表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本日も学園生活を満喫します  作者: 室町五丁目
3時間目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/37

野生児の直観力

 その日を境にコスプレにハマった俺は、教室で克己と語り合っていた。


「この間のイベ面白かったな」

「まさかお前がハマるとは思わなかったぜ」

「あれにハマらない男なぞいるか!」

「どれが良かった?」

「やっぱ、セクシー刑事だろ」

「バレリーナ悪魔の美咲ちゃんもいいぜ」

「バ、バレリーナ悪魔!?」

「レオタードがシースルー」

「想像しただけでヤバイ事になってんだが?」

「しかも悪魔のシッポ付き」

「マジかよ」

「必殺技は、ハートのシッポでツンツン攻撃」

「は、鼻血がぁぁぁ」


 朝っぱらからゲスな会話をしている俺らに、冷めた視線を送るクラスメイト。

 気持ちは痛いほど分かる。

 朝は一日の始まりであり、今日が良い日なるかが決まる時間である。太陽がサンサンと降り注ぎ、やる気と元気と勇気が漲る。今日も一日頑張ろうとしている矢先のバカげた会話は、不快そのものであろう。

 みんなの「いい加減に黙りやがれ」という怒りの視線が向けられる中、苦々しく思っている人物がもう1人いた。


 別に仲間外れにした訳ではない。普段の行動から推測して限りなく危険と判断したからだ。

 克己にとって同人イベントは人生の一部だ。毎回楽しみにしている特別な時間である。会場で仲間と趣味を共有したり、新たな情報を収集したりと、生きていく過程において重要な位置を占めている。

 仮にこの手のイベントが無くなった場合、彼は人生の目標を見失い、自宅から一歩も外へ出なくなる。完全な引きこもりと化した克己は、やがて冷蔵庫や洗濯機に話しかけるようになる。

 イベント終わりの帰り道、こんな事を言われた。


「友則にはナイショで頼む」

「なぜだ?」

「お前も見たんだから状況は分かるだろ」

「セクシー刑事か」

「予想付くだろ?」

「……最悪だな」


 俺らじゃなくても予想は付く。セクシー刑事を見た友則は、脳波が急停止して己を見失う可能性が高い。高いというか、100%の確立で何かしらの行動を起こす。


『中学生が同人イベントで狂気の行動』


 警察が乱入し、カメラ小僧が証拠写真を押さえ、学校に連絡が回る。ニュースが面白おかしく騒ぎ立て、イベントは安全確保の観点から中止となるだろう。

 逮捕歴がある以上、友則の行動は信用に値しない。しかも裸同然の年上女性とくれば、もはや前頭葉は砕け散る。克己としては、絶対に避けたい案件である。


「あいつの事だから露出は決定事項だぜ」

「舞台上で仁王立ちするだろうなぁ~」

「そんな事をしたら警察沙汰だぞ」

「……確かに」

「頼む。黙っていてくれ」

「分かった」


 親友に頼まれれば黙って従うのが男。仲間の楽しみを守ってやるのも男の仕事である。

 何やら怪しい動きを察知している友則は、ジーっと俺らを睨んでいた。




 つまらない授業が続き、思考回路が焼き切れそうになった頃。


「おい三次。なにボーっとしてるんだ!」


 久しぶりに忠告を受けた。

 俺、友則、克己は教師からもサジを投げられているため、授業中に指摘される事は滅多にない。余程の事が無い限り完全スルーされている。

 しかし、今日に限って何故だろう。


「これを和訳してみろ」

「はい?」


 黒板には what do you want to be in the future. と書かれていた。


 俺は生粋の日本人で、他国の言葉を覚えても何のメリットもない。そういうポリシーで生きている。この先、海外留学をするとは考えにくい。旅行くらいは行くかもしれないが、たぶん日本語でゴリ押しする。下手な英語を使うより母国語の方が通じやすいと思う。唯一覚える機会があるとしたら、海外の女性とお付き合いした場合だろう。この時ばかりは命を懸ける。

 よって、黒板の文字は1文字も読めなかった。

 だが俺は、不可能を可能にする男。先生がわざわざ指名するという事は、何かしらの意図があるに違いない。俺を出汁にして笑いを取るか。もしくは、小馬鹿にして長年培った地位と名誉を失墜させるか。どちらにしろ、何かある!


 黒板の謎めいた文字をジーっと見つめた。


「あなたは将来何になりたいですか……ですか?」


 その一言でクラス中が沸き、教師は驚いた様子で俺を凝視した。

 何だか知らんが当たったらしい。デタラメでも当たると気持ちがいい。


「お前、凄いな」

「ま、まあそれほどでも」

「いつ勉強したんだ?」

「俺だってやる時はやりますよ」

「ほう、立派な心がけだな」

「こんなん余裕です」

「じゃあ聞くが、お前は将来何になりたいんだ」

「え?」


 唐突な質問に戸惑った。

 将来など考えた事もない。毎日を楽しく過ごせれば、それが一番と豪語するバカの見本みたいな生き方をしている。だからこそ、あえて質問したのだろう。


「ほら、どうした。お前は何になりたいんだ」

「……」

「もしかして、何も考えていないのか?」

「いや……」

「じゃあ、答えてみろ」

「……セ、セクシー刑事」


 クラス中が大爆笑になり、教師は「やっぱりな」という顔をした。克己は「あちゃぁ~」と頭を抱え、友則が「ん?」という疑問符を抱いていた……。


 克己、すまん! 何も思い浮かばなかったんだよぉぉーー。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ