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本日も学園生活を満喫します  作者: 室町五丁目
2時間目

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14/36

運命の決勝戦

 そして、運命を決める決勝戦が始まった。


 相手チームには、これまたバスケ部が3名いた。今までの俺らの動きをつぶさに観察してきたのだろう。奴らはダンクを警戒し、ゆっくりパスを回しながら、こちらを焦らす作戦に出た。

 ゴール下には脳筋ゴリラがいて、体当たりなどしようものなら明後日へ吹っ飛ばされる。なるべく近づかず、遠くからのシュートで確実に点を取りにきた。

 俺にボールが渡れば、3人がかりでガードに入る。小刻みなステップもトリッキーなプレイも封じられた。残るはパワーしかない。体をガンガンに当てて突破を試みたが、ファールを取られて終わりだった。 

 修平と省吾は、オフェンスとディフェンスを兼任している。特にもう1枠の交代要員が厄介で、クラスでもぶっちぎりにトロい奴が随時交代してくる。

 飛んでくるボールをヘディングしたり、何をしていいか分からず、コート内をウロウロしたり。スピーディーなパスを受け取るのが怖いと言って避けた奴もいた。

 向ってくるパスを「うわぁぁ」と叫びながらスルーした時、大会終了後に校舎裏へ呼び出し、一皮剥けた男にしてやろうと思った。


 そんなダメ星人をカバーしつつ、攻撃にも転じなければいけない。奴らの重労働を考えると、ポイントゲッターは必然的に俺だけになる。

 相手側は、俺が居なくなれば楽勝と考えているのか、反則ギリギリの行為で攻めてくる。苛立たせて、退場を誘発するつもりなのだろう。

 そんな幼稚な手には引っ掛からない。俺は常に冷静沈着な男。怒りを自在にコントロールする宮本三次である。

 反則行為を気にしながらチャンスが訪れるのを待っていた。


 だが、なかなかそのチャンスは訪れなかった。

 相手はダンクを警戒し、無理なパスは出してこない。友則対策として、奴の周囲で細かくパスを回し、隙を見つけてシュートへ持ち込む。

 修平や省吾もボールを奪いに行くが、簡単にはリバウンドを取られないよう徹底して対策されていた。そのうえ、ダメ星人たちが足を引っ張る。

 結果、コート内を無駄に駆け回るばかりで決定打がない。何を仕掛けても絶妙にかわされ、それがそのまま相手の反撃の糸口になっていた。

 手も足も出ないとはこの事で、時間だけが悪戯に過ぎていった。

 傍らで見ている井上は歯ぎしりをし、ストレスが限界に近づいている友則はフーフー唸っていた。



 ハーフタイムに入り、得点は29対10だった。

 明らかに挽回のチャンスはなかった。俺らの奇跡もここで終わりである。死神が舌打ちしながら去って行く姿が見えた。チームメイトも観客もそう思っていた。

 しかし、井上は違った。


「諦めるな!」

「なあ井上。もう無理だろう」

「無理という言葉は、終わってから言うセリフだ」

「どう考えても終わってるだろうが」

「三次。お前が弱音を吐くとは思わなかったぞ」

「時間がねぇんだよ」

「試合は、まだ続いてるんだ」

「後半でこの得点差を覆すのは無理だろうがよ」

「何とかなる!」

「奴らが時間稼ぎしたらどうするよ」

「……」


 シュートも打たず、パス回しだけで乗り切られたら勝利など遠い未来になる。

 それはバスケバカの井上が一番分かっているはず。何度も苦汁を飲まされ、準優勝という不名誉な結果に甘んじてきた。それは勝つための手段であり、戦略であることは百も承知だろう。


「もう諦めようぜ」

「ふざけるな。ここまで来て諦められるか!」

「往生際が悪いな、お前」

「よし。分かった」

「何がだよ」

「もし優勝したら、スカートめくり一回サービス」

「マ、マジかよ」

「どうだ。やる気が出たか」

「お前、本気で言ってんの?」

「私に二言はない!」

「このメンツにそれは危険だぞ」

「百も承知だ」

「特に友則……」

「みなまで言うな!」


 井上の言葉を聞いたメンバー全員が「ウオォォーー!」と地響きのような唸り声を上げた。


「どうなっても知らねぇぞ」

「勝てばどうなってもいい。三次、頼むぞ!」


 憧れのスカートめくり。この言葉に初めてチーム一丸となった。

 井上のパンツはどんな形で、主に何色を主軸としているのか。その事だけを考えて後半戦に突入した。


 省吾からの絶妙なパスを受けて修平が外から決める。相手がシュート態勢に入った途端、友則がバレリーナのようにクルクル回りボールを奪う。パスという概念がない友則は、力任せにボールを投げる。闇雲に放ったボールがバックボードに跳ね返り、俺がリバウンドしてダンクする。

 前半戦に苦しんだとは思えない動きで得点を重ねた。恐るべしパンツ効果である。苦戦した時は「パンツ井上!」と叫び、それぞれの性癖に思いを馳せた。


 生気を取り戻し、復活を遂げた俺らに戸惑った相手チームだったが、反撃もここまでだった。

 奴らは直ぐに冷静さを取り戻し、なるべくシュートを打たず、早いパス回しとドリブルを繰り返した。あからさまな時間稼ぎである。

 コート外から「卑怯だぞ。お前らぁぁ」という井上のヤジが飛んだが、そんなのは完全無視で焦らし作戦を続けた。

 自陣のゴール下ではリスクが高いため、先ほどから友則を囲んでパス回しをしている。友則は、ボールを追いかけて右往左往している。その姿は人間に捕らえられた動物のようだった。

 リスク対策に敵陣でのパス回しは認める。ただ、もうその辺で奴をからかうのは止めた方がいい。手足をカクカクさせて奇妙な動きになってるから。それはストレスがMAXになった時の現象で、ブレンバスターを欲している合図なのだよ。



 その後も無駄な時間が続き、無情にも終了のホイッスルが鳴った。

 見事にしてやられた。納得出来ない井上は、激高しながら相手チームへ文句を言いに行っていた。


 別に卑怯だとは思わない。正々堂々の勝負は、漫画やドラマの世界だけ。これも勝つための作戦でチーム戦略である。

 女子バスケ部が全国優勝した試合も、同じように時間稼ぎで苦しめられた。それを心技体でいかに打ち崩すか。だからスポーツは面白いのだと思う。


 井上の情熱を肌で感じながら友則を見ると、1人を捕まえてコブラツイストをかけていた……。


 なんか、この2人って似てるよな。





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