6:エルフ
「そこで止まれ!貴様!ゴブリンキングだな!?」
巨大な門の上や壁の上から多数の弓矢を向けられ俺はジェーナスを見た。
「えっ冷たい対応」
「ですよねー」
「ええっと、村の長と話をしたいんだが」
「何故だ!お前はなんだ!?」
「亜神のアズマ。神だよ」
「……貴様は頭がおかしいのか」
頭の出来を疑われた。
「村を吹き飛ばすぞ」
「分かった。魔力量は嘘はつかない。その魔力量なら低位の神だろう?村に入れ。アースギアウフォックスはおいてこい。でかすぎる」
「あ、はい。ごめんな、スペンス。ここで待っててくれ」
「かまわないよ!俺はお利口にまってる」
門の下でまるまるのをみてきゅるんとした。
か、可愛い。
木製の巨大な門が開く。
「ゴブリンキングを村に入れるわけには……」
先頭に立つボインの女は耳が長く、その先が尖っていた。
「へーこれが噂に聞くエルフかあ」
「観光か?」
「いや、この世界の常識を知りたいんだが、人間っている?」
「人間などという蛆虫などそこら中にいる」
「……あ、種族間の差別が激しい感じ?」
「ゴブリンなどゴキブリだ。馬鹿みたいに増える」
おおう、差別が酷い。こいつらだけかもしれないけど、人間側も差別がいっぱいな可能性ですよ。
「こっちに来てくれ」
連れて行かれたのは巨大な木の洞。
「長」
頭を下げるエルフの女にならい、俺も頭を下げる。
「人間か?」
「亜神のアズマだ」
エルフの女は長と呼ばれた青年が座るその椅子の隣に立つ。
椅子に座っていたエルフは不思議そうにこちらを見て、首を傾げた。
「んー?寡聞にして存じ上げない神だ」
「産まれたところだからな」
「で?その亜神様は、この村に何を求める?貧相な村だ。時代の流れに取り残された、村」
「時代に取り残された?」
「ああ、百年前に戦争があってその時我々は参戦しなかった。だから、何の利権も得られず、こんな森の奥にひっそりと住むほかない……」
「外に出たいなら、外に出たらいい」
エルフの長は首を振る。
「我々は、弱い」
「こ、この森では強い方です」
エルフの女がそう言うも長は首を振る。
「俺を信仰してくれるなら、お前らを強くしてやろう」
「はあ?」
まあそう言う反応にもなる。
「我々はハスター様を信仰している。今更、信仰する神を変えたら天罰が下るぞ」
「あ、それがなんか、彼ら、興味ないみたいで」
「ん?」
訝しげな長に話す。
「アフームザー様を信仰していたトロールを改宗したんですが、天罰は下りませんでした。アフームザー様が直接おいでになって、それでもいいと。興味がないらしいので」
「……ハスター様も……」
「興味ないと思いますよ」
額に手を当て溜息を吐く長に俺は笑う。
「さ!俺を信仰してくれ!」
「……具体的にどんな恩恵があるんだ」
「うーん。魔法が使えるようになるって言う触れ込みだけど?」
「魔法はエルフにとってさえ……難しい技術なのだが」
「この村には何人住んでいるんだ?」
「五百余人」
「成程。その中で戦えるのは?」
「百人」
俺は考えた。この世界の攻略法は案外簡単だと思う。
だが、この攻略法、穴がある。
それは、別の強力な者が現れたら終わるということだ。
「その百人呼べるか」
「ああ……何をする気だ?」
「レベリング」
「は?」
それでも長は傍らの女に指示を出す。
「一時間ほどで広場に集まる。何か必要なものはあるか」
「なにも。あ、ハスター様の祭壇を見たい」
「こっちだ」
長は外に出て巨大な樹の洞から出ると隣の木造の神殿を見せられる。
大きな像とその前に果物が大量に乗せられた皿。
「何で果物?」
「貴重な資源だ。アケビ、ベリー……まあ、どれも大切な食糧だ」
「肉は?」
「肉は肥料だ」
「そ、そうなんだ……ベジタリアン?」
「いや、肉を食う習慣がないだけだ。狩人は魔物や魔獣を狩るだけだし」
「肉キライ?」
「肉は肥料という、固定概念があるだけだ」
「ふーん」
勿体ね。いや、肉イコール食えるという状況も少ないか?。
興味がないなら、肉の可食部も分からんだろうしな。
広場に向かうとぱらぱらとエルフたちが集まってくる。
「百だったか」
獲得経験値上昇EX、耐久度上昇EXを付与した指輪を作成し地面に落としていく。
丁度百になったところであんぐりと口を開けるエルフたちと目が合う。
「これを一人ひとつつけろ。その後で訓練だ」
「……訓練?」
「訓練でもレベルは上げられる。つまり、酷い怪我を負う可能性が低くなる」
スマホで適当なエルフをうつす。
『エルフ。種族レベル・一。狩人レベル二。保有スキル・なし』
「成程……うーん」
エルフたちが指輪をつけていき、指輪をつけたエルフたちが俺を見る。
「人間の女?」
「あーどうなんだろうな。亜神でも人間でもどっちでもいい」
スマホで職業タブをタップし、狩人に変化させる。
その後で、弓矢を持つ。
生まれて初めて弓矢を持つが、弓を射るための知識が流れてくる。
本当にゲームみたいだな。
的を作って台の上に置くと百mほど離れて弓を引く。
そして、矢を放った。
的は砕け、エルフたちは息を飲んだ。
「ここまでやれとは言わんが、練習することで良くなる。じゃ頑張れ」
「何時間くらいですか?」
「一時間」
「はーい」
椅子を作って座るとノシロがどろんと膝に落ちてくる。
「いいんですか」
「何が」
「こんな簡単にレベルを上げちゃって……敵対したら……」
「別に俺は困らねえよ。敵対するなら殺すだけ」
訓練するエルフを見て、はっとした。
人間じゃないから罪悪感がない?
殺してもなんとも思わない?
でも見た目は人間と大差ない。
――成程、俺は亜神なわけだ。ヒトがどうなろうともさして興味がないのだ
もちもちとノシロを触っていると気づきを得た。
このスライムを取り上げられたら怒るだろう。
だが、ジェーナスもスペンスもゴブリンたちもトロールたちも、俺にとってはどうでもいい。死んでも困らない。
「お前はこの扱いでいいのか」
「私は特別になりたいわけではありません。しかし、アズマ様が望まれるのであれば、特別も欲しいです」
「成程」
特別ねー




