3:トロール
「俺は魔法の神だ」
「はっ」
鼻で笑われた。
「人間の華奢な肉袋など……」
ぽんと剣を作った。
それをひらひらして見せトロールは口をあんぐり開けて指さす。
「……え!?」
「この通り。魔法が使えるようになるぞ」
「ほ、本当か!?」
ゴブリンたちは魔法が使えない様子だった。
多分だが、魔法がある世界とはいったが、魔法使いはマイノリティなのではないだろうか?
そして、強力。
「フロストトロールってことは冷凍する分には良いが、他の魔法が難しいんじゃないか?」
「そ、その通りだ。毛皮だってないし、食料が痛まないのは良いが……火を通す作業が上手くいかない。火守りを常駐させるにも上手くいかなかったし」
「生肉でいいんじゃないか?」
「生肉にするにも凍った状態から戻すのに、火が必要で」
「ああ成程。俺を信仰してくれれば、魔法全般を使えるようになる」
「ほ、本当に……?」
スマホを取り出しスワイプして技術ポイントを魔法に放り込んでいく。
【火矢・十】【氷矢・十】【地矢・十】【光矢・十】【闇矢・十】【風矢・十】【魔法防護壁・十】
これで八十か。
生活魔法は――
【魔石作成・十】【水作成・十】【氷作成・十】
これで百十。
残りは別の技術に振りたい。
「信仰するならここで宣託を授けよう」
「せんたく?」
「……食料の位置とか教えてやれる」
「成程、アフームザー様とは違うのか」
「アフームザー様は何かしてくれるわけじゃないのか」
「何も?フロストトロールが生まれるようになったというだけだな」
じゃあ、信仰の切り替えにデメリットはあまりないのか?
「村に案内してくれるか」
「こちらへ」
歩いて十数分。ノシロは俺の頭の上に乗っている。
さて、村に到着したがトロールたちはガタイがいい。
木を切り開き、森の中に大きな空間を生み出してそこに掘っ立て小屋を建てて住んでいる様だ。
トロールの一人がこちらに来る。
「人間だ。食糧か?」
「食わんでくれ。お前らの新しい神様だよ」
「はあ?」
トロールの一匹がこちらに近づき殴り掛かってくる。
案内してくれたトロールがそれを止めようとしたものの間に合わず、トロールは弾け飛んだ。
魔法で強化された腕力はどうやら、大抵どうにでもなる程度には強いらしい。
「さて、異論は?」
一連の動作を見ていたトロールたちは膝をつき、縋るようにこちらを見てくる。
「で、アフームザー様の祭壇は?」
「こっちだ」
在ったのは木で作られた祭壇だった。
置かれているのは花や果物、それから凍った肉。
「んー?供物の品質に統一感がないな」
「アフームザー様への供物はなんでもいいと言われています。心を籠めることが大切だと」
「成程?」
気持ちの問題か。信仰心とはよく言ったものだ。
「これからは俺、アズマを信仰せよ!」
「暴君だ!」
トロールが叫び、なるほど確かにと考えた。
「お前名前は?」
「名前!?そんな贅沢なものねえよ!」
「お前は今日から、サンディエゴだ!」
ぽんと音を立ててガタイのいいトロールが美男子に変わる。
「ハイトロールになった!」
ガタガタだった歯も綺麗になり、犬歯が尖っており、信じられないものを見る様にこちらを見る。
さっと服を作ってやった。
「うお!?わ、わっ!!!名前が付いた!おおおお!」
「サンディエゴ!」
「は、はい!」
びしっと指をさし伝える。
「お前をこの村の司祭に任命する!」
「はいっ!お任せください!!!」
言ってみただけだがぱあっとサンディエゴが光り、頭に水がかけられた。
「……いわゆる、洗礼ってやつか」
「びしょびしょ……」
ああ、可哀想に。
「こっちも名前つけてください!アズマ様!」
「ふむ良かろう。司祭は多いほうが良い」
名前を付けてやるとまた美男子。服を作ってやり、司祭に任命。
洗礼を受けてびしょびしょになっていた。
「……これは絶対なのか?」
「多分、いや絶対かな?」
ジェーナスが困ったように言う。
「何か捧げてみてくれないか」
「アフームザー様から天罰があるのでは?」
そう恐怖している皆を見て、あー確かにと思った。
でも俺は関係ない。
司祭のサンディエゴに花を持たせて祭壇の前に立たせ魔法防護壁をかけてから捧げるように言う。
「偉大なるアズマ様へこの花を捧げます」
台に置かれた花。
手に持っていたスマホが震え、通知を知らせる。
「信仰ポイントを十獲得しました。おおーノシロの言ったとおりだな」
信仰ポイントでなにができるのかなとタップするといろいろある。
基本的にはスキル関係。保有しているスキルと譲渡できるスキル。
「獲得経験値上昇……」
なんと獲得経験値上昇EXをノシロにあげようかと思っていたが必要な信仰ポイントは百。
「んなー……がんがん捧げものをしてくれ」
「ぼ、暴君……」
ドン引きの空気に俺は仕方ないとスマホを仕舞い、トロールたちに声をかける。
「俺のために信仰すると、魔法が使えるぞ?」
「……え?」
「どうした?」
「でも、我々には魔力がないので」
「無いわけないだろ。魔法が使えないだけだ」
「成程?」
「狩りに行こう」
適当なトロールに名前を付ける、とハイトロールになりボインボインの胸を張る。
「いいかお前は魔法使いだ。魔法を使える」
「ええ?本当ですか?」
「ステータスオープンと言え」
「ステータスオープン」
半透明のウィンドウが開き、俺はそれを見る。
……背が高いので見えない。
「しゃがめ」
「あ、すみません」
レベルは四か。魔法の項目をタップすると技術ポイントが八ある。
「【火矢】をとろう。調理も出来て一石二鳥だ」
「調理は出来ないと思いますが」
「焚き木に撃てば火が付くだろ?」
「そんな上手くいきますかね?」
俺は肩を竦めて、トロールたちを引き連れて狩りに出かける。
「お!あそこに熊がいるぞ!」
「グリズリーじゃないですかやだー」
「さ、狩ってみろ」
トロールたちが手に手に棍棒を持ち、名前をつけたハイトロールが【火矢】を放つ。
ただし、【火矢】はグリズリーにぶつかると掻き消えた。
「よっわ……」
「ハイトロールなんですけど……魔法使う適性がないですからね」
棍棒でフルボッコにされたグリズリーが、ばっとトロールを爪で傷つける。
「ぎゃああ!?」
あー駄目そう。
「【火矢】」
魔法を放ちグリズリーの頭を弾き飛ばす。
「これ、【火矢・五】とかにしたらどうなるんだろう」
「俺たちで試さないでくださいよ……?」
「俺はサイコパスじゃねえよ」
「ほぼサイコパスでしょう」
憮然としてみるとグリズリーの体をトロールたちが囲む。
「ナイフ持ってるか?」
「グリズリーの皮を剥げる奴は持ってないですね」
「なんで?」
「グリズリーなんか狩らないからですよ!」
ナイフを作って渡し、解体するよう言う。
「あなたは解体しないんですか」
「仕方が分からん」
「成程」
スマホから魔法をとる。【治癒・十】
傷ついたトロールを癒し、大きな毛皮になったグリズリーと肉、内臓を持って村に戻った。




