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本日も学園生活を満喫します  作者: 室町五丁目
3時間目

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21/34

友則の本領ついに現る

 2人を仲直りさせた帰り道、克己と基地で相談していた。


「マジでコスプレさせる気かよ」

「原因はそこだからな」

「想像するだけでヤバイんだけど」

「まあ、気持ちは分かる」


 克己は連れて行くのを渋っていたが、事の発端は、内緒で行動したことにある。仲間外れにされたら誰だってイヤなものだ。このまま隠し通してもいつかはバレる。ウソを付き続ければ、良心の呵責に耐えられず心がパンクするだろう。

 どのみち、脱ぐという事実に変わりなく、避けられない案件だ。悪あがきした所で何も変わらないのなら、3人で地獄のツアーを体験した方が潔い。


「言いたいことは分かった。で、何のコスプレをさせるんだ」

「原住民のコスプレ」

「は?」

「裸に木の棒だよ」

「……お前、それ限りなく危険な匂いがするぞ」

「ついでに奴の背中に美少女を描いてやれ」

「入れ墨みたいにか?」

「デザインは任せる。裸体でもマニアック系でも」

「……」

「そんで、カメラ小僧に細部までバッチリ撮ってもらおう」

「誰がそんな薄汚いモノを欲するんだよ」


 全裸の中学生が原住民の格好をし、背中にキラキラ美少女を背負ってマッチョなポージングをする。ただし、奴の事だから確実に露出狂へ変身する。公共の場である以上、卑猥な部分の露出はご法度だ。乳首と息子にテープを貼って見えないよう対策も高じる。

 要するに、服を着ているから脱ぎたくなるのだ。初めから裸なら、それが普通で誰も相手にもしない。周りの連中も「そういう仕様なのか」で事態は軽症で済む。

 それでも何かあった場合、「玉袋洗濯バサミの刑~倍増編~」と「尻の穴にタバスコぬりぬりの刑」のダブルパンチを執行する約束をしている。

 特に洗濯バサミの刑は、友則が警察に捕まった時に執行している。


「テメェー。警官の前でウソつきやがって」

「ごめんなさい。もう二度とウソは言いません」

「本当だな」

「はい。約束します」

「次にやったら、洗濯バサミを倍増すんぞ」

「そ、それだけは勘弁して下さい」

「ついでに、尻の穴にタバスコぬりぬりの刑とダブルだかんな」

「イ、イヤァァ――」

「イヤじゃねぇんだよ。分かったのかっ!」

「わ、分かりました」


 洗濯バサミのあまりの衝撃に恐れをなしていた。


 これは男と男の契りである。男同志の約束を破るということは、何をされても文句を言えないということだ。契りを結んだ以上、反故にしたら奴は立場を失う。

 それは、俺のペットになるのと同義語である。


「俺、どうなっても知らねぇぞ」

「大丈夫だ。今や奴は俺のペットと化している」

「お前を信用していいのか?」

「何かあったら俺が全責任を取る!」


 克己を言いくるめた後、ホームセンターで木材を購入。イベントへ向けて全精力で友則羞恥プレイグッズを作成した。

 長さ20センチ、直径30センチの木材の中心部をくり抜き、首から下げるヒモを取り付けた。簡潔に言うと、原住民が付けている「コテカ」を作り上げた。

 何をやらかしても、反省どころか後悔もしない原始人には、うってつけのアイテムである。

 我ながら最高の出来栄えだと自負し、勉強机の上に威風堂々と鎮座するコテカを優しく撫でながら本番を待った。




 そして本番当日。


 俺は控室で友則の息子を超強力テープでグルグル巻きにしてやった。破れにくく、粘着力が半端じゃない一品。屋外でも使用可な優れモノである。


「三次。これ、絶妙に恥ずかしいのだが」

「今更何言ってるんだ。やるって決めたのはお前だろ」

「塾長とか卍丸のコスプレじゃねぇのかよ」

「裸にコテカだぞ。これこそ漢じゃねぇか」

「まあ、そうだが……」


 ブツクサ文句を言っている友則に、コテカを装着させた。


「おら、完成だ。行って来い」

「ドキドキして来たぞ」

「カメラ小僧共に本当の漢をアピールして来い」

「わ、分かった」


 緊張しながらアピール会場へ向かっていく友則。背中には、馬に跨った鹿が描かれていた。


 ギャハハハ。もはや無敵の漢だぜ!




 友則を送り出した後、克己の元へ行った。


「どうだった?」

「本人も大喜び。完璧だぜ」

「本当にどうなっても知らねぇぞ」

「大丈夫だ。対策はバッチリだ」

「もし万が一の事があったら頼むぞ」

「お前、心配性だな」

「まあいいや。あいつの事は任せる」

「お前は売り捌くのに専念しろよ」


 初めからこうすれば良かった。友則だってバカではない。自分の置かれている状況は把握していると思う。逆に、友として彼を信用出来なかった自分を恥じるべきである。


「すまん。ちょっとトイレ行って来るから留守番してくれ」

「分かった」


 留守を任された俺は、親友の売り上げに貢献すべく人々を呼び込んだ。

 克己はこの界隈で割と有名らしく、購入希望者が大勢いた。漫画に留まらず、傍らに置かれたフィギュアも人気だった。

 ガチャカプセルに入るくらいの大きさで、俺的にはそれほど完成度が高いとは思えなかった。しかし相手は相当気に入っているらしく、しつこいくらい何度も頭を下げて懇願された。

 今時はガチャでも1回500円くらいはする。ここで売り上げに貢献すれば、克己もきっと喜ぶに違いない。


「こんなんでいいの?」

「もちろんです。これじゃなきゃダメなんです」

「じゃあ、500円でいいよ」

「マ、マジっすか!」


 狂喜乱舞で購入してくれた。

 相手も喜び、克己も喜ぶ。友則は間近でセクシー刑事を堪能して大喜び。全ての歯車が上手く回った。今日は人生最良の日だ。

 気分爽快で客を呼び込んでいると……。


「さ、三次ぃー。助けてくれーー」


 克己の叫び声がした。声のする方を振り向くと、友則を羽交い絞めしていた。その様子にピンときた。たぶん、頭のクラッカーが弾けたのだろう。

 俺は急いでアピール会場へ向かった。

 思った通りの展開だった。コテカをもぎ取り、息子に貼られたテープを涙目で剥がしていた。克己が必死で押さえ付けていたが、バカ力&狂った脳が本領を発揮していて、奴の力ではどうにもならない。

 俺はすかさず後ろへ回り込み、克己をどかしてチョークスリーパーをした。


「おい。落ち着け」

「ぶ、武士の情け。俺のコテカを披露するチャンスだ」

「お前のブツなんざぁ、誰も見たくねぇんだよ」

「もう我慢出来んのだぁぁ!」


 そう叫んでさらに暴れた。さすがはゴリラ並みのパワーを持つ男。尋常じゃない力で俺を引き剥がそうとした。だが、こっちも負けてはいられない。ここへ連れ出したのも俺。バカな考えを巡らしたのも俺。何かあった場合は責任を取ると約束もしている。

 暴れ狂う奴の首を力強く締め上げた。


「友則。もう十分だ。逝け!」

「ぐえぇ」


 首を締めあげられ悶絶した友則は、腕の中で白目を向いた。



 その後、主催会場の人に車椅子を借り、友則を乗せて会場を後にした。


「一体何があったんだ?」

「いや、実はな……」


 初めは調子よく事が運んでいた。物珍しさもあってか、アピール会場では「変態コテカ」として人気になっていた。カメラ小僧がポーズを要求し、それに満面の笑みで答える友則。仁王立ち。コテカ擦り。四つん這い。大股開きなど。遊ばれている事も知らずに上機嫌だった。

 1人が沸くと周りも影響されてノッてくる。他のレイヤーたちも負けずに色んなポージングをし、壮絶なアピール合戦が繰り広げられた。

 コスプレイベントは最高潮で、場の盛り上げ役をしたコテカ友則は、大人気キャラになった。当の本人も汗だくで、顔を高揚させてご満悦だった。


 アピール合戦が白熱していた時、セクシー刑事が近づいて来た。そして友則に向かって、「君とツーショット写真を撮りたい」と言いだした。

 彼女は友則の体に胸をピッタリと押し付けてきた。動揺する友則の手を自らの腰へ導き、肩を抱き寄せ、さらにコテカを握って存在感をアピールした。

 これで奴のクラッカーが弾けた。

 コテカの中のミニコテカが爆発した友則は、下唇を噛みしめながら禁断のテープへ手を伸ばしたという。


「そうか。そりゃ仕方がない」

「彼女が登場するまでは良かったんだがな」

「女に免疫がないからなぁ~。こいつ」

「まさかセクシー刑事が握るとは思わなかったぜ」

「まあ、結果オーライという事で」

「どこがだよ」

「ほら。こいつの顔みて見ろよ」


 車椅子に乗って気を失っているその顔は、フルラウンド戦い終えて真っ白になったボクサーのように、満足げな笑みを浮かべていた。






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