第6-2話 凄腕交渉人、愛娘の身体になりドキドキする
よし、落ち着こう……こういう時には冷静に、状況整理だ。
古代の遺跡を利用して新しく作られた”テークダンジョン”。
その最深部と繋がっていた遺跡の隠し通路……そこにあった台座と宝玉が、ミアの腕輪と反応し発光。
光が収まった時には、”俺とミアの精神が入れ替わっていた”
……ふむ……おとぎ話によく出てくるシチュエーションである。
僕と君の身体が入れ替わっちゃった!?
ドキドキするよ! というヤツだ。
そんな平和な現象なら助かるが、特殊な禁呪の中には、相手に憑依して、意のままに操る魔法があると聞いたこともある。
そのたぐいの呪いのトラップだとしたら……解呪は面倒だろう。
調査が終わっていると思われた遺跡が生きているなんて……こんな場所にダンジョンを建築したことも合わせ、なにか裏があるんだろうか?
陰謀の……匂いがする。
……そんな冗談はさておき、”転移の羽根”で王都に戻り、解呪を依頼しようと思ったが、このような現象が、ミアの腕輪と古代遺跡が反応して起こった事を治安局の奴らに知られると、少し面倒な事になる気がする。
今日はもう日が暮れたこともあり、とりあえずここに一泊し、明日もう一度遺跡を調査する。
もし、どうしようも無ければ王都ではなく、ハイロッシ地方のシーマ神殿に行って相談しようという事になった。
という事で俺たちは遺跡の入り口に魔法コテージを立て、野営の準備を始めたのだが……。
「ふわわ、目線が高~い……むむぅ……男の人の身体ってこうなってたんだ……おお、力こぶ!」
ミアは楽しそうに”俺の身体”を触りながら、目を白黒させている……。
喋っているセリフはかわいいが、俺の身体と声でクネクネされると……正直、なんというか……とても気持ち悪い。
ただそのことを正直にミアに言うと、彼女を傷つけそうな気がしたので、俺はため息をつきながらも今宵の夕食である”魚の煮込み料理”を作る。
フナ、ニジマスなど、材料の魚はこの島の周りで釣ったものだ。
人間、腹が減ると冷静な判断が出来なくなるので、飯は重要である。
くぅ……
……というか、ミアの身体がとてつもなく強力に空腹を訴えてくるので、飯をたっぷり食べないと倒れそうだ。
「アレン、いまは女の子の身体なんだから、脚を開いて座っちゃダメだよ」
「……はい、スミマセン」
うう、脚を閉じながらだと座って料理をやりにくい……女の子も大変である。
その後……
「ぱくぱく……ふう、もうお腹いっぱいだぁ……アレンって少食だね」
「うう、いくら食べても満腹ににならねぇ……何だこれ」
ミアの身体の食欲に恐怖したり……。
「あははっ……ミアの身体って、抱き心地いいね! アレンがいつも幸せそうな顔をするはずだよね♪」
「お、落ち着かないけど……何だこれ、心があったかくなる……」
「えへへ、でしょ? 包まれてる感じがして、幸せなんだ~」
お互いの抱き心地、抱かれ心地にほっこりしたり……。
よりお互いのことが分かって、これはこれで良い経験になったかもしれない……俺は甘いことを考えていた。
あの瞬間までは……
「アレン、先にお風呂もらうね~」
ここは俺たちの魔法コテージの中。
”俺の身体”のままで服を脱ぐと、お風呂に入るミア。
しまった……お風呂タイムがあったじゃないか。
風呂場からちゃぷちゃぷとした水音と、ミアの鼻歌が聞こえる(俺の声だが……)
状況としては、普段の野営と同じはずなのだが、やけに意識してしまう。
風呂に入らずに寝てしまう事も考えたが……お風呂が大好きなミアの事……入らないのは身体を汚してしまうし、一緒のベッドで寝るんだった……。
なるべく身体を見ないように気を付けよう……。
「などと言いつつ、狭い風呂では難しいか……」
俺は湯船に身体を沈めつつ、つぶやいた。
ミアの裸はフォーカ地方の温泉でも見ているが、あの時俺は少し酔っていたし、温泉の湯気も濃かった……。
ふう……すべすべの肌に……思ったより豊かな胸……温かいお湯につかったそれは、ほんのりピンク色に染まっている。
……とまあ、こんな描写をしてしまうくらい緊張している……女の裸など、夜の店でたくさん見てきたが……まったく違う、神秘的なほどに美しい裸体がそこにあった。
うう、思春期の幼年学校の学生みたいな感想を抱いてしまった……。
はぁ……思わず長湯してのぼせてしまった。
「むにゅむにゅ……もう食べられない……」
俺が風呂から上がると、ミアは俺たちのベッドで幸せそうにかわいい寝息を立てていた(俺の身体で俺の声だが!)
ふふ、ミアは俺の身体でもカワイイな……微妙に危険なことを考えつつ、俺たちはいつものように抱き合って眠るのだった。
*** ***
翌朝……
「うう、アレン……起きて……」
「んん、ミア、どうした?」
俺は半べそをかいたミアに揺り起こされた。
寝ぼけマナコをこすりながら体を起こした俺が見たのは……。
「こ、これ……どうしたらいい?」
男性の生理現象として”おっきくなってしまった”男の勲章を指さすミアの姿だった。
……うむ! 俺もまだまだ若いじゃないか!
冗談はさておき、普段は父性で抑えられている俺のゾウさんが、ミアと入れ替わったことで活性化したのか……。
「孤児院で男の子がこっそりシテいるのを見たことがあるんだけど……”こすこす”すれば治るの?」
「……ミアさん、それはマジでやめてください」
ゾウさんが収まるまで1時間、迷宮探索開始が遅れたのだった。




