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未来が視えても妹は救えないッ!?  作者: 竜宮


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第3話 イケメンではない

 学校に着くと一年二組の教室に入る。すると全員の視線が俺に集中した。

 入学式で倒れた男として悪目立ちしているようだ。クラスメイトには中学からの知った顔もいる。俺をからかうのが生きがいみたいな嫌な奴らだ。まさか高校になって一緒のクラスになるのは最悪だ。昨日から覚悟していたが現実とは無常らしい。

 すると嫌な奴らにからかわれる未来が視えた。俺は身構える。


「おいインチキ占い師。昨日は大変だったな。早退して引きこもりの妹に慰めてもらったのか?」


 教室に響く声で小馬鹿にしてくる。楽しそうで何よりだ。子供のような攻撃を無視した俺は自分の席を探した。そして神楽かぐら彩芽あやめと書かれた紙が置かれている机に腰を下ろした。

 インチキ占い師。それは俺の中学からのあだ名だった。学校のアイドルである一人の少女を救おうとしたのが間違いだった。何もしなければ悪目立ちする事も無かっただろう。後悔はしていないが反省点は多い。

 中学の奴らのおかげで俺の悪評が広まるのは時間の問題だ。俺は目つきが悪く怖がられやすいので誤解を生みやすい。自分の顔がもっと爽やかだったなら違った結果になるのだろうか。俺はどうでもいい事を考えて吐息を付いた。

 放課後になると担任の教師から呼び出されたので対応する。なぜ呼び出されたのかは分かっていた。


「神楽悪かった! 俺を許してくれ!」


「別に気にしていないので……」


 担任の女性は京寺きょうてらという名前で俺を疑った教師だった。どうやら弥生に事情を聞いて俺が犯罪者ではないと分かったのだろう。しかしいい大人の女性なのに一人称が俺でいいのだろうか。この人はたしかにスタイルも良くて体育会系だ。学生時代にバスケ部かバレー部に所属していそうな雰囲気だった。俺としてはこういう熱いタイプの人間は苦手ではある。


「いや! 俺の気が済まない! 神楽! 俺を思いっきり殴れッ!」


 あーやばい。この人面倒くさい人だ。この人のせいで部屋の温度が上がっていく気さえする。あまり関わりたくない武闘派を残して俺は部屋の扉に近づいた。


「誤解が解けたので良かったです。では失礼ーー」


 すると京寺先生に手首を掴まれる未来が視えた。俺は手を引っ込めたがすでに遅かった。


「待て! 何だ! どうしたら許してくれると言うのだ!? 頼むから教えてくれ!」


「ちょっと! 手を離して下さいよ! 痛いですからッ!」


 何て握力だ。女性の力とは思えない。このままだと俺の手首の骨が粉々にされてしまう。絶対この人はリンゴを握力で潰せるタイプの人やー!

 抵抗しても一向に開放してくれない。俺はこのままでは殺されるかも知れないという恐怖を抱いてしまった。


「神楽! 私に贖罪の機会をくれ! 頼むからッ!」


「分かりました! 何でもしますから許して下さいッ! バイトが出来なくなるので骨を折らないで下さいッ!」


 何でここまで必死になるのか分からない。意味不明な攻防が終わると京寺先生が直立不動で瞳を閉じた。殴られる準備が整ったらしい。何で俺が女性に手を上げる構図になっているのだろうか。あー、帰りたい。

 俺は掌を広げて京寺先生の頬をペチっと優しく叩いた。何だろう。凄い罪悪感がある。もしかして俺は試されているのだろうか。

 瞳を開けた京寺先生は満足気に頷くと俺の肩を力強く叩いた。


「話は終わりだ。さっさと帰れ」


 うわぁ。この人やっぱり面倒くさすぎる。自分が満足したから俺はもう用済みらしい。

 自己中にも程がある。よくこんな性格の人が教師になれたものだ。しかも一年間の担任なんて正直嫌すぎる。文句を言いたかったが力では敵わないので飲み込んだ。

 京寺先生から解放された俺は夕日の光を浴びながら校門の出口に向かった。すると校門で誰かが佇んでいるのが見えた。近くに寄ると幼馴染の弥生だと分かった。


「どうした弥生? 誰かを待っているのか?」


「彩芽君の馬鹿」


 一言だけ告げると弥生は去っていく。弥生は今朝も俺を待ち伏せて同じセリフをぶつけてきた。

 どうやら俺と関わるなと言ったのが相当気に食わないらしい。というか、怒っている。

 謝るまで俺とはまともに口を聞いてくれないという宣言だろう。弥生は根に持つタイプだから俺が折れるまで不毛なやりとりは永遠に続くと予想できる。

 俺は朱色に染まった空を見上げて大きくため息を付いた。

 謝るしかないよなー。でも一度口にしたことを変えるのはカッコ悪いよなぁー。あー。俺の中のちっぽけなプライドが邪魔をするー。イケメン主人公ならこういう場面は彼女を追いかけるんだろうな。

 あー。あー。あー。よし。とりあえず帰るか。

 問題を棚の上に放り投げるとイケメンではない俺はとぼとぼ帰宅した。

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