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本日も学園生活を満喫します  作者: 室町五丁目
2時間目

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13/35

大会本番です

 早朝6時。2年生全員が体育館へ集められた。

 昨日の無理が祟って全身が筋肉痛だった。体の節々が悲鳴を上げ、膝が大爆笑している。立つこともままならず、生まれたての子牛みたいにプルプルしていた。指でツンとされただけで「はふぅ~ん」と吐息を漏らして倒れそうだった。

 こんな状態で試合に出ても勝てるはずがない。今すぐにでも帰って、柔らかな温もりに抱かれながら爆睡したい。

 俺の苦悩など完全に無視したまま、実行委員がにこやかに大会の主旨とルールを説明していた。


 体育館が男子と女子の二面コートに区切られ、壁に張られたトーナメントの順に従って試合をしていく形式だった。

 このトーナメントが曲者で、どこに入るかはクジ引きで決定する。

 各クラスがどういうチーム構成で挑んでくるかがカギである。バスケ部のいないチームに当たれば、順調に勝ち進めるだろう。バスケ部所属、もしくは運動能力の高い者を集めたスペシャルチームと対戦すれば、一回戦で負ける可能性が高い。

 要するに運だけである。試合をする前から勝敗は決まったようなものだ。

 運も実力のうちと言うが。


 だったら、最初からクジ引きで決めろやぁぁーー!


 という心の叫びも空しく、早起きスポーツ大会inバスケが始まった。


 勝てば官軍、負ければ賊軍の一発勝負に若き血潮がぶつかり合う。気合が入っているのは選手だけではない。応援にも熱が入っていた。各組お手製の横断幕や旗が掲げられ、クラス一丸となって勝利を願う。体育館が異様な熱気に包まれ、誰もが短い中学時代を存分に謳歌していた。

 そんな中、出番まで暇を持て余した俺らは、女子バスケを真剣に応援していた。


「おい三次。あいつスゲェーな」

「ブルンブルン揺れてるじゃねぇか」

「何組だ?」

「確か1組の岩橋とかいう奴だな」

「サイズは?」

「あれは87だな」

「挟めそうか?」

「余裕だろ」

「もう1人の尻プリプリは?」

「5組の村上沙也加だった気がする」

「サイズは?」

「88」

「安産型だな」

「子供沢山産めそうだな」


 青春のプリプリを堪能していると、井上がいつになく真剣な表情でやって来た。


「いい加減にしろ。そろそろ試合だぞ」

「お前の方は大丈夫なのかよ」

「私たちはもう次のステージへ勝ち進んだ」

「そうか。それは朗報」

「次はお前らの番だ。期待してるぞ」


 男として期待されたら下半身も疼くというものだ。

 俺らは重い腰を上げて本番へ挑んだ。




 時間が経つにつれ、勝敗が決まっていく。勝利を手に歓喜する者、無情にも破れて肩を落とす者。青春がそれぞれの形で過ぎていった。

 肝心の3組だが、チームBは善戦空しく一回戦で敗退した。当然、井上に叱咤されていたが、皆の顔はやり切った徒労感で輝いていた。


 井上率いる女子軍団は、運が悪かった。

 相手チームに女子バスケ部が3名も所属していた。これはかなり難易度が高い。分かりやすく例えると、回復呪文を一切覚えず、やくそうだけを頼りに洞窟へ挑むのと一緒である。

 特に井上は次期キャプテン候補として完全にマークされている。1人に対して3人がかりでガードに付かれたら、自由に動く事さえ出来ないだろう。

 現に、彼女にパスが渡らないよう、1人はマンツーマンで鉄壁のマークについていた。その間、他の2人が自在にボールを操る。

 チビという弱点を巧みに利用して相手の間をすり抜けるものの、パスが飛んできた途端に体を当てられカットされた。井上にボールが渡れば、すぐさま2人が駆け寄って包囲する。同じ部活で切磋琢磨している仲間同士。クセまで読み取られ、思う様なプレイが出来なかった。

 それでも根性とテクニックはピカ一の彼女。意地と気合で得点を重ねたが、逆転叶わず破れた。

 終了のホイッスルが鳴った瞬間、床にボールを叩きつける後ろ姿を見て、少しだけ愛おしく思えた。



 俺らチームAは順調に駒を進めた。

 修平と省吾がリーダーになり指示を送る。


「三次、ゴール下へ行け。友則は全力ガードだ」


 弱小部といえども、毎日練習しているだけのことはある。試合感が的確で、相手の動きを先読みして封じる。


「三次。行け!」

「任せておけやぁぁーー」


 省吾からパスを受け取った俺は、華麗なステップでダンクを決めた。囲まれた時は修平へ返すと、遠目からスリーポイント。友則は、ゴール下でキングコングのように立ちはだかり相手を威圧する。

 シュートを放とうとする瞬間を狙い、ありったけの力でボールを叩き落とす。ボールを弾かれただけのはずなのに、なぜか相手まで吹っ飛び、ファールを取られる場面もしばしばだった。

 しかも、強く叩きすぎたせいで床に跳ね返ったボールが、そのまま自陣のネットを揺らすという、バカげたオウンゴールまで披露した。

 ハーフタイム時に井上に呼ばれ、片隅でゲンコツを喰らっていたのはナイショで。


 まあ、こちらも素人で相手も素人。実力に大差なく、どのチームが勝ち上がってもおかしくない状況である。井上が言うように、即席メンバーにチームワークなどない。勝敗は運次第だろう。

 技術も実力も頭脳ないが、悪運だけは売るほど持っている俺と友則。真後ろに鎮座している死神を味方につけ、確実にのし上っていった。

 そして、気が付けば決勝までコマを進めていた。


「お前らよくやった。あともう一息だ。特に三次、なかなか見応えのあるシュートを放つな」

「あ、ありがとう」

「このまま最終決戦だ」

「もう足がガタついてるんが……」

「弱音を吐くな!」

「ダンクって意外と筋肉使うんだぞ」

「そんなもん、気合と根性で乗り越えろ」


 唐突にビンタを喰らった。


「友則。次にオウンゴールしたら、全てをバラすからね」

「な、なろおぉぉぉ」

「あんたは私に逆らえない。OK?」

「くっ、くそぉ~」

「よし、お前ら全員一列に並べ!」


「勝って欲しい」その願いが行動に表れたのだろう。気合の掛け声と同時に俺らの横っ面を次々と張り倒した。


「なあ井上。痛すぎるんだが」

「三次。これは気合を入れたんだ!」

「お前は猪木かよ」

「あんたら対する尊敬の念だ」

「……」


 本人は愛情表現だと思っているらしいが、やられた方はたまったものじゃない。ビンタが痛すぎて脳がグラつく。

 もしこれが彼女なりの愛情表現だとすると、立て続けに二発も喰らった俺は、愛情MAXって事?





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