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第6-1話 凄腕交渉人、島の迷宮にトバされる

 

「うっわ~、大きな河!?」


「……湖だな」


 目の前に広がるのは広大な湖。

 朝日が湖面にキラキラと反射し、とても美しい。


 俺たちは王都の北東、シーガル地方にある王国最大の湖、ワビ湖を訪れていた。



 ***  ***


 ラーナ地方での騒動の後、帰り道に襲ってきた元勇者クラレンスを官憲に引き渡し、牢屋にぶち込んだ俺たちは、王国治安局から請けていた依頼の完了報告でダンジョンギルドを訪れた。


 しかし、なぜか速攻次の依頼が準備されており、即日王都を追い出されてしまった。



 ……ふむ、これはセンシティブな案件にかかわってしまった俺たちを中央から遠ざけておきたいということか……ぶっちゃけ左遷だろう。


 それならそれで、のんびりスローライフを楽しませてもらうとしよう!


 そして、オーミの街にあるギルド支部で受けた依頼の内容だが……



 ワビ湖に浮かぶ秘島、テーク島に新たに建設したダンジョンのテストプレイをしろ。

 だと?



 テーク島とは、広大なワビ湖のど真ん中に浮かぶ孤島で、太古の遺跡がある神の島と呼ばれている場所。


 新ダンジョン:テークダンジョンは、この遺跡を改修して作ったらしいが……一番近い港から半日も掛かる孤島にダンジョンを作って誰が来るってえんだ?


 もしかして何かの癒着だろうか?


 俺は役所的キナ臭さを感じながら目的地に向かうのだった。


「は~、凄い森だね……それに、なにか神秘的……」


 ミアが”テーク島”を見上げ、感嘆の声を上げている。


 沢山の広葉樹がうっそうとした森を形成し、奥には葉を大きく広げた大木も見える。

 キラキラとした光の粒子が木々の間を舞っており、確かに神々しい雰囲気だ。


 俺たちは、申し訳程度に設置された木造の桟橋にボートを留めると、ギルドでもらった地図を元に上陸する。


「……さて、”テークダンジョン”はこの森を抜けたところにあるみたいだ」


「今日は野営になるだろうが、まだ日も高いし依頼をさっさと済ましてしまおう」


「うん! えへへ~、アレンと久々のんびり旅……楽しみだね!」

「この島でいろんな食材が捕れそうだし、ばんごはん……期待しててね!」


 ふふ……そういえばのんびりするのは久しぶりだ……嬉しそうにはしゃぐミアの頭を優しくなでながら、俺たちはダンジョンに向かうのだった。



 ***  ***


 うっそうとした森を抜けた先、先ほど桟橋から見えた大木のふもとに目指す”テークダンジョン”はあった。


 ツタが絡まり、一部が崩れた太古の遺跡の中、真新しい石造りの入り口が覗く。


「かきかき……”入り口がきれいすぎて全体の雰囲気を壊しています”……要改善っと」


 ミアが几帳面にダンジョン評価シート……俺たちが新ダンジョンの”テストプレイ”結果をまとめる記録用紙に、手厳しいご意見を記入している。


 確かにミアの言うとおり、苔むした古代の遺跡の雰囲気に合わない入口だな……ダンジョン評価はミアに任せた方が、若者の意見を取り入れられそうだ。


 俺たちはひととおり外観をチェックした後、テークダンジョンの中に向かう。



 う~む……


 ダンジョンの第一階層、第二階層と進むが、いまいちだなこれは。


 予算をケチったのか、工事中の部分が残っているし、ダンジョンの壁の色があっていなかったり、罠が発動しなかったりする。


 出現するモンスターも最下級の魔物で、手ごたえがない。


「えーと、”張りぼてが見えると冒険感が薄れるので、見えないようにしてください”」


「”トイレが少ないです。 最近のダンジョン参加者の4割が女性……ちゃんとアンケート見てますか?”」


「”出現モンスターの種類に統一感がありません。 せっかく湖にあるのでサカナ型モンスターを出すなど工夫をしてください”」


 ……ミアがものすごい勢いで評価シートを埋めている。


 担当者は涙目だな。


 さて……最奥まで来たが(正式オープン前なので、ボスモンスターは配置されていない)、特に変わったところはないような……


 ん? 俺はダンジョン最奥の祭壇、その横の壁が一部崩れているのを発見する。


 最初は張りぼてかと思ったが、どうやら石壁……本物のようだ。


 俺は興味本位にそこに近づいたのだが……


 がらり……


 俺が石壁に軽く触れると、壁はあっさりと崩れ、奥の空間が姿を現す。



「これは……この遺跡本来の通路か?」


 出現した空間の壁にはコケが生え、空気もひんやりとしており、常に換気をしている”ダンジョン部分”とは明らかに違う。


 奥には、六角形の台座のようなものと、真ん中に埋め込まれた大きな2つの宝玉が見えるが……。



「ふえ? アレン、どうしたの?」


「いや、崩れた壁が本来の”迷宮”に繋がったみたいだ……ふむ、”スキル”で確認した限り、危険はないな」


「すごい! 隠し通路だね! お宝あるかも? わくわく……」



 ミアは俺の手を引き、通路に入っていこうとするが……


 まあ、”ダンジョン”の工事も終わっているんだ……どうせ調査済みだろう……俺は気軽な気持ちでミアと一緒に通路の中に入る。


 通路はすぐに行き止まり、六角形の台座と2つの宝玉がある場所に出た。


 ふ~む、やはり”死んだ”迷宮か……宝箱の類も無いようだし、戻るとするか。


 俺が元のダンジョンに戻ろうと、ミアに声を掛けようとした瞬間……。


 パアアアアアッ


 突然、ミアの左腕に装備されている腕輪の宝玉が緑色の光を放つ。


「わっ!? なにこれ、まぶしっ!」


「ミア、その場を動くなっ!」



 パアアアアアッ

 パアアアアアッ



 呼応するように2つの宝玉までもが光を放ち……!



 ぱしゅん



 小さな破裂音と共に、光は消え失せた。


「……くぅ……ミア、大丈夫か?」


 俺はようやく視力が回復した目を薄く開けると、目の前の()()()()()()()()()()()


 …………ん? ひげ面の男……?


 しかもなんだ?

 俺の喉から出たこのカワイイ声は?


「うぅ……アレン? ミア……大丈夫だよ……って?」


 ”目の前の男”がミアの口調でどこかで聞いた声でしゃべる。


 ……って、おいおいこれは!


 俺は慌てて目を見開くと、自分の手と身体を見る。


 関節が節ばっていたごつい手は白魚のような指を持つきれいな手へ。


 視線を下に向けると、さりげなく主張する胸のふくらみと、すらりとした脚が見えた。


「お、俺……」


「ミ、ミア……」


「「入れ替わって(る~!?)(やがるっ!?)」」


 俺たちの絶叫が、迷宮の中に響き渡った。



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