第28話 運命の配信
「今日は来てくれてありがとうなのだー! 楽しんでくれていいのだぞー!」
愛依の生配信が始まっても俺は勉強をしていた。
興奮した声で見に来てくれている視聴者に語り掛けている。愛依はアリサという人物とコラボするのは告知しているので普段より人が多いような気がする。いつもなら多くて五十人だが今日は百人を超えている瞬間もあった。
「まさに青天の霹靂、こんな日が来るとは誰が予想できたのか……メイメイもついにアリサちゃんと同じステージに上がれるとは感激なのだ! お前達も分かるよな?」
やはりアリサちゃんという人物の影響力なのだろう。愛依の生配信に初めて来た人も多いような気がする。というか、常連さんが分かるほどに妹の配信をチェックしている兄ってのは大丈夫なのだろうか。
「えっと……アリサちゃんは危険だから注意? いやいや! 不可思議な事を言ってくれるではないか! アリサちゃんは優しさで出来ているのだよ?」
いやいや、俺は愛依に頼まれてチェックしているだけだ。別にシスコンではない。ただ、頼まれなくてもチェックは入れるけどね。
だって心配なんだもん。
「あと五分後に通話でコラボだからねッ! アリサちゃんも生配信だから向こうに移っても大丈夫なのだよ諸君? 心の準備はよろしいですかな?」
とにかく話を戻すと、個人的には人気配信者のアリサちゃんなど全く知らないのでコラボ出来る凄さなんて分からない。しかし愛依を応援している人達のコメントを見ていると何だか嬉しくなった。
コラボ出来たのはメイメイちゃんが頑張った証拠やこれからの人気者待ったなし、などポジティブな意見が多い。引きこもりの愛依が一人じゃないのだと実感できる瞬間でもあった。
すると俺のパソコンの画面がメイメイちゃんから切り替わって知らないキャラクターが顔を見せた。どうやら愛依が気を使って画面を切り替えたらしい。
黒いドレスに赤い髪、背景は城のようだ。吸血鬼がモチーフのキャラクターだと聞いていたが思ってた以上に妖艶な雰囲気だった。見た目は幼いのに唇の辺りが妙に大人びている。俺はこの子が人気者なんだなと考えながら「ふーん」と声を漏らした。
愛依とは違い視聴者は一万人を超えている。さすがは人気者だ。
というか、平日の遅い時間なのにこんな人が多いのが不思議だ。会社員や学生なら早く寝た方がいいと思うのだけれど。俺は本当にどうでもいい事を考えてしまった。
「今日は眷属達に紹介しとう人間がおるわい。最近ちっとだけ話題になった占い師だそうじゃ。わっちは占いを信じないけれども興味はある。インチキ占い師かどうか確認してやろうかのう」
凄まじい量のコメント欄が流れる。というか何だよその喋り方は? わっちっていつの時代の一人称だよ。もしかして強い印象を持たせるための口調か? 配信者も色々と工夫しているのだな。
「ではお待ちかね。今からメイメイという人間とコラボしてやるから眷属は黙って聞いておれ。決して攻撃するではないぞ?」
というか流れるコメント欄は罵詈雑言にまみれている。メイメイって誰だよ、というコメントが多く、インチキを許すな、などの強い言葉も多い。全くコラボが歓迎されている雰囲気ではなかった。
愛依は大丈夫だろうか。未来を視て確認したい所ではあるがアリサちゃんの顔が見ないと未来は分からない。自分の未来さえも愛依の事になると全く視えない状況だ。
少しだけ不安になった俺はスマホで愛依に連絡を入れようとしたが止めて置いた。
このコラボは愛依が望んだことだ。俺がとやかく言うべきではない。愛依だってそろそろ何が起こっても乗り越えて行かなければならない。
俺だって事故や病気などの理由でずっと愛依の世話を続けられない可能性もあるのだ。
何が起こっても俺は何も言わない。行動しない。これは愛依の為でもある。
まぁ大袈裟な事を考えてしまったけど恐らく大丈夫だろう。そもそも愛依をコラボに誘ったのはアリサちゃんだ。悪いようにはしないはずだ。
周りの意見を気にせずに愛依はいつも通り明るく楽しく話をすればいい。
一つ頷くと愛依とアリサちゃんの生配信コラボがスタートしたのだった。




