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本日も学園生活を満喫します  作者: 室町五丁目
2時間目

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15/34

休み時間 克己の夢の城

 早起きスポーツ大会は、終始を頭脳戦で貫いた5組の圧勝で閉幕した。ボンクラ揃いの我が3組は、準優勝という輝かしい成績を残した。

 未だ怒りの収まらない井上は、5組へ殴り込み、卑怯な手口を使った3人を呼び出して女子バスケ伝統「地獄の1000メートルダッシュ」をさせた。

 ゲロを吐きながら懇願したのは言うまでもない。


 一方で、ストレスを発散出来なかった友則は、校舎の屋上で日向ぼっこをしていた。サンサンと照り付ける太陽を全身に浴び、英気を養っている。動物と植物の合いの子である彼には、光合成が必要なのだろう。

 なぜ全裸なのか、という質問は愚問である。


 さらに一方で、大会をスルーして自分の世界に浸っている男もいた。

 秘密基地へ行くと、一言も発せずMyアトリエでひたすら漫画を描き続けていた。


「克己。よく飽きないな」

「飽きるとか飽きないとかの問題じゃない。これは俺のライフワークだ」

「ずっと座ってて、ケツ痛くねぇか?」

「うるせー。話しかけるな」


 学校にいる時からこの調子だった。話しかけても無視。先生に注意されても「え? 何か言いました?」と、声すら聞こえないらしい。

 基地へ戻ってからは、ポテチとコーヒー牛乳を持ってアトリエに籠りっきりだった。


 実はこのアトリエ、自身が設計したマイホームである。

 漫画やフィギュアに関しては一芸に秀でているが、それ以外は、まったくのダメ人間だ。

 基本的な地頭は悪くない。ただ、趣味に夢中で勉強をしない。勉強しないから成績はうなぎ下がり。成績が下がれば面白くなくなり、ふてくされて、さらに勉強しなくなる。

 そんな悪循環を繰り返した結果、ついには俺と友則の領域まで辿り着いた。


 そして、彼の不思議はここからが真骨頂だった。

 絵は上手いのに写生は苦手。フィギュアはプロ並みに作れるが、技術の授業でインターホンを作れなかった。人としゃべるのが苦手なはずだが、俺らとは話が止まらない。コーヒーと牛乳が嫌いなのに、コーヒー牛乳は大好き。

 もう意味が分からない。

 これらを踏まえた上で判断すると、自分の中にある世界観でしか生きられない悲しき男……なのだろう。

 説明に没頭し過ぎた。一旦、我に帰ろう。



 職人のような手捌きで小屋を組み立てていく姿を見た克己は、俺を尊敬の眼差しで見つめた。


「三次。お前、本気で凄いな」

「こんなん楽勝だぜ」

「その腕を見込んで頼みがあるんだが」

「何だよ」

「実はアトリエが欲しいと思ってた所なんだ」

「アトリエ? 何だそりゃ」

「簡単に言えば自室だな」

「自室を作ってどうすんだよ」

「趣味を思いっきり堪能したいと思ってな」

「自分の部屋があるだろう」

「それが問題大ありでな」

「問題?」


 克己には姉が2人いる。1番上は今年成人を迎え、2番目は高校2年生だった。

 俺は妹しかいないのでよく分からないが、姉と弟の関係はお嬢様と執事。女王様と奴隷の関係に近いという。奴の家へ遊びに行く度にパシリに使われているのを目撃している。

 俺らがゲームで遊んでいると、突然、姉が乱入してくる。


「克。喉乾いたからジュース買って来てよ」

「嫌だよ。自分で行けよ」

「あんた逆らうつもり?」

「いまゲームしてて忙しいんだよ」

「ちびっ子が生意気な口を利くようになったわね」


 背中に強烈が蹴りが入る。その一撃でブツクサ文句を言いながらもジュースを買いに行く。姉はニコッと笑い、「あんたらの分も買って来て貰うからね」といって自室へ。買い物から帰って来た克己は、姉に飲み物を届け、何事も無かったかのようにゲームに戻る。

 たった一撃で言う事を聞く克己を見て「上手く調教したな」と思う。

 自宅に居ると姉の召し使いと化すため、オチオチ漫画も描いていられない。


『いつしか自由を』


 そう考えていたらしい。


「頼む三次。俺の夢を叶えてくれ」

「しょうがねぇな。作ってやるよ」

「ホントか」

「その代わり手伝えよ」

「何でも命令してくれ。どこでも舐めるから」

「……舐めなくていいよ」


 そうして完成したアトリエは、二畳分の広さで枠組みに屋根だけ取り付けた簡易なものだったが、本人は大満足の様子だった。


「おおっ。これは無我の境地だぜ」

「意味分かんねぇよ」

「南国のリゾート地に来たみたいだ」

「狭くねぇか?」

「これで十分だ」

「もし必要なら、増改築するぞ」

「アレンジはこれから考える」

「まあ、好きにしろよ」


 それからというもの、アトリエは彼の巣と化し、趣味嗜好が一目瞭然の危険な要塞となった。

 愛してやまない城の名前は「秘密の花園」だった。


 どうでもいいが、入口にデカデカと美少女の「くぱぁ~」を貼るんじゃない。用もないのに、お邪魔しちゃうだろうがぁぁ。






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