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本日も学園生活を満喫します  作者: 室町五丁目
4時間目

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22/35

克己と町田未悠

 月曜日。


 学校へ行ったら、克己が女子と口ケンカをしていた。


「何でお前がトップなんだよ!」

「それは主催者側の心模様」

「いつもはBLだろうが」

「今回は壮大な企画ゆえの行動」

「だからって、自分のポリシーを変えるな」

「趣旨によってテーマを変えるのは基本の所業ぞ」

「そんな卑怯な手口は認めん!」

「主の作品は、人の心を堕落させる愚策に相当する」

「な、なんだとぉ~」

「下衆なエロネタなど誰も欲せぬわ」

「エロこそ正義だろうがっ!」

「この世界、結果が全てぞ?」

「貴様に俺の何が分かるんだぁぁ!」


 早朝からテンションMAXで叫んでいた。


 現在、言い争いをしている者の名は町田未悠(みゆう)。ショートボブの眼鏡女子で、克己と双璧を成すオタク娘である。

 こちらから話しかければお喋りだが、自ら話しかけて来ることはほぼない。一日を通して誰とも喋らない時もある。ボーっと空中を見つめ、時折思いついたようにノートに何かをメモっている。傍から見たら一風変わった不思議ちゃんだった。


 何を考えているのか分からず、みんなは付き合いにくいというが、俺はこの手の奴が大好物だ。ちょっかいを出すと、必ず答えてくれる。その答えが常軌を逸していて、俺のハートにグサッと刺さる。

 町田と宮本。名簿順のため俺の目の前に座っている。

 授業中、手作り愛用のチンコ型ボールペンで背中をつついてみた。振り返った未悠にボールペンを見せると、一枚のイラストが回ってきた。

 イラストの横に吹き出しで「宇宙に繋がる深淵」と書かれていた。楽しくなった俺は、それに突き刺して返信した。すると「更なる泉へ」という返事が帰ってきた。返しが斬新過ぎて、次の一手が思い浮かばなかった……。


 つかみどころのない彼女が得意とするのは漫画だった。これが激烈に上手い。作品を10段階で評価すると、克己は1、彼女は8くらいある。

 実は、体育館で行われた同人イベントにも参加していて、偶然にも会場で出会った。


「あれ。未悠?」

「おおっ、三次殿」

「お前も参加してるのか」

「これは吾輩のライフスタイル」

「……そうか」

「三次殿も参戦の手合いで?」

「俺は克己の付き合いでな」

「なるほどの回答」

「……」


 会話が成立しているのか微妙である。


「お前はどんなのを描いてるんだ?」

「手に取って好き好きに閲覧されたし」

「……ああ」

「吾輩は、粕田真理というペンネームで闊歩している」

「カスダ……マリ?」

「以後、お見知りおきを」

「あっ……そ」

「どれもこれもが魂を持ったロマン」

「……意味が分からんのだが」


 目の前に並べられた一冊を手に取った。内容は少女漫画のBL系で性に会わなかったが、絵は驚くほど上手かった。素人の俺でも違いが分かるほど繊細かつ大胆なタッチ。ページをめくるごとに、主人公が息吹が聞こえてくるようだった。


「お前、上手いな」

「さすが三次殿。目線が雄大ですな」

「あ、ありがとう」

「この者たちは、新たな出会いを望んでいる」

「そうか」

「記念のご宝物に」

「……」


 新作と書かれた同人誌を手渡れた。少女漫画系は得意ではないが、折角のプレゼントを断るのも気が引ける。いざとなれば、妹に渡せばいい。貯金箱の件で日頃からお世話になっているので、お詫びの印に丁度いい。これで奴が腐女子になれば、兄として嬉しさ倍増である。

 未悠から貰った本を抱え、セクシー刑事や獣シスターズを思いっきり堪能して会場を後にした。



 その後、5周年記念のスペシャルイベントである「最多得票の商品化」が発表されたらしい。数ある中から選ばれたのは、未悠こと粕田真理の作品だった。他の追随を許さず、圧倒的大差でトップに立った。

 これに不満を爆発させたのが克己だった。

 元々はBL系を中心としたマニアックな漫画を描いていたのだが、大会向けに指向を変え、一般受けしそうな作品へ覆した。

 自分の好きなモノを全力で手がけるをモットーとしている克己は、商品化という甘い汁になびいた未悠が許せなかったらしい。

 そしてケンカになった。


「貴様にはプライドはないのか」

「好きなテーマを手がけて何ぞ悪役か」

「お前は腐女子だろうがっ!」

「主が獲れなかったから吾輩のせいにするとは言語道断」

「他人の視線に媚びやがって」

「媚びてはおらぬ」

「完全に飲まれたろうが」

「実力の違いを見せつけられ狂ったか」

「くっ……」


 ニヤッと笑う勝者の余裕に言葉が出なかった。


「おい三次。お前は未悠の作品も読んだんだろ」

「ああ、読んだぜ」

「だったら、どっちが上か分かるよな」

「ハッキリとな」

「お前に認められたら本望だぜ」

「そうか」

「親友に問う。どっちだ」

「圧勝で未悠だな」

「グギギッ」


 歯ぎしりをしながらも返答に戸惑う克己。どちらが上手いか作品を見れば一目瞭然である。素人の俺でも分かるくらいだから、描いている本人なら尚更だろう。


「それはいいとして。お前、フィギュアはどうした」

「フィギュア?」

「机に飾ってあったヤツだよ」

「ああ、あれね。売った」

「なっ!? あれは俺の宝物なんだぞ」

「そうなの?」

「滅多に手に入らないレア物なんだ」

「それは悪かった。すまん」

「……で、いくらで売った」

「500円」

「き、貴様とは絶交だぁぁーー!」


 暴言を吐き捨てて教室から出て行った。


 何だろう、朝っぱらからこのテンションの高さは。

 宝物を500円で売ったのは申し訳なく思う。それに関しては過ちを認める。お前の喜ぶ顔を見たいが為の行動だ。勘弁してくれ。

 ただ、未悠に文句を言うのはお門違いだ。悔しい気持ちは分かるが、素直に負けを認めるのが男ってもの。ガキみたいに駄々をこねても女々しいだけである。


 あの内容でトップを獲ろうと思ったお前の頭が腐ってるけどな!






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