5:キツネ
「あ、レベル上限ですね」
ノシロがそう言い、二人が止まる。
優雅に椅子に座り、隣の椅子に座る……留まるノシロはこちらに来る二人を見ている。
「それ、なんでわかるんだ?」
「魔物には標準装備ですよ」
二人がこちらに来るとその顔つきは疲れている様子だった。
生活魔法の中から【状態異常回復・十】を習得すると疲労を回復させてやった。
「あ、楽になった」
「次はどの職業にする?」
「これ、魔獣使い気になります」
「魔獣がいねえじゃん……魔物使いと違うのか?」
「ああ、はい。魔物使いは魔物を操るとかそう言う感じ向け、魔獣使いは魔獣を操る向けって感じですね」
「そのまんまじゃん」
「そのまんまですよ」
うーん?
「あれ、俺とジェーナスは契約を交わしたよな?」
「はい。なので、ご主人様のステータスの一部が加算されますね」
「え、マジか!?おい、ペンサコーラ大丈夫か!?」
「大丈夫です。道理で……強いと思った」
溜息を吐くペンサコーラに悪いことをしたと謝り、椅子から立つ。
「さて、じゃあ、魔獣探しの旅に出るか。ペンサコーラ、次の職業どうする?」
「この銃使いってのが気になりますね」
「んじゃあそれにしろ。ほいこれ銃。弾丸は魔力だから、ステータスポイントは魔力に振れ。まあ、頑健さとかでもいいかもな。素早さは威力に反映されないから気を付けろ」
「え、あ、はい」
拳銃を渡し村を後にする。
「ノシロはヒト型にならないのか」
「なって欲しいんですか?」
「どっちでもいい」
「じゃ、このままで」
ノシロを頭に乗せながら歩く。
「魔獣かー……魔物とは違うの?」
「魔物は知性がありますけど、魔獣は基本的に獣と大差ないですね。魔力を持った強い獣が魔獣」
ええ、そこに差はあまりなさそうだが。
「グリズリーとか調教できないのか」
「グリズリーは魔獣ではないので、無理ですね」
「あ、じゃあドラゴン!?」
「ドラゴンは魔物なので無理ですね」
「……使えねえ」
「酷い!!!」
歩いていると獣道にでかいキツネが出てくる。
「グルルルル」
「お!魔獣じゃね!?でかいし」
「でかいから魔獣という結果にはなりませんが、まあ、魔獣ですね」
じゃ、いいじゃん。
じっとジェーナスを見上げると焦らせてしまった。
「ええっと……【魔獣調教】」
ぱちんと音が響き狼はこちらを睨む。
「うん。無理そうだな」
「む、無理じゃないです!やらせてください!」
「【魔獣調教】のランク上げないと駄目っぽいな」
「この技術ポイントを【魔獣調教】に入れればいいんですね?」
「うん」
狼は戸惑いつつもうろうろしている。
「技術ポイントは……ああ、共通なのか。他の職業でレベルを上げても技術ポイントはついてくるんだ。親切設計」
【魔獣調教・五】を獲得したジェーナスは狼に向き直る。
「【魔獣調教・五】!」
魔法陣がジェーナスの手の甲から浮かび、その後で狼の頭に魔法陣が吸い込まれていく。
「……俺、食べられる?」
「何を?」
キツネは喋る。
「俺、食べられちゃうのか?」
「食べないよ。こいつのお守をして欲しい」
「なんで!?」
「忠誠を誓います、ええっと?」
「ジェーナスです」
「ジェーナス様」
「こっちはアズマ様。亜神です」
キツネはきょとんとした。
「主はジェーナス様?」
「そう」
「俺はアースフォックス」
もふもふとしているとジェーナスが近づいてくる。
「乗れるんじゃないですか?」
「乗れるかな。いやいいや」
どっちでもいい。
「じゃあ先に行くか」
「どこいくんですか」
……あ!?魔獣使いを試したいだけだから、終わっちゃったよ!?
「えっ」
「え?アズマ様まさか、計画なしですか」
「魔獣使いを育てる目的だったから……」
「じゃあ、どうです?人間に信仰を増やすとか」
「え、お前、自分がゴブリンだって分かっているか?」
「……人間ってゴブリン殺すんですか?」
「えっ違うの?」
「さあ」
分からん。この世界の常識が分からない。
そもそも人間に会ってない。
「え!あ!森ならエルフとかは!?いないの!?」
「あー……高慢ちきな森の高貴な防人(笑)ですか?ゴブリンを箒で叩くから嫌いなんですよね」
「会いたい」
「うーん……まあ、会えはすると思います。会話が通じるかは知らないですけど」
「そんなあ。あ、お前名前は?」
「上位種じゃないし名前なんてないよ」
ジェーナスがびくりと肩を跳ねさせる。
「おら、名前つけてやれよ」
「え!?私が名前つけたら死んじゃいますよ!」
「……え?なんて?」
「だから、私程度の魂強度だと私が死にます」
「マジか。じゃ、俺が名前つけてやる。お前の名前は、スペンスだ!」
かっとスペンスが光り、黄金の狼になる。
「おー……なんで?」
「そんなものですよ。先行きますよ」
スマホをスペンスに向ける。
『アースギアルチルフォックス。種族レベル三。戦士レベル二。保有スキル・なし』
「……フォックス、キツネなのに、戦士レベル?」
「職業レベルと種族レベルは別ですからね。なんか職業とっておかないとまあ、不都合なんじゃあないですか?」
「誰にとって?」
「そりゃ、この世界を構成するシステムじゃないですか?」
「誰だよそれ」
ん……それをジェーナスに言っても仕方ない。
ジェーナスも困っている。
「ごめん。八つ当たりだったな」
「いえ、いせかいってどんなところですか?」
「んーこの世界のことが分からないから何とも言えないけど、いろんな国があって、ヒト系の種族は人間だけ。獣はいっぱいいた。あと魚類とか……魔物とか魔獣はいないし魔法もない」
「へー変なの」
こっちのが変だろ。
まあいいや。




