でも俺、洋服なんて作れないよ」

「服ではない。武器製作に勤しんで貰いたい」

「武器?」

「三次殿のチンコ型ボールペンは秀逸でしたな」

「あ、ありがとう」

「あのチンコを見た途端、体が熱くなりましたぞ」

「……道端で連呼しない方がいいと思うよ」

「手先の器用さに驚愕の日々」

「お前、大袈裟だな」

「天才とはまさに三次殿のためにある」

「恥ずかしいからやめろよ」

「どうですかな、天才殿」

「何でも言いな。望み通り作ってやんよ!」


 頼まれたらイヤとは言えない。褒められたら調子に乗る。宮本家に代々伝わる悪魔の血筋が沸騰した。


「で、その武器ってどんな感じなの?」

「これを読めば一目瞭然かと」

「これって、今度発表するやつ?」

「そのような塩梅で」

「……」


 この間の大会で新作を発表したばかりなのに、既に新たな作品に取り掛かっているとは恐れ入る。


「家へ帰ったら読むよ」

「しかとよろしく」

「お、おう」


 不可思議なスキップをしながら商店街へ消えて行った。


 調子に乗って適当な口約束をしてしまったが、果たして、当日までに注文の品を作れるかどうか。ここは男の真価が問われる場面である。





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